78本目 ゆっくり解明。一気に相手を倒せる作戦!!
「ぐっ……ハハッ、そうか、ワシらは一度出番終わってたか」
生前の全てを思い出したハザマは、笑いながら涙を流していた。
「何が起きたか分かりませんが、涙活ですか? スッキリいたしました?」
「あぁ、ほんまスッキリしたわ……今はもう頭クリアやわ。何がしたいか明確になっとる。けど、泣くの見られんのはハズイなぁ、身体が熱くなってまう」
ハザマは倒れていたサンパチマイクを拾い直し、再び彼女の前に立ちはだかる。
「ええかお嬢様。ワシらはもう一度与えられたんや。弱い人間を淘汰し、強者だけが新たな舞台へと進むチケットをな。これが進化って奴なんやろか。ほな、終わりにしよか──宝具:笑炎演上──〈輪廻燐火〉!!」
廻る青い鬼火が来海を襲おうとする……が、彼女は一切怯まなかった。
「ええ。そうですわね。おっしゃる通りわたくしは弱い人間です。いつも守られてばかり、心配をかけさせてばかり。……けれど、それでもわたくしは貴方に負ける気がしませんの」
来海が扇子を振るうと、ハザマが流していた涙すらも支配下に置き、宙に浮かせ量を増幅させる。
「ゆとりあるわたくしが、貴方の涙を拭いてあげましょう。宝具:侘び寂び──」
◇ ◇ ◇
「むぅ……嫌な記憶、だよね!」
自身を守り固めていた砂はポロポロと落ちる。
トットリダンジョンが攻略されたことで、葬倉の力が弱まったのだ。
それを見逃すことなく、猛李王は攻撃を仕掛ける。
「イラつく、だよね! そもそもお前ら老害が全部全部決めるのが一番の悪、なんだよねぇ! 仲間が傷付けられるのも私が夢破れ死んだのも、全部お前らのせい! 私に道を譲れぇ!! だよねぇぇ!! 宝具:砂土棒拡声器──〈砂王戴冠〉!」
葬倉の背後に巨大な砂でできた王が現れ、吹き荒れる嵐のせいで全てが砂に沈んでいく。
「──道は自分で切り拓くものだ。いくつになっても、夢は自分で掴み取る……彼女ができるその日まで、独りでも歩き続ける……! あと俺はまだ20代だ。宝具:黒鷺──」
◇ ◇ ◇
「きゃぁぁあ!? うぅ、ああっ!! 何よこの記憶はぁ! ワタクシに何をしたぁぁっ……!」
「……エリナ、エリナ!」
逝来が過去の記憶に苦しむと、形を保てなくなった水塊から野田と庭白は解放された。
しかし、野田が目を覚まさない。水をたくさん飲んでしまった。
「……っ!」
庭白は大切な親友を救うため、迷わず人工呼吸を施した。
「──ぶはっ!? ゲホッ、ゲホッ、うぅ……」
「エリナ!」
「うぉっ!? リリナ……助けてくれたのね」
息を吹き返した野田は、びしょ濡れの庭白に強く抱きしめられる。
思わず驚いたが、彼女もまた抱きしめ返した。
「うん! うん……よかった……」
「でも、まだにゃのね」
「うん……」
野田はふらつきながらも立ちあがろうとするので、庭白はそれを支えてあげた。
「そんなびしょ濡れになって、アンタ風邪引くわよ」
「エリナは水も滴る美少女だよ?」
「知ってる。……あいつを倒して一緒にマイマイの元へ急がにゃいとね」
庭白は頷き、少し離れる。
徐々に意識を取り戻した逝来は野田を睨みつける。
「誰を……倒すですって……ザコでブスのお前がワタクシを倒せるですって!? 自意識過剰も甚だしい、ここまで来ると可哀想! 哀れだわ!! 宝具:Iseetell──〈Inovary〉!!」
逝来は荒れ狂う海のように水流を操り、剥き出しの殺意を二人に向ける。
「残念。アンタと違ってアタシには可愛いって言ってくれる可愛い親友がいるの。ドンマイ、ボッチにゃ〜ん♡」
舌をペロッと出して煽った野田は、爪を伸ばす。
水を斬れるわけがない。
しかし、不思議と今の彼女は戦う前よりも力が漲り溢れていた。
黒く光り出した爪が、襲いかかる水の触手を全て斬り伏せて逝来をも斬り刻む。
「猫獣人──〈バステトクロウ〉!!」
──その場でグルグルと回り出した猛李王は、大剣の遠心力も加わってみるみる加速していく。
砂を巻き込み、嵐の中心となった彼は葬倉を叩き潰した。
「──〈回転超強打〉」
──ハザマの涙を増幅させ奪い取り、扇子を柄にして水の刀を作り出す。
「──〈明鏡止涙〉」
一閃。
ハザマを一斬りで捩じ伏せる。
「ぐぅっ!?」
「泣いた後は気の済むまでお休みなさい。良い夢の感想をお待ちしておりますわ」
ハザマ、葬倉聡明、逝来朱莉の各個撃破に成功した。
◇ ◇ ◇
庭白は力を使い切った野田の元に再び駆け寄る。
「おつかれエリナぁ……」
「あはは、にゃんとか倒せたねー。少し休憩したらマイマイのとこ行こうか」
「うん……!」
「──いえ、あなた達もここで終了です」
突如として野田の背後に現れる紫草こと、藤岡辰也。
彼が野田の頭を掴むと、彼女は気を失って倒れてしまった。
「エリナ!」
「動くな。トサダンジョンの模倣者よ。彼女を失いたくなければ先生の言うことを聞きなさい」
フラフラと起き上がった野田は、猫獣人の爪で自身の首を当てた。いつでもその場で掻き切ることができる状態だ。
一瞬にして野田は洗脳状態に堕とされたのだ。
「こんにちはエリナさん」
「……こんにちは藤岡先生」
「挨拶ができてよろしいです」
「エリナを返してっ!!」
庭白が無力ながらも藤岡を倒そうとするが、簡単に跳ね除けらてしまう。
「うっ!? ……エリナ……くっ、まだS級が……誰も彼と遭遇していないの……」
「いえ、いましたよ。一蓮托生の女性二人組が。彼女たちは相打ちに終わったようです。惜しい生徒を亡くしました」
「女性二人組……そんな、松實さんと生野さんが……」
彼女たちの争いは、松實が生野の心臓を突き刺し、生野が松實の脳を吹き飛ばしたことで、終業の鐘が鳴った。
「でも、攻略されれば……」
「無駄ですよ。私は生徒を全国に大勢抱えています。探求省に入省した優秀な生徒も多く、色々と教えてくれるのですよ」
彼の出身、キョウトダンジョンには洗脳済みの探求省職員の計らいで、四皇が向かわぬよう仕向けられた。
「そう噂をすれば、少し寒気がしますね」
◇ ◇ ◇
「……なぁ、キョウトダンジョンってこんなに吹雪いてたか」
「分かんないけど、おにいちゃんと一緒なら大丈夫だよ♡」
探索官の仲嶺兄妹率いる探求省職員がキョウトダンジョン攻略にあたっていた。
このダンジョンは正に京都の名にふさわしく、古都が広がっていた……はずだが、数メートル先の景色が見えないほど雪と風に覆われていた。
「……待て。誰か来る」
ゆっくりと歩みを進めていると、仲嶺兄がある存在に気付く。
「なんだ、男か? こんなとこにいるのは普通の奴じゃないだろうがな」
「おにいちゃんの言うとおり。きっと模倣者……え、待って」
「どうしたラブリ」
「……ちょータイプのイケメンだぁ!?」
「……はぁ!? ラブリ、おにいちゃんを前にしてそれは……!」
「──寒いな。早く春になって欲しい。あ、人だ。すみませんちょっと……」
男が声を掛けると、突き出た氷が探求省職員を襲い、皆一斉に氷漬けされた。
「あ……凍っちゃった……まぁ、いいか」
◇ ◇ ◇
「……お願い。エリナを元に戻して」
「では、こちらも一つお願いを聞いていただきたい。拒否権はないですが」
藤岡の指示の元、逆らうことなく野田は自身の首にじっくりと爪を突き刺す。血が滴り落ちていく。
「分かった……何でも言うこと聞くから、これ以上はやめて……」
「聞き分けの良い生徒は贔屓いたしますよ。……では、私と共に来てもらおうか。庭白リリナさん」




