77本目 【激震】ダンジョンの秘密が衝撃過ぎてヤバすぎた……マイマイもビックリだよ……
「何故ですか! 次は私がデビューだったはず!」
「いやぁ、ごめんよ〜。蒼倉くーん。今はこっちの可愛い系男子が旬だからさー。ほら君、体ごつくて印象怖いじゃーん?」
見せられた写真には確かに可愛らしく若い男の子が写っていた。
若さが重視される芸能界では、年齢を重ねた彼が活躍できる場に限りある。
「その子は歌が上手いのですよね……」
「ん? いや、そんなかな。こっから練習するんだよー。成長系アーティスト? みたいなねぇ〜。ファンで育てていこーぜって感じ。若いからすぐ上手くなグヘェ!?」
苛立ちの感情に支配された蒼倉は、周囲のスタッフの制止も聞かずに目の前の男をぶん殴った。
この件があって、大手音楽事務所と契約していた彼のデビュー話は白紙にされた。
自分よりも明らかに実力のない人間にチャンスを奪われたのが許せなかった。
だが、彼はそれでも諦めなかった。
ビジュアルも重視するというのならばと、ファッションの研究やポーズや姿勢の魅せ方──無理な減量。
夢を追って地方から上京した蒼倉は、生活費を稼ぐために毎日深夜帯のアルバイトをした。当然、忙しい日々の間を縫って歌唱練習も欠かさなかった。
過度なダイエットのストレスから大好きなマヨネーズをチューブのまま飲むことさえあった。
だが、とうとう自分に合わない身体作りに、彼は栄養失調になり身体を壊してしまった。
(憎い……何故私がこんな思いをしなければならないんだ……)
「だよね〜! マジ可愛くて歌も上手いの〜!」
アパートに面する道路で女子高生たちがキャッキャしているのが窓から入る。耳障りだ……。
(何の実力もないヘラヘラした若い奴が嫌いだ。希望に溢れた奴が嫌いだっ……!)
そして、いつもの猛暑が襲う夏のある日。
エアコンのないアパートのとある一室で、泥のように溶けた男性の遺体が見つかった。
死因は熱中症だと判断された。
◇ ◇ ◇
「しらばっくれないで! 浮気した証拠はこんなにもあるのよ!!」
「俺のスマホ勝手に覗いたのかよ。ありえねぇわー。ただの仕事の付き合いだってのになー」
「ねぇ、聞いてるの!?」
「別れるか」
信じたくない言葉に、清来は首を振って叫び散らした。
だが、決まった事実は変わらない。
いずれ泣き疲れて黙ると、時を刻む音だけが無情にも部屋に響く。
「……は……だ、だったらお金返して」
「は?」
「私あなたにいくら貸したと思ってるの。300万よ!」
「そんなの恋人としてさー、助け合うの当たり前じゃん?」
「今、私たち別れたでしょ」
「別れたからって返すとか。なんだろなー、非情過ぎるっつーかさー」
男はゆっくり立ち上がると、机上にあったものを急に払い除けて、怯んだ清来を押し倒した。
そのまま首を絞めていく。
「ぐゅ、がはっ……!?」
「お前が悪いんだからなぁ……? いっつもいっつも付き纏ってしつこいんだよ。メンヘラがぁ……黙って水商売で稼いだ金を貢げばこんなことにはならなかったのになぁ……なぁ!」
酸素が頭に回らない。
清来は何か自分を助けてくれるものがないか、散乱する物の中から手探りで探し……カッターナイフがあった。
刃を出し、彼だった首に突き立てる。
最初、男は訳もわからず仰け反り、そして刺した所が悪かったのが流血が止まらず、こちらも叫び散らしながらそのまま意識を失って、のちに死んだ。
彼女はその光景を見て何を思ったのか。
重い男性の体を引き摺り、風呂場まで連れて行っては、水を溜めた浴槽に元彼を突っ込んだ。
……あとは何度も何度も何度も何度も叩き切り、頭部だけを持ち出してその場から逃げた。
車で運転して辿り着いた崖から、愛する彼の一部と共に海へと身を投げた。
◇ ◇ ◇
……一本の動画が更新された。
『みなさんあの動画は観ましたか? そうです、ハザマという見るからに人間の男がですね、模倣者という存在を明かしたあの動画です』
浦山好奇は毎晩19時に動画を更新する。
今晩のタイトルは【ダンジョン、模倣者、宝具。全ての正体が分かってしまいました】
『模倣者という存在や探求省が隠している闇など気になることは多いんですけど、今回注目するのは彼自身。ハザマです。実は視聴者からいくつかこんなDMが届きました』
約20年前、ダンジョンが生まれるちょっと前ぐらいに大阪梅田にある劇場で爆発を伴う放火があった。
死者が100人近く出る、あまりにも凄惨な事件として当時を覚えている大人も多い。
その事件の犯人が、彼もまた亡くなった当時登壇していた芸人、狭間光一。
そんな彼と顔が瓜二つだそう。名字も同じなので、何か関係性がないかと複数の視聴者から浦山へお便りが寄せられたのだ。
『親族なのではーとか言われていますが、僕の取材では彼の両親は既に他界しており、妻も子供いなかったそうな。じゃあ実は生きてたオチっ!? って若すぎますよねぇ〜。ですがもし……もしハザマが狭間光一本人だと仮定するならですよ。一つの考察が浮かぶんですよね──ダンジョンとは、死んだ人たちが生まれ変わる場所なんじゃないかと』
浦山は現在、他の模倣者たちも該当する人がいたのかを調べている段階という。
『それに、色々と繋がることがあるんですよね。例えばダンジョンが日本にしかできない理由。これは輪廻転生という考えがかなり関係しているんじゃないかと』
宗教によっては、タブーとされる国もある輪廻転生。
前世や来世の話を普段から会話の種として使われていたり、アニメや漫画の影響もあってからなのか、本気で信じているわけでもないのに日本が一番受け入れやすい状況にある。
『そして宝具。これの別名知ってますかね? そう、〝レリック〟──英語で〝遺品〟という意味がありますよね。ダンジョンで見つかる物にしては、やけに現代の物が多いと思っていましたが、これも輪廻転生説を裏付ける証拠となるのではないか』
宝具を模倣者が使用した場合、いつもより力を引き出せる──それは本来、死人たちの道具だったからこそ扱えるのではないか。
『さぁ、疑うか疑わないかは君次第!』
……と、浦山はプレミア公開されていた自身の動画を見終わると、ある人物と電話を繋ぐ。
「いいのかい? こんなにも真実をばら撒いちゃって。まぁ、信じる人は少ないけどさ」
「──構いません。それで救われるならばその方がいい。と、申しております」
通話口から聞こえるのは女性の声。
「ははっ……相変わらず担当さんに会話任せすぎでしょ。引きこもりのくせに、世界の行く末が気になるのか。SS級模倣者って本当に何考えてるのか分からないなぁ。こんな僕でも半分くらいしか分からないよ」




