55本目 彼女ができない人は必見!マイマイが教えるまずすべきことはこれだ!
──人生とは孤独である。
……でも孤独は寂しい。
では、人生は寂しいではないか。
生を受けて27年……未だに恋人なし。
だが、そんな悲しい日々は今日でサヨナラだ。
俺は彼女を作る。
独りぼっちの漢チャンネルではなく、甘々なカップルチャンネルへと生まれ変わるのだ。
さて、まずすべきは女性と出逢うことだ。
数少ない女性の知り合いにはことごとく振られたので、彼氏が欲しそうな女性が多くいるであろう場所に訪れた。
偏見だろうか、いいや、それで構わない。
「……ウラカブキ」
今まで恥ずかしくて訪れたことはなかったが、もう自分に言い訳はしてられない。
猛李王、参るぞ。
「……あの」
俺は銀髪長髪の女性に後ろから声かけ「チェストォォ!」
「ぐっ……! ん、ん……?」
俺が女性だと思って話しかけた人物は男性であった。
声で気付いたが、よくよく見ればオーバーサイズの服で男性の骨格を隠していた。
なりふり構わず声掛けてしまった……ん?
「失礼、不審者かと思いましたが、私の過剰防衛でした。では、これにて私は──」
「……佐藤探索官」
「うぐっ!? ──も、猛李王さんですか」
疲れ切った顔をメイクで隠し、女装した男の正体は佐藤弥央。
探究省に勤める探索官の男だ。
本来、顔出ししない彼を知っていたのは、俺がS級に上がる際の登録更新で案内役として、彼が担当していたからだ。
二年ぶりの再会が、まさかこんな形とは……。
「……趣味」
「違いますよ!? この格好は探索官の仕事の一環です。人が集まるウラカブキには変質者と犯罪者の温床になっていますので、こうして探求省職員が見回りをしています。ただ女性陣……特にうちの班の者には任せにくい仕事なので、自ら狙われやすい姿で──」
「あ〜、やおお兄ちゃん♡ 今日も来てくれたんだ〜」
現れたのは、成人しているのだろうけども、低身長で童顔の子供に見える女せ──
「行きましょう、猛李王さん」
「あれ、やおお兄ちゃん♡ 今日はいいの〜?」
笑っていない笑顔で、誰もいないウラカブキの裏道まで無理やり連れて行かれた。
「すみません、ここで見たことは全部忘れてください」
「……全部」
「誰にも言わないでください。探究省で唯一のまともポジションとしているんです。バレたら失脚するかもしれない、特に松實という女性は覚えていますよね? あいつには死んでも言わないでください。殺しますよ」
「……ロリコン」
「残念ながら猛李王さんの時を止めなければいけませんね……」
ウラカブキには公私共に探究省の人間がよく見回りしているようだと、さっきの佐藤の証言から分かる。
その格好は通い詰めている店に入るのを他人にバレないようにするためでもあったか。逆に目立ってた気もするが。
「僕は彼女が欲しいんです。そのためならどんなことでもしますよ。できれば年上の包み込んでくれるようなお姉さんがいい!」
「……え、あの店の子は小さ……」
「性癖と恋愛は別物ですよ」
……お、奥が深い。
佐藤は恋人を手に入れるためにあの手この手と尽くしている。
果たして俺はどうか……。
「とりあえず絶対言わないでください。僕にできることがあれば何でもしますので」
「……なんでも」
「何でもするとは言っていません」
何でもするって言ったじゃん。
「……なら、今度の掃討作戦欠席で」
「なっ!? どうしてですか……!!」
数日後に行われるアキハバラダンジョン掃討作戦。
多くの実力ある探索者が投入されて、SS級ダンジョンを本格的に初攻略を目指す。
「……俺は彼女を作る」
「……っ!」
「彼女を作って、カップルチャンネルがしたい。そんな未来の彼女を心配させるような危険なことをもう俺はしない」
「SS級ダンジョンではなく、攻略するのは女性の心でしたか……。分かりました。掃討作戦については僕が上手いこと調整します。そして、一緒に彼女を作りましょう!」
俺たちの心は一つになり、夜の街を駆け抜けた。
運命の相手を求めて。
それは宝具を見つけ出すことよりも遥かに難しい。
佐藤からの勧めで猛李王だとバレないよう、装備からTシャツへと着替えて、道行く女性に声をかけるが、
「すみません……あっ、駄目ですか。はぁ、誰も相手してくれませんね……」
成果は何も得られませんでした。
辛い……!
「……猛李王だと言えば、相手してくれる人はいないだろうか」
「いるかもしれませんが、猛李王がウラカブキで片っ端からナンパしていると拡散されては困るでしょうし、それに肩書きだけで寄ってくる女性は信用できませんよ。対等でいたいですから、そして甘えたい……」
探究省での仕事はストレスが非常に溜まると耳にする。
ダンジョンに関する全ての責任が降りかかり、肝心のそれは未知なことばかり。メディア対応や外諸国からの牽制、反政府組織からの防衛。そして、自身も命を賭けてダンジョン探索に出かけたりなど……。
どこかネジが外れた人でないと、この仕事はやっていけないとか。
「……お疲れ様です」
「すみません、変に気遣わせてしまいましたね。今はアキハバラの件があるので余計にバタバタしていて、僕は直接探索こそしませんが、その皺寄せがこっちに来てますからね……松實は仕事しないし、生野は生野で松實に振り回されて仕事できないし……はぁぁ」
「注意したら……」
「もちろんしてますよ。まぁ、楽しい日々を過ごす彼女たちの邪魔をしたくもありませんから……だから仕事はしなくていいから仕事は増やさないでくれよ……はぁぁぁぁ」
掃討作戦に参加しようかと考えなおすほどには同情してしまった。
しかし、俺がいたところで彼の仕事量は変わらないのなら、彼女作りに専念したい……。
元々、NewTubeは自分のためだけに始めた趣味かつ婚活だ。最後まで自分最優先になることを全うすべきだ。
「とにかく掃討作戦の件、把握しました。四皇はみんなスケジュールNGで不安ですが、多くのS級A級探索者が参加してくれますし、何よりあず……んっん、もう無関係の人にここまで喋ってはいけませんね、すみません。とにかく攻略してみせますよ。猛李王さんも頑張ってください」
「……どうしたら彼女はできるのか」
「SSS級の難問ですね。ただ、猛李王さんはとても強くて逞しいですから。女性を危機から助けるとかのキッカケさえあれば、案外──」
「キャァァ! ひったくりよぉ!」
仕込まれたかのように、どこからか助けを求める叫び声が。
「猛李王さん、今ですよ!」
俺は一つ頷き、即座に現場に駆けつけると、ちょうど犯人と思しき人物がこちらに逃げて来ていた。
「どけぇっ!!」
「宝具:黒鷺──推進消去」
黒鷺の面を使って、犯人の突進力だけを殺し、怯んだところを上から叩き落とした。
顛末を見ていた周囲から湧き上がる歓声。
「あれ、あの宝具、猛李王じゃね……?」
「……みま」
「こんなダサい変装してまで見回りしてくれてるのか、すげぇ!」
見間違いだ、って誤魔化そうとしたのに。
あと、このTシャツってダサいのか……?
しかし、良いチャンスだ。
取り戻した荷物を女性に──
「あらぁ〜良い筋肉じゃなぁい! もう好きっ!」
……あ、オネエの方でしたか。
上がるのは雄の叫びだけだった。
「猛李王さん、まずはここから始めましょう……」
「……もう無理」
男からしか支持を集められない俺。
それでも、いつか可愛い彼女が欲しい。
ダンジョンに出会いを求めるのは間違いでないと、俺が証明するために、まだNewTuber活動を続けたいと思う。




