52本目 【銀河人狼】女子ストリーマーが集まってアロングアスしたら裏切り者が見つかった!?
『おぉ、最初はこっちだね』
一回戦。吾妻が振り分けられたのはクルー側だった。
『ふふっ、わたくしはクルーでしたわ』『りりにゃ、一緒に行動しよっ!』『う、うん……』『しょーのちゃん待って〜』『おめぇ、付いてくんなよ!』
今回はゲーム上で近くにいる人とは会話ができる仕様なので、スタート地点であるカフェテリアエリアはあちこちで喋っていて騒がしい。
『えっと、まずはタスクしないとだよね。近くに一個ある! それやろーっと!』
すると突然通報されて、会議が開かれた。
吾妻が動揺していると、通報した来海が口を開く。
『ユッキーさんがカナデさんを殺害していましたわ』
松實の犯行がすぐにバレた。
『うぇーっ!? ワタシじゃないよ! だって、最後にワタシはハヅキチといたもん! 右の方で! どうよ、アリバイ〜』
『そうねー、ベントからちょうど出てきたところね』
降元の証言が加わり、満票で松實の追放が決まった。
『なんでー──』と最後の断末魔だけが聴こえた。
ほぼ確実に松實がインポスターだったのは間違いない。
しかし、もう一人の情報が何もないまま試合は進む。
途中、サボタージュで右側のエリアにある酸素を回復しに行こうとした時、緑色の来海と通路ですれ違う。
ちなみに誰かが直してくれたようなので、そのまま右側からぐるっと回るようにタスクを続ける。
1分後、電源を落とされ視界不良になったので、吾妻が左下エリアで電源を回復させた時、裏手に茶色の死体──降元が転がっていた。
『つうほー! 電気を直しに行ったらその部屋でハヅキチが死んでました!』
容疑者は三人。
『アタシとりりにゃはずっと一緒にいたよねー』
『うん』
『てことは、葵ちゃんがインポスター?』
『違いますわ。わたくしは今回右側のエリアにタスクが集中しておりましたので、通報されるまでもずっとそちらにいましたわ』
『一人ででしょ?』と、野田が詰める。
『確かにそうですが、途中でマイマイさんとすれ違いましたわ』
『マイマイそうにゃの?』
『たぶん……? あ、酸素直しに行く時だよね。え、でも葵ちゃんあの時まだ直ってなかったのに、逆方向から来たような……』
『ハヅキチさんが既にいらっしゃっていて作業されていたので、もう一つの方を直しに行こうとしたのです』
『もう一つはわたしが直しました……』と、さらに庭白が追撃。
『確かにわたくしは直せていません……ですが、わたくしがインポスターでしたら、あの時に殺害していますもの』
『死体は電気室にあったにゃらさ、犯行は停電の時っしょ。葵ちゃんがサボタージュで停電させてから電気室でハヅキチをキルしたんじゃにゃいのー?』
『はっ! それだ!』
『断じて違いますわ! 仰る通りわたくしは一人でした。しかし、ハヅキチさんと一緒にいた証拠もありません。疑いたくはありませんが、マイマイさんがハヅキチさんを殺害したのちに自身で報告した線は……!?』
と、ここで会議時間が終了した。
結果は吾妻に1票、来海に3票で予想通り来海が追放された。
これでクルー側の勝利──にはならず、試合は続いた。
『えっ!? なんで!?』
そして、30秒が経過し、ピンク色のインポスター──野田に吾妻がキルされて、インポスター側の勝利で終わった。
『ど、どゆこと!?』
『インポスターはアタシとユッキーだよ』
『そだよ〜。いぇーい、ワタシたちの勝ち〜!』
『停電させてからベントを通ってハヅキチをキルしてー、それからにゃに食わぬ顔でりりにゃのとこに戻ったの』
停電中のクルーの視界は狭くなるが、インポスターは変わらない。
庭白がタスクしているのを計らって、犯行に及んだ。
『結構ギリギリでさ。りりにゃにバレるかと思って焦ったよー』
『え、気付いてたよ』
『『『えっ』』』
『じゃあ、何でりりにゃ言わなかったの!?』
『だって、えりにゃんを追放したくなかったから……』
『ナチュラルに裏切ってる!?』
狂人役が勝手に追加されていた波乱の初戦は終わり、続く二回戦。
再びクルーとなった吾妻は今度こそ勝利しようと張り切るが、
『あ! マイマイだー! おーい! バイバーイ!!』
『えぇぇ──!?』
松實とすれ違い、瞬殺されてしまった。
ちなみに今回のインポスターは庭白とまた松實。
色々あったが結果としてクルー側が勝利した。
そして、三回戦。
吾妻はインポスターとなった。
『マイマイ、ワタシと仲間だねぇ!』
再三インポスターになった松實。
生野をキルしたのちに即刻追放された。
「あわわ、一人であと三キルしないと……!」
しかし、ここで吾妻が才能を見せる……!
まず停電のサボタージュを起こした際に来海をキルし、中央エリアまで戻ってから死体消しに緊急会議のボタンを押した。
会議をうやむやに終わらせてから、さっさと降元をキルし、「タスクが終わったよー」と何食わぬ顔で野田たちと合流し、クールタイムを挟んでから庭白をキルした。
まさかあのマイマイがここまで上手いと予想していなかったから誰も彼女を疑わず、その立ち回りから降元のファンを中心に五千人くらいチャンネル登録者数が増える結果となった。
「──ふー! 楽しかった〜!」
ヘッドセットマイクを外し、その場で伸びる吾妻。
綺麗になった彼女の部屋には、広告収入で購入したグリーンバックが設置されていた。
「ゲーム得意なんだな」
隣の物置部屋にいた俺は、吾妻の部屋の扉をノックする。
普通に彼女の実家に来ているわけだが、慣れとは怖いもの。あれ以来、ダンジョンの作戦会議等で何度もスペースをお借りしているので、実家のような安心感が俺にも出てきた。
「わたし最強なんでっ……! 何でもできちゃうよ〜んだ!」
ゲームの腕前も彼女の出自もそうだが、これだけ一緒にいても、知れば知るほど、知らないことばかり出てくる。
チャンネル登録者数80万人を超えて絶好調だし、ダンジョン配信だけでなく、何気ない彼女を公開しても再生数は稼げそうだ。
どんな時でも新しい輝きを見せる吾妻舞梨だが……光が強くなれば、影も濃くなる。
最近、模倣者に襲われることが立て続けに遭ったが、それは偶然で済む話なのか……。
とにかく彼女には何も知られてはいけない、悟らせてはならない。
自衛する能力を身につけさせた上で、彼女の非日常を護る。
それが父と交わした約束だ。




