139本目 悲願たっせい!ずっと探し求めていたレリクスをついに手に入れましたぁ!
「あ、見つけたー!」
「マイマイさんオーデュイさん!? 申し訳ございません、わたくしの身勝手でお二人にも危険な──」
「あれってぜったい白湯華じゃない!?」
「えっ、どちらですか!?」
吾妻が指差す方へ来海が振り返って見ると、白煙の中に凛として佇んで咲く一輪の白い花があった。
「ほんとですわ……! しかし、一輪のみ……」
「でも探してたのだよね! さっそく取りに行こう〜!」
「マイマイ待って! お湯がブクブクしてて熱そうだよ……」
オーデュイが制止せざるを得ないように、自分たちがいる場所と白湯華が咲く場所との間には谷がある。
崖下を覗くとマグマのように沸き立つ熱湯が流れている。見ているだけで目元が火傷しそうだ。
「落ちたら大火傷しちゃうよ……」
「わたしならだいじょぶだよ? まず落ちないし」
「そうだけどそうじゃないよ! 危機管理が大事だって亮くんいつも言ってるもん。それに湯気に触れただけでも火傷しちゃうって!」
「むむ、そう言われると弱ったなぁ〜」
吾妻とオーデュイが口を揃えて「むむむー」と悩むが、来海は自身の宝具:侘び寂びを構えると、流す涙を掬って谷へと落とす。
「セブダンジョンの海をわたくしは思いのままに操れた……この温泉も切り拓いてみせる! 宝具:侘び寂び──〈一刀涙断〉!」
宝具の扇子を天から地に、縦に振るうと、灼熱の温泉が真っ二つに割れ、道ができる。
熱気も晴れていき、はっきりと白湯華も視認できるようになった。
「おぉ! これで行けるね!」
「マイマイさん。巻き込んだ上にお願いする形になってしまい申し訳ありません……。わたくしには断つだけで精一杯でして……!」
「だいじょぶだいじょぶ! わたしに任せて! みんな病気とか怪我が治ったらハッピーだもんね。オーデュイ!」
「ほいさー!」
オーデュイが身体の中から宝具:ファイヤーフランタンをスポンと吐き出すと、吾妻がそれを掴んで宙に浮き、白湯華の元まで簡単に辿り着く。
「余裕余裕〜!」と二人にピースして見せて白湯華を引き抜こうとするも……抜けない。
「むむ? 結構かたい……わわっ!?」
すると、立っていた崖が盛り上がり吾妻は宙に投げられる。
眼下に現れたチョウチンアンコウ型の魔物が口を大きく広げて彼女を喰おうとしている。
吊り下げていた触覚で餌が欲しがるものを見せて誘う。今回は白湯華の幻影を見せられていたわけだ。
「マイマイ!? って、うわぁ! こっちにもいっぱい飛んできたぁ!?」
魔物の飛び出した勢いで温泉に熱された瓦礫が来海たちに飛び火する。
すぐさまオーデュイが身体をにょいーんと広げて、降り掛かるものを吸収して来海を守る。
「ふ〜、危ない危ない」
「ありがとうございます、しかしマイマイさんが!」
吾妻はファイヤーフランタンを再び掴むも、逃げるより早く魔物が飛び出してくる方が早い。
喰べられそうになったその時──俺は勢いよくそいつを蹴り飛ばした。
「亮くん!!」
「大丈夫か舞梨」
「うん!!」
一撃で沈めた魔物を足場にして飛び上がり、そのまま吾妻を抱きかかえて来海たちがいる場所に戻る。
かなり高温の熱湯だな。慣れているはずの魔物すら温泉に落ちた瞬間、体を燃やして飲み込まれてしまった。
「むふふ〜、ありがと。まぁ、わたし一人でも倒してたんだけどね!」
「そうだな……ん?」
「どしたのー?」
「いや……気のせいか。とにかく無事で良かった」
「うん、ありがと〜」と、彼女はギュッと抱きしめてくれた。
今の姿でそれをされるとかなりドキドキしてしまう……。
「……頭、汚れてるぞ」
頭に付いた土汚れを払って取ってあげることを口実に身体を離す。撫でると「むふふーん」と喜んでくれた。かわいい。
「さっすが亮くん!」
「彼女の危機に駆け付ける彼氏、とても素敵ですわ」
「ふふ〜ん、でしょ〜!」
来海と、その彼女の頭上でポヨンポヨンと弾むオーデュイが賞賛……え?
「彼氏って、何故そう……」
「エリナさんから聞きました」「えりにゃんからグルチャで聞いたー」
あの化け猫……すぐに言いふらしてやがる!
野田、来海、オーデュイ三人のグループチャットがあるって以前NewTubeFestの時に確か言っていたな。
世間に対しては公開しないって言って……ただけで、友達に教えることは別かよ、くそ。
「まぁ、ワタシもバディだから、二人が付き合ったなってことくらいお見通しだよ〜」
「おぉ〜オーデュイ観察眼あるぅ〜」
「ふふ〜ん! んっ!?」
「オーデュイどしたの?」
「いや……なんかチクってしたなーって。身体の中で何か刺さったのかな?」
「だいじょぶオーデュイ?」
「うん……気のせいかな……」




