137本目 年越し生配信!先に煩悩の数だけモンスターを倒せるのはどっち!?
『おいでメガちゃん! 〈こらー!〉』
愛媛県松山市。
道後温泉街にある旅館に門戸を開くドウゴダンジョン。
ハコネダンジョン同様、内部は洞穴の温泉地帯が広がる危険等級B級のダンジョン。
『これで68! このままアオイ嬢に負けないようにどんどん倒していくよー!』
来海とのコラボ『年越し生配信! 先に煩悩の数だけモンスターを倒せるのはどっち!?』を生配信中だ。
先に現地入りしたオーデュイと合流し、前日の夜から入念に打ち合わせをした。
ここ最近のドウゴダンジョンは魔物が大量発生しているらしく、ダンジョン入口まで魔物が迫る事態に陥っている。
それらを討伐し、鎮静化するのも兼ねて今日の企画が行われることとなった。
「──ところで君たちは今まで何人を葬った」
トウキョウダンジョンで放った藤岡の言葉が脳裏で反芻する。
……舞梨にとって、久しぶりの魔物討伐。彼女には模倣者について知り得ることは伝えたが、魔物も転生した人間なんじゃないかという仮説は今も伏せたままにいる。
オーデュイという事例はいるが、仮説は仮説だ。まだ立証できる証拠がない。
『むむむ、この辺はモンスターいなくなっちゃったかな? 次のエリアにいってみよー!』
舞梨から楽しみを奪う可能性があるなら、俺はこのまま隠し通してみせる。
彼女は世界を照らす光となる存在だ。影の部分は裏方の俺が内密に処理しておかねば。
『ちょっとお水きゅーけーしまーす♪ ふぅ〜』
オーデュイがポヨンと取り出した500mmのペットボトルを受け取った舞梨は、ゴクゴクと半分以上を一気に飲む。
オーデュイはとても優秀なスタッフだ。
撮影やAD作業(集めた魔晶石を体内に入れたり、体内から取り出した宝具を手渡したり)してくれる。
その一方で俺は、後方で滞りなく配信できているのかの確認と、他の探索者が紛れないよう人払いをしていた。
撮影・討伐の邪魔をさせないのはもちろんだが、やっぱりどうしてもこのダンジョンでは他人に近寄らせたくはなかった。
『ぷはー! ふぅ〜暑いね〜。ほんと水着でよかったよ〜』
このドウゴダンジョン。水着型の防具での攻略が推奨されている。
まず暑くて普通の防具じゃ熱中症になってしまうことと、温泉なので当然水場が多く濡れてしまうからだ。
そこで、子供のようなユニークなアイディアで他にないオリジナリティ溢れる武具や防具をクリエイティブ・販売する三大企業の一つ〝チームランドセル〟製の防具をオーデュイが購入しておいてくれた。
青色ベースのギンガムチェック模様の水着を着用した舞梨だが、薄い生地ながらも防御力は高いと最近人気の代物。
もちろんオーデュイも俺も同社の水着を着用している。
『あ、モンスターいたー! まてまて〜!』
ぬるぬるとした岩場を踏み越えて魔物を追う舞梨。靴だけは滑りにくいものを履かせて
『あー……!』
意味なかったようだ。
崖下で水飛沫を大きく立てる彼女の元へと、オーデュイと共に降りていった。
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『──え、何事!?』
『……ぷはっ! ふ〜ビックリした〜。ん?』
『ま、マイマイ!?』
『あ、お風呂入ってたのに驚かせてごめんねー。おー、女の……子? あれ、水着は!? 勢いで飛ばしちゃった!?』
すぐ駆けつけると、舞梨は偶然居合わせた人にウザ絡みしていた。
相手方が戸惑っているようなので、勝手に撮影したらマズいと思い、オーデュイに言って撮影を一旦中断してもらう。
配信画面も〈休憩中ー!〉のテロップを入れた。
「あ、お兄ちゃん!? こっち来ちゃダメ! 変態の罪で捕まっちゃうから!」
「え、亮くん変態なの!?」
オーデュイはカメラを構えたままこっちに向く。
良かった、撮影止めてて。
「お前ら何言ってるんだ。その方は男性だぞ」
「え、こんな可愛いのに……?」
確かにその人は女性と見間違うほど可愛らしい顔立ちに肩まで伸びた髪。手足は細く華奢な体付きをしているが、あるのは谷間ではなく胸板であるし、骨格も僅かにだが男性寄り。
それに男の俺を前にして、上裸のままでいられるのは女性としては度胸が座り過ぎだろ。
「つまりマイマイの目の前にいるそちらの男性の方が変態であるということだ」
「初対面なのに酷い言われよう!?」
そりゃそうだ。
間近で彼女の水着姿を拝めるとは男ならば禁忌だぞ。ただでさえこの撮影は私的に乗り気じゃないのに……。
が、そんな私情は関係なくこちらにしか非がないので、彼にはまず謝罪から入った。




