136本目 物語に愛は必然!NewTubeにはマイマイ必然!
「あの、東さん。一体……」
「気付いていますよね。少し前から。ダンジョンは該当する模倣者の感情に合わせて環境を変えることを」
庭白がドキリと反応を示すと、近くの岩が崩れ落ちる。
「みたい、ですね……。うぅ……心を覗かれているみたい」
「確信は持てませんが、完全攻略されても模倣者が消えないのは──きっと庭白さんを取り巻く愛情が強いものだと推測できます」
「ふぇっ!? 恥ずかしい……」
俺たち模倣者は転生した人間とはいえ、ダンジョンを体現したような存在だ。全てを隅々まで知り尽くされることで、これ以上の価値なしとして存在を維持する必要がなくなり消滅する。
しかし、無限の可能性を秘めている〝愛〟といういまだに人間でも解明できない感情が芽生えることで、まだ存在を許されているのではないか。
「愛を与えられた者だけが次の何かに進化できるのか……?」
「進化……それ、確かあの人も同じようなことを。新人類への進化……とか」
「藤岡のことか……。愛情に関われた模倣者が不死の存在、つまり奴の言う存在になれるわけ、か……」
「愛……っ、その、隠してたんですけど、関係があるかもしれないので正直に言いたいと思います。実はわたし……エリナのことが本気で好きなんです……!」
と、あたかもバレてないという前提で告白をされた。
同時にまたダンジョンが揺れだす。
「あ、はい。知ってます」
「えぇっ!? さすがSS級……! 観察力が長けて──」
「見てれば誰でも分かりますよ」
「えぇっ!? じゃ、じゃあエリナも!?」
「さ、さぁ……意外と当の本人が一番気付かないものですし。あと、動揺しすぎて洞窟が崩壊しそうなので落ち着いてください」
遠くから「うわー! ぐわんぐわんだー!」の舞梨の楽しんでいる声と野田の悲鳴が聴こえる。
「はっ、エリナ! ──うぅ、すみません……」
「いえ。しかし、ほぼ確定ですかね。ダンジョンと模倣者の感情は密接に関係する。ダンジョンが完全攻略されれば我々は消えてしまうが、愛あればそれ限りではない……まるで御伽噺だな」
愛があれば、永遠の眠りについたお姫様もキスで起こすことができる。
愛さえあれば、石にされた王子様も涙で元に戻すことができる。
感情にダンジョンの環境は左右される、か……かつてヨナグニダンジョンでも俺の恐怖心が溶岩の波となって襲いかかる事例があった。それも同じことか。
一人しか入れないヨナグニダンジョンのルール。いまだに誰も入れないが……俺の心の中に今も父は閉じ込められているのか。
「……心の中に土足で入り込むなよ、バカ親が……」
「え?」
「あぁ、いえ……。しかし、考えは何となくですがまとまりましたね。それと何か前世について覚えていることはありますか? 模倣者は一度死んだ人間。その中でも私達が模倣者として選ばれた共通点があるはずです」
「……いえ、心当たりは、何も……」
「そうですか……。探求省でも模倣者の前世の身元を調べてくれてますが、私には何もなく。また、私自身何も思い出せなくて。庭白さんも何か思い出したらその時はぜひ」
「……はい」
……確実に何か知っているな。
しかし、話したくないほどに辛い過去なのか、話せない事情があるのか……。俺からはしつこく聞けない、今はそっとしておこう。
「話終わったー!?」とやってくる舞梨たちに手を振り返す。
「──東さんもマイマイさんと付き合ったことで、ヨナグニダンジョンに変化はあったのでしょうか」
「どうですかね。ただ、簡単に私は攻略されませんよ」
「マイマイさんにされましたけどね」
「……確かに」
彼女たちに聴こえない程度に庭白に小言で突かれてしまった。
いつ見たって吾妻舞梨は可愛い。そして好きだ。
この感情がダンジョン越しにあの親バカにバレているのかと思うと……末恐ろしいな。挨拶の言葉、考えておこうか。
その後、結局トサダンジョンはこれ以上攻略しようもないとして完全攻略のままであると結論付けることとなった。
この後野田たちは実家である香川へと立ち寄ってから、年越しは東京に戻りゆっくり二人で過ごすようだ。
「えりにゃん、りりにゃー! 良いお年をー!」
こちらはドウゴダンジョンで年越し配信する予定だ。
俺たちは猪俣の元に戻り、車で愛媛県へと向かった。




