135本目 どんな秘密でも意外なところからバレるものだよ!
「えりにゃーん! りりにゃー!」
12月30日。
ナルトダンジョンを後にし、次に訪れたのは高知県にかつて存在していたトサダンジョンだ。
待ち合わせとなる、ダンジョン入口前にいた野田と庭白を見つけ次第、舞梨はすぐに駆け出していく。
「すみません、送ってもらって」
「……構いませんよ。では、私はここでお待ちしております。お気をつけて」
新神戸駅までは新幹線で、そこからは来海の付き人である猪俣に拾ってもらい、高速道路で淡路島を通って四国入りした。
西日本側に来ることはあまりないので、寄れるダンジョンに行っては動画を撮り溜めしている。
もう動画さえ出せば1000万再生は平均で超えてしまうので、無理して企画作りする必要はない。地元紹介をするくらいで、各地のファンが喜んでくれるので、舞梨には自由でいいと伝えている。
実際、ここまでにも各地の特産品を食べてばかりなVlog動画がたくさん撮れた。
しかし、今回のトサダンジョンでは撮影ではなく、完全プライベートである。
「えっとぉ、今日は攻略じゃないんだよね?」
「はい。模倣者についての手掛かりを見つけに」
約10年前、トサダンジョンは完全攻略された。
完全攻略された模倣者は消失するのが過去の事例で報告されているが、当時保護された少女は今なお社会名:庭白リリナとして生きている。
俺たちは魔物も罠もない、ただの洞窟となった空間を進みながら会話を弾ませる。
「洞窟内滑りやすいから気をつけ──」
「あだぁー!」
「遅かったか」
後頭部からこけた舞梨の元に庭白が近寄ると、「痛いの痛いの飛んでけー」と頭を優しく撫でてあげた。
「おー! 飛んでった気がするー!」
「それが噂の回復能力ですか」
「はい。私は〝再生〟と呼んでいます。このように触れ合うことで他者を回復させられます。小さい傷なら触れるだけで、重症でもわたしの体液でなら治すことが可能です。治す、というより戻すが近いですかね。例えばこのように──」
「別にアタシ疲れてにゃいからキスしようとしにゃくていいのよ」
「ちゃんと実践して見せないと意味ないよ?」
「説明だけでいいでしょ!」
キスを迫ろうとしてくる庭白を野田がそれとなくかわす。
死来能力。模倣者が宝具なしに使える人智を超えた能力。
元々模倣者は耐久力と回復力には優れているが、庭白には自身がどれだけ傷付こうとも即座に治る超回復の能力を持っている。さらには他者に分け与えることも可能だ。
「おぉー、りりにゃもそんな不思議な力持ってたんだね! 亮くんもねー、変わったことができるよ〜。たとえば──」
「舞梨。別に手の内を晒す必要はない」
「えー、えりにゃんたちにもー? むむむ、蜂蜜好きなんだから〜」
「秘密主義な」
俺がいつもの言い間違いを訂正した時だった。
「あれ、呼び方が……」
「ふ〜ん? にゃるほどね〜」
呼称の変更で二人に悟られてしまったか。俺も言い間違いをしてしまったな。
「えぇっ!? ち、違うよぉ!? みょ、名字だとややこしいからー!」と、序盤でするであろう言い訳を吾妻がわたわたしながら答えた。
「別に隠さにゃくても、世間に言ったりしにゃいわよ」
「前科あるだろお前」
「い、いつの話よそれ。もう反省してるし」
「亮くん、しつこい男は嫌われるぞ〜」
舞梨がそう言うので俺はすぐに謝罪した。
「なんかそのリアクションされるの、こっちの調子が狂うにゃ……。ま、それにしてもいいんじゃない? 演者と裏方が付き合うにゃんてよくある話だし。二人はとてもお似合いよ」
庭白もとても頷いて肯定する──ん? どれに対して肯定している?
「えっへへー、バレちゃったら仕方なおぉっ!?」
突然としてダンジョン全体が大きく揺れるので、すぐに舞梨が倒れないよう、抱き寄せて支える。
「大丈夫か?」
「えへへ、ありがと。でもこれくらい平気だからだいじょぶ!」
「イチャついてる〜」と野田が揶揄うので俺はすぐに離れた。
一瞬のことだし、最初の揺れこそ収まれば何事もなくただの洞穴へと戻る。
「地震かなー?」
「最近多いわね。特にこの辺ではほぼ毎日揺れてるみたいにゃのよ。それもあって、本当はトサダンジョンがまだ完全攻略されてにゃいとアタシたちは踏んで来たの」
「ここに来たのは庭白さんについて調べるだけではないってことか」
「そ。もちろん攻略するためじゃにゃい。他の誰にも攻略されにゃいように、対策を取りに来たの。イヤよ。リリナがいにゃくにゃるにゃんて」
「エリナ……!! きゃっ!?」
と、またダンジョンが揺れる。
さっきよりも長いので、庭白と野田はお互いに守るように抱き付く。
もう一度彼女を守りに行こうとしたが……電車の揺れに手すりを使わず立つチャレンジをしてるが如く、楽しそうに舞梨は踏ん張っているので大丈夫そうだ。
「ちょっと長いわね」
「う、うん……」
「トサダンジョンって、そういうトラップなのかな!?」の舞梨の疑問に「わたしでも分からない。昔はそんなことなかったけど」と庭白は落ち着いて答えた。
すると、呼応するように揺れも収まった。
……やはり、そうか。
「庭白さん、ちょっといいかな」
「あ! 亮くんったら、彼女置いてりりにゃと二人きりになるんだー。むー」
「ちょっと話するだけだ」と俺は吾妻は宥める。
本気で嫉妬していたわけじゃなさそうだが、二人にバレたことで気持ちを隠す気はさらさらないようだ。素直で自分の気持ちに純粋な……可愛いやつだ。




