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ダンジョンストリーマー!! 〜人気急上昇中のJK配信者はチート級に強い──なぜなら裏方の俺が暗躍しているから〜  作者: 杜 一樹
第3章 ハコネダンジョン

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13本目 ハコネダンジョン初攻略!ついでにレイドボスまで倒しちゃった!


『マイマイパンチパンチ!!』


 彼女が二度言ったので、後方から石を二回投げつける。

 効いていそうな叫びは上がるが決定的なダメージにはならず、再び地に落ちることはない。

 とても頑丈でしぶとい。石如きでは当然倒せそうにはないか。


「吾妻さん」

『ん? なにー?』

「魔物《モンスター》を撹乱したい。吾妻さんならグルグル走り回れるんじゃないか? 舐めプしてやれ」

『おっけー! 任せて! 龍さんこちら! 手の鳴る方へ♪』


 吾妻はゴツゴツした岩の中をパルクールしてるかのように跳び回り、不安定な足場を駆けて行く。

 元より運動神経が良いのは知っていたが、そのレベルはアスリートをも超える。

 それに加えて単純な思考、先を考えないアホさ──つまり、物怖じしない性格だからこそ、どんな状況でも最大限なパフォーマンスを披露できる。


 ……ちゃんと褒めているぞ。


 もちろん、彼女の猪突猛進は下手なことをやらかすかもしれない。

 だからこそカメラは片手で吾妻を捉え続ける中、たまには石を軽く投げ付けて、意識をこちらに引く。


 ……さてと、湯気の影響もあってか、吾妻からはこちらを視認できないはず。

 使わせてもらおう──宝具《レリクス》の力とやらを。


「宝具《レリクス》:侘《わ》び寂《さ》び──〈静寂之涙《せいじゃくのなみだ》〉」


 この宝具《レリクス》の使い方はどこかのまとめチャンネルが、全国のNewTuberが使っている場面を切り取った『宝具《レリクス》使用時まとめ』なる動画で、一度観たことがある。

 俺は右目から一筋の涙をさっと流し、宝具《レリクス》の扇子を使って、魔物《モンスター》の真下にある温泉に涙を投げ入れる。


『たっだいまー!』


 早っ。もう吾妻が一周して戻って来た。

 俺は宝具《レリクス》が見つからないよう背後に隠す。


『見てよこれ! キレイなお花見つけたー!』と、手には一輪の白い花を持っていた。

 凶暴な龍を前にして、そんな余裕もあったのかよ。身も心も強者の振る舞いそのものだな。

 まぁ、タイミングはちょうど良い。


「吾妻さん、なんか適当に水っぽい技名叫んでみて」

『わかった! んー、〈みずみずバズーカー〉!!』


 ネーミングセンス皆無。

 だが、発言に合わせて俺は、涙が含まれた温泉のお湯を全て引き出し──まるで吾妻の手から放ったように巨大な水の大砲として魔物《モンスター》にぶつけ、空になった底の深い温泉の中に撃ち落とした。


『……とうとうわたし、こんなことまで……!』

「すごいすごい。じゃあ、これを」


 俺はマッチを吾妻に渡した。

 火を起こせるものがないかと散らかった来海たちの荷物を見れば、これが落ちていたので使用することとする。きっと蝶野がコンロを点火する際に使うものだ。使った分はもちろん後で購入して返却する。


 今からこの魔物《モンスター》を爆破する。

 硫化水素ガスが鱗の間から出ていることは分かっていた。

 ただこの魔物《モンスター》の能力の正体はただ硫化水素ガスを出すことではない。空気の流れを操ることだ。

 思いのままに火球を飛ばし自身が爆発に巻き込まれないよう、しいては宙に浮けるのもその能力のおかげだ。

 常に硫化水素ガスを身に纏うよう循環させ、弱らせる時だけ相手に流し込む。

 それにつられてか、ダンジョン内の湯気も魔物《モンスター》を纏うように集まってくるから視界が悪くなる。


「じゃあ、火をつけたら捨てて。もうガスマスクを取っても良さそうだから、カメラ目線で」

『うん! 火を付けてっと』


 彼女は火が付いたマッチを魔物《モンスター》がいる穴へと指で弾き……


『じゃあまたね、バイバイ』


 ──見せたことのない、大人びた表情で別れの言葉を言う。


 ……一瞬呆気に取られたが、俺はすぐさまお湯で蓋をする。

 瞬間、大爆発。大炎上。

 お湯だけでは全て防ぎ切れず、火柱が高く上がる。


『イェーイ! まいったか〜! ……あれ、東くんどうしたの?』


 見惚れた。


 こんなこと言えるはずがなく、「……吾妻さんが強すぎて、思わず感激しただけだよ」と適当に嘘ついた。

 ……俺たちは演者と裏方。それに、それだけじゃない。こんな浮ついたこと、許されてはいけないんだ。


『えへへー、それもそうか〜』


 こいつは浮かれてるが。

 噴き上がった火柱はお湯を蒸発させたのち、消えていった。


『みなさーん! おっきなドラゴンを倒しました! それでは、すごい! カッコいい! と思ってくれた方は! 高評価とチャンネル登録、よろしくねー♪』


 でもまぁ、何も知らない彼女が楽しそうに撮影しているわけだし。

 俺は浮かび上がりそうな微笑を必死に殺して、カメラ越しの彼女と目を合わせた。


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