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ダンジョンストリーマー!! 〜人気急上昇中のJK配信者はチート級に強い──なぜなら裏方の俺が暗躍しているから〜  作者: 杜 一樹
第3章 ハコネダンジョン

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12本目 素手で巨大な龍と戦っていくよ!


 ──来海たちの元に駆けつける5分前。


 俺たちマイマイチャンネルは、先行してる来海たちが魔物《モンスター》を排除してるお陰で、何の問題も撮れ高もなくダンジョンの奥へと進んでいた。


『はぁ……わたしのハイパーソード……』


 いや、問題はあったか。

 げんなりした演者をこのまま配信するわけにはいかないので、励ますことにした。


「元気出しなよ。失くしたのは惜しいけど、あれもハプニングとして面白くなるに違いないよ」

『あっ、たしかに。みんなに楽しんでもらえるなら、尊い犠牲だね。じゃあ、いっか!』


 チョロいなこいつ。

 あんな安い武具《ギア》ならば、無くてもさほど変わらない。

 何が来ても俺が守ればいいだけだし……それに運動神経は良くても、こいつに武具《ギア》を持たせた方がうっかり自分を傷付けそうで怖い。

 彼女に持たせるならば、良質な防具や回復・支援系の宝具《レリクス》がいいか。


『あ! みんな見てみてー! たっくさん湯気が出てますよー! ここは温泉地だからダンジョンの中も温泉なんです。ん? スンスン……うぇぇ、なんか腐った卵みたいな臭いが強れちゅんっ!?』


 俺はすぐさま吾妻を背後から抱き寄せて、彼女の鼻と口を手で塞いだ。


「んぐごぐん!? んぐんーんぐんんん、んんんんんんぐんー!」

(東くん!? 撮影中なのに大胆すぎるよー!)


「待て、暴れるな」


 目の前から流れてくる大量の湯気。

 共に流れてくるこの臭いは──硫化水素か。

 温泉地特有で珍しくはないが、ハコネダンジョンでここまで高く観測されたことは今までない。だからB級に下げられるという噂もあったというのに……。

 硫化水素は本来無色、臭うその時までは気付かない。

 空気よりは重いため、近くの岩の上に吾妻を連れて飛び乗った。


「ぷはー! あ、東くん、いきなり後ろから抱き付くのはちょっと反則だよっ……それに、東くんの手のひらにキ、キ──」

「硫化水素だ。いいからこれ付けろ」

「りゅうかすいそ? って、これってガスマスク? ガチもののガスマスクだ……!」

「今からおそらくボスとの戦いになる。顔出しができなくなるが……記録石碑《アーカイブストーン》に名前、載せるんだろ」

「わぁ……! うん! もっちろん!!」



   **



『マイマイパンチー!!』と、吾妻がその場で殴る素振りをするので、俺は適当な石を龍に向かって投げ付けた。

 意識が朦朧としている来海たち。この硫化水素ガスから逃げ遅れてしまっていたか。

 しかし、彼らが食い止めていなければこの魔物《モンスター》は入口に向かって進行し、吾妻や他の探索者《シーカー》を危険に晒していたかもしれない。


『──それじゃあ、マイリます!』

「ちょっと待て。まずは来海たちの救出からだ。だから吾妻さんはカメラを持って、先に現場を実況してほしい。ここから動かずにだぞ」

「動画素材集めってやつだね、おっけー! 任せといて! でもとりあえず何から始めたらいい?」

「もう一回マイマイパンチ出しといて」

「マイマイパンチー!!」


 また適当な石を投げつけて、散弾銃を打ち込んだごとく攻撃する。

 けたたましい叫び声を上げ、宙に浮いていた龍型の魔物《モンスター》は地面へと落ちる。


「パ、パンチが遠くまで届いた……やっぱりわたしって最強!」


 龍が再び動き出す前に。吾妻が調子に乗って近付く前に。

 俺は四人にマスクを順に付けさせて、少し離れた場所に素早く避難させる。


「あ、貴方、は一体……それに、貴方のガスマスク、は……」


 温泉地のダンジョンだしと思い、念の為ガスマスクを持って来ていた。吾妻用、俺用、吾妻が壊した時の予備用、吾妻が無くした時の予備用、吾妻が俺のを壊した時用と5つ。

 吾妻と来海たちに渡せば俺のは無くなるが、これくらいの濃度ならば特に問題はない。


「ただの裏方です。裏方は着飾る必要はありませんから。息を殺して、輝く彼女をただ撮影するだけなので」

「ふふっ……そう……素晴らしい、心掛けですわ……。ねぇ、これを……」


 来海は懐から扇子を取り出し、俺に手渡す。


「宝具《レリクス》:侘び寂び──貴方なら、きっと使いこなせますわ」

「……分かりました。では、ゆっくりと休みながら、是非とも動画更新をお待ちください。底辺ストリーマーが龍を倒す、バズる瞬間が観られますよ」

「ふふ、楽しみ、ですわ……」


 来海は目を閉じて、呼吸をすることに集中し始めた。他の三人も意識はあるものの、このまま放ってはおけない。

 早く片付けて、四人をダンジョンから連れ出さねば。

 さて、吾妻のところにすぐ戻ろう。



   **



「マイマイ史上、最大の敵……でも、だいじょぶ! わたしがバシッ! っと倒してあげます!! あ、東くん! 葵ちゃんたちはだいじょぶだった!?」

「あぁ。大丈夫だから、俺の名前を呼ぶなよ」

「ごめん! 忘れてた!」

「撮影できたか?」

「もっちろん!」


 俺は吾妻からカメラを受け取る。


「……録画ボタン押し忘れてるぞ」

「えっ、忘れてた」

「まぁいい。今から撮れ高を作れば」

「おっけー!!」


 しかし、温泉の湯気と魔物《モンスター》が出す硫化水素ガスのせいで画面が白いな。ホワイトバランスとかで調整できるものではないし。

 これだと、ボスを倒したところで決定的な証拠を見せつけられない。

 この湯気を消すにはどうしようもないから、何かメソトスコーラの時同様に、派手なことができればいいが……。


「ねぇねぇ、東くん。わたしさ、すっごいカッコいい倒し方思いついたんだけどさ」

「何?」

「爆発しちゃおうよ。そしたらヒーローみたいでカッコよくない!? 温泉もあるから火が広がる心配もないし!」


 吾妻も理由は違えど、同じようにどう倒すかを考えてくれたみたいだが、さすがにそれは却下だ。

 硫化水素には引火性がある。ダンジョンという密室空間においては大爆発を起こしてしまう。

 だからハコネダンジョンは火気厳禁──ではないな。

 入口に注意喚起の立て看板もなければ、腐卵臭もここに来るまで臭うことはなかった。


「こっちだ」

「おぉっ!?」


 龍が火球をこちらに吐いてくる。

 この魔物《モンスター》が炎を扱える時点で実は爆発しない硫化水素に似た気体──もしくは気体の流れに仕組みがあるはず──


「なるほど……そうか。いいアイディアだな、採用だ」

「ふふーん! でっしょ〜?」

「よし、撮影するぞ」

「うん!」


 再び浮かび上がる魔物《モンスター》を背景に、吾妻はカメラの前のファンに向けて語りかける。


『このモンスター、なかなか手強いよ! 名前……確か龍火水祖《りゅうかすいそ》? だっけ。これからマイマイが倒してみせます! みんな、見ててね!!』


 吾妻はカメラに向かってウィンク。

 ファンサービスは十分だ。あとはレイドボスを、彼女の手柄にして倒すぞ。


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