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ダンジョンストリーマー!! 〜人気急上昇中のJK配信者はチート級に強い──なぜなら裏方の俺が暗躍しているから〜  作者: 杜 一樹
第3章 ハコネダンジョン

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11本目 【宝具紹介】わびさびを感じとれる女にわたしはなる。


 吾妻が新作武具(ギア)を失って絶望していた頃、来海たちは予定よりも早く進んだところで休憩をしていた。


「葵お嬢様。予想よりも魔物《モンスター》が少ないようです。この調子ですと15分後には最深部に到着かと」


 襲いかかる小猿に似た姿に角と牙が発達した魔物《モンスター》を猪俣は殴打し、この場から排除する。

 腕に装着するは、武具《ギア》製造三大企業の一つ〝天空堂《てんくうどう》〟のオーダーメイド製品。

 軽いながらも耐久性は高く、威力は岩をも破壊する。


「そう、分かりましたわ。白(・)湯(・)華(・)まであと少しですわね」

「葵お嬢様。失礼ながらその宝具《レリクス》は噂にしか過ぎません。過度な期待はされない方がよいかと」

「そう、ですわね。大丈夫ですわ、なかったとしてもまた別のところを探せばいいのですから。さて、ゆとりもあるようですし、一旦この辺りで、マイマイさんたちが来られるまでティータイムといたしましょう。蝶野、何か作ってくださる?」


 蝶野はコクリと頷き、自身が持って来た荷物を広げる。調理機材に調味料、加熱料理ができるよう火を起こせるものまで。

 彼の手にかかれば、どこであっても美味しい料理が出てくる。食材は魔物《モンスター》やダンジョン内に植生する植物、産地直送だ。


「……しかし、ここまで魔物《モンスター》が少ないとは。もしかして他の探索者《シーカー》に先越されているのかしら」

「葵お嬢様。大変差し出がましいのですが、私めの耳には聞いたことのない不協和音が届いております」

「不協和音……? わたくしには聴こえませんが──」

「かしこまりました。不協和音などありません」

「肯定されなくても!? 優見が言うのですもの。その言葉は信じていますわ」

「大変感激にございます」


 鈴鹿はずっと抱えている来海を、猪俣が準備したガーデンテーブルセットに座らせてあげる。

 来海は皆に感謝を述べ、それから告げる。


「この先、気を引き締めましょう。何か嫌な予感がいたしますわ」

「「かしこまりました」」


 シェフの蝶野も頷こうとしたその時、何かに気付く。


「…………! ……、……!!」

「どうした蝶野、っ、腐卵臭……!?」


 何か黒いものがいくつも飛んできたので、猪俣はそれを殴り返し、残りは蝶野が自慢の戦闘用包丁で捌き下ろした。

 飛んできた黒い物体の正体は……猿型の魔物《モンスター》の亡骸。


「葵お嬢様、何か来ます」


 立ち上がる温泉の蒸気から現れる、黄土色に染まりし長く太い体躯。

 その全ては硬い鱗で覆われており、大きく鋭い蛇眼が来海たちを捉えていた。


「……おかしいですわ。ハコネダンジョンのボスは猿型と聞いておりました……ですが、この姿はまるで──龍、ですわ……」


 すると次の瞬間、龍型の魔物《モンスター》が口から火球を吐いてきた。

 三人は素早く反応し、跳んで避ける。来海もすぐさま鈴鹿に抱えられたので無事だ。

 だが、直撃したガーデンセットは粉々に破壊され、破片は燃え上がった。


「葵お嬢様! ご無事ですか!」

「えぇ、優見のおかげで無事ですわ! これは想定外の事態です。一旦、退きましょう!」


 しかし、猪俣からの返事がない。

 本来は、唇の動きで内容をやり取りするが、龍が現れたと同時に湯気が濃くなったせいで、相手の姿が視認できない。

 さらには龍が猪俣に狙いを定めているため、こちらに来れる余裕がないようだ。

 そこにシェフの蝶野が来る。


「…………! ……!!」


 ハンドサインを使い、来海に伝える。


「硫化水素……!? 今すぐ爺やを連れ戻さないと!」

「いけませんお嬢様。お嬢様の身が第一です」

「ダメよ優見。わたくしは四人でいなければ退きません。わたくしが道を作ります。二人がすぐさま爺やを連れ戻しなさい」

「かしこまりました」


 来た道を戻ろうとした鈴鹿だったが、主として仕える来海の言葉には絶対遵守。

 比較的安全なところに来海を避難させた鈴鹿は、メイド服であるワンピースとエプロンの膝下部分を剥がした。いつでも下半分が着脱可能となっている。

 両脚に装着した、膝まで覆われた鉄靴《サバトン》。猪俣と同じ天空堂製のギアである。

 そして、包丁を構えた蝶野と共に、二人は龍の元へと駆け出す。


 その頃、来海は扇子を取り出し──大粒の涙を流していた。


「ぐすっ、昔は泣いてばかりのわたくしも、今は誰かのために涙を流せるようになりましたわね──宝具《レリクス》:侘《わ》び寂《さ》び──〈静寂之涙《せいじゃくのなみだ》〉」


 宝具《レリクス》:侘び寂び

 流した涙を増幅させ、自在に操ることができる扇子。

 発動条件のために、涙を自力で出さないといけない懸念点はあるが、来海はそれを克服している。


 ティーカップ一杯分まで大きくなった来海の涙は、モンスターまで一直線に細く貫き、龍の気だけは引けた。

 涙の通り道だけ一瞬湯気が晴れ、猪俣の場所を確認する。

 暴れる魔物《モンスター》が飛ばす岩石は鈴鹿が蹴り飛ばし、吐く火球を蝶野が切り伏せて、猪俣と無事に合流する。


「うまく行きましたわね。それでは急いで退避、を……カハッ!?」


 呼吸困難、息ができずに来海は倒れてしまった。

 鈴鹿たちも主人の元まで間に合わず、同じく呼吸困難や痙攣を起こしていた。


(もう硫化水素が……体にまわって……!? 思ったより早い……! まずいですわ、このままだとみんな……。三人の怨呪《ダンジョンカース》を治したいのに……!)







「──本日からよろしくお願いします。葵お嬢様」


 ──鈴鹿優見、猪俣凌聞、蝶野拓味の三名は、来海葵が6才の頃にお屋敷へとやって来た。

 それぞれ与えられた仕事をすぐ完璧にこなせるほど優秀な人材。

 それもそのはず、全員がダンジョンストリーマー市場成長期に名を馳せていた実力者であり、料理や掃除(魔物《モンスター》駆除)は得意分野だった。


 だが、彼らは動画の世界から忽然と姿を消した。

 ダンジョンの呪い〝怨呪《ダンジョンカース》〟

 ダンジョン内で引き起こされる不思議な力によって、彼らは五感を奪われた。


 それでもなお、生まれた時から足が不自由で歩けなかった来海を、事業で忙しかった両親の代わりに娘のように世話してくれた三人。


 優見に世界を再び見せたい。

 爺やに感謝の言葉を直接伝えたい。

 蝶野と美味しいものを食べてお話がしたい。


 だからこそ、来海はどんな病気や怪我でも治せると噂の宝具《レリクス》:白湯華《はくとうか》を求めて、温泉地を巡っていた。

 三人の呪いが解ける可能性を信じて……。


(わたくしが不甲斐ないばかりに、ここまで連れて来てはこのような目に遭わせるなんて……)


「だれ、かっ……みんな、を、たす、けっ……」


 何もできず、涙が無情にも流れ落ちる──




『──マイマイパンチー!!』


 明るく照らす元気な声と共に、巻き起こる風圧が湯気と龍を吹き飛ばす。


『葵ちゃん! だいじょぶ!?』


 声からして、現れたのは吾妻舞梨……おそらく。

 フルフェイスのガスマスクを付けており、ガス対策は万全。

 一緒にやって来た東によって、来海たちにもガスマスクが装着される。


『……マイマイ、さん、ここは危険っ、です。ボスが、報告と変わってます……。あれは、〝レイドボス〟……早く、三人を連れて逃げて……』


 突然現れる、ダンジョンの危険等級を遥かに超えた魔物《モンスター》の存在──〝レイドボス〟

 たった一体のみで、大勢の探索者《シーカー》を跳ね除けるほどの圧倒的な力を持ち、恐怖の象徴として畏怖される存在に『だいじょぶだよ。龍くらいわたしが簡単に倒しちゃうから!!』

『へっ!?』


 吾妻が臆することはなかった。

 なぜなら、その危険性をよく知らないから。


『ふっふっふっ、足(・)を洗って待ってろ龍ー! どこが足かわかんないけど! それじゃあー、倒してまいります!!』


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