14本目 何でも治せるお花があるんだってぇ〜!?実際に使ってみた!
「ん、んん……」
「お嬢様! 葵お嬢様……!!」
撮影後、俺たちはすぐに来海たちを避難させていた場所へ戻ると、お付きの三人は既に目覚めており、来海も意識が戻るところだった。
レイドボスが倒されたことにより、既に辺りの空気は元に戻っている。俺はみんなにガスマスクを取っていいことを伝えた。
「優見……、爺やに蝶野も……」
呼吸は安定。
記憶もハッキリしているので脳に大きな損傷もなさそうだ。
「葵お嬢様……! ご無事で何よりです。あの龍型の魔物に関しては吾妻様が討伐なされました」
「葵ちゃん! 無事でよかったよ!!」
「これ、落としていましたよ」
俺は彼女の宝具である扇子を返した。
来海も察してくれたのか、素直に受け取ってくれた。
「本当に助けていただいて何とお礼を申し上げたらよいか、え……?」
「葵お嬢様……。気付かれましたか……? ぜひ、ゆっくりとその場を立ってみてください」
涙が流れるのを我慢した鈴鹿の支えのもと……ゆっくりと、来海は自分の足で初めて立った。
「な、なんで……」
「白湯華でございます」
「白湯華……!? 白湯華があったのですか!? し、しかし……ほ、他に白湯華はないのですか!?」
吾妻が綺麗だからと偶然見つけてきた、白い百合に似た花。
それは宝具:白湯華であった。
どのような傷や病気、呪いであっても治す宝具であると、探求省が公開する宝具リストに能力が記載されている。
ただ今回見つけたのは一輪のみ。そのことを来海に伝える。
「そ、そうでしたか……わたくし達の目標である白湯華まで見つけてくださるなんて、感謝してもしきれませんわ……。しかし、何故わたくしに使ったのですか……? わたくしなんかよりもまずはみんなに……」
「お嬢様。いつもお側に仕えている私達が、お嬢様の気持ちに気付かないとでも?」
「爺や……」
「葵お嬢様。五感を奪われ絶望していた最中、葵お嬢様が受け入れてくださったから今の私めがあるのです。だからこそ恩返しがしたくて、私めたちもずっと探し求めておりました」
シェフの蝶野もマスク越しでも分かるほど笑顔で頷いた。
「優見、蝶野……。そんな……、そんなの、わたくしの方こそ……。もう運ぶのが嫌になったのかしらね……」
「全くもってその通りでございます」
「優見、今は全肯定じゃないぞ」
「切腹いたします」
「優見! 冗談よっ!? おねがいやめなさい!?」
鈴鹿の全肯定モードが発動したのを全力で止める猪俣と来海。それをにこやかに見守る蝶野。
「こほん、話が逸れてしまいましたが……優見、爺や、蝶野。今まで支えてくださりありがとう。一人で歩けるようになったわたくしですが、どうせなら貴方達と共に歩みたいですわ。これからもわたくしと探索者を続けてくれるかしら」
「かしこまりました」
「当然にございます」
蝶野も大きく頷いた。
彼女たちの探索の主目的、それは白湯華を探し出すこと。
ダンジョンストリーマーとしてNewTube活動していたのも、情報を集める一環に過ぎない。
白湯華は今回を除けば過去に二例、発見報告がある。
そのどちらも温泉地のダンジョンだったことから、彼女たちは全国を巡り、そして今回のハコネダンジョンに来た。
役職としては演者と裏方。また、主人と使用人である関係性の彼らだが──互いが互いを想い合う、絆が強く感じられる良いグループだな。
「東くん、何だかわたしたちいいことした気分だね♪」
「実際そうだよ。吾妻さんがいなかったら、あの花も、それにレイドボスも倒せなかった」
「ふふ〜ん、そうですとも〜」
高く鼻を掲げる吾妻。
色々と良い編集素材は集まったし、何よりきっとダンジョンボスに成り代わったレイドボスを倒したことで、記録石碑にも名前が載ったはず。次の動画更新の際にはチャンネル登録者数は一気に増加するだろう。
だが、本当の仕事は注目されたこれから。ふぅ、まだまだ骨が折れそうだ。
「──マイマイさん方、その、本当にありがとうございました!」
「気にしないで! ともだちとして当たり前のことしただけだから!」と言うが、吾妻はめちゃくちゃ自慢げな顔をしていた。
「この後はダンジョンの外まで……と言いたいところですが、わたくし達まだ本調子じゃありませんので、戻るだけでも皆さんの足を引っ張ってしまいそうですね」
「手伝いますよ」
「ふふっ、いえ、大丈夫ですよ。わたくしには頼れるバディが三人もいますので。十分に帰れるゆとりはありますわ。……お礼代わりとなるか分かりませんが、少し耳寄りな情報をお渡しします。ここから少し離れた場所に秘湯があるそうなんです。良ければ寄り道してはいかがでしょうか?」
「秘湯!? それってつまり温泉ってことぉ〜!?」
……え?
温泉、入るのか……?




