128本目 クリスマスにラブストーリーはつきものだよね♡
「──奇怪な光景だな。まるで終末を覗いているようだ」
「やなこと思い出しちゃった〜? あら、ごめんなさ〜い」
廃教会にはなしおやじと、それになりかけている人間が大量に転がっていた。
藤岡が訪れた時には、天原の仕込みは7割くらい完了していたらしい。
「わたしの死来能力:〝編集〟があれば、触れた生命のエネルギーを上手い具合に組み替えてどんな姿にでも生まれ変われるのよ。マイマイの信者がマイマイの所有物になれるなんて彼らも本望でしょ」
「そこの三人は」
マイマイファンクラブの創設者メンバーである向井、岡野、馬場の三人だけは人間のままその辺に倒れていた。
「あれらは使えそうだから宝具とか与えて向かわせようかなって」
「やはりいくつか持っていたか。宝具使用の際は先生の許可を得るように」
「……あ? 別にいいだろーが、これらはわたしが回収したやつだからよ。新参者がリーダー気取ってんじゃねぇぞ? ガキがよぉ……って、いけない。わたしったら怖くなっちゃった⭐︎ 大人気ないわ〜」
人格が変わった天原だが、またいつものベースに戻る。
しかし、いつも現れる別人格とは違う話し方に藤岡は疑問を呈した。
「君は、何者だ」
「……えー、クラスメイトの名前覚えるの遅いタイプー? ソウシはソウシだよ。けど、少し、ほんの少しわたしが入って来てる。色んな人間を編集してきて、ようやくマイマイという素晴らしい素材を見つけた。ソウシの力が彼女に入り馴染むことで、さらに優れた器に移そうと思ったのに……ヤバいよね、あはっ! 逆にマイマイに侵食されそうになっちゃってる〜⭐︎」
私欲のため育てたはずの所有物に牙を向けられる。
既に繋がりは断っているというのに、編集で彼女と生命エネルギーを同化させた際の反響で、現在進行形で蝕まれているまま。だが、それも快感だ。
「ならば難しそうか」
「はぁ〜? できないとは言ってないんですけどー? これ以上マイマイに近付くのは難しいってだけ。この魔物のイメージはマイマイの考えから知って作ったものだし〜。そもそも、先生に頼まれてやってあげてるんだからね!」
「感謝しているとも。だが彼女はもう我々では手が及ばない。Sがいくつあっても足りないほどに危険人物となった。……ならば周囲から攻め入らねばな」
「あら、恋愛上手ね」
◇ ◇ ◇
「さぁ、最期の大博打といこうではないか」
「はぁ、はぁ……半分ほどでいいでしょう」
「ローストチキンめ」
佐藤が振るったサイコロの目は2・2・1。
「出目は……ピン……」
「最期にしては頑張ったじゃねーの。だが……ノッてる俺は神すら止められねぇ!」
(ピンゾロくらい俺の腕で出せる。遥か彼方までぶっ飛ばしてやる──)
馬場がサイコロを放すと……地面が大きく揺れた。
「あっ!? 地震!?」
「ゲーム中、使用者をお互い傷付けてはいけない縛り……裏を返せばそれ以外は何をしても問題ない。自身すら傷付けてもね」
自分の腕が壊れるのも構わず、佐藤は思い切り地面を殴り、茶碗を揺らした。
馬場のサイコロの一つが縁に当たって茶碗から零れ落ちる。
「しょ、ションベン……! ず、ズルいぞ!!」
「僕は運が悪いのではない、運を頼りにするのを悪だと思っている。全ての過去の行動が必ずこの先の未来を物語る。運ではなく、自らの選択肢を信じる。──神はサイコロを振らない。目を決めるのは僕だけだ」
重い一撃が馬場の頬に決まった。
さらに、決着は付いていく。
「うぅ……!? くそっ、マイマイは渡さない!! 〈担次元当ォ〉!!」
「……彼女は誰のものでもない」
振り上げようとする槍を猛李王は叩き斬り、よろけた岡野の前に大剣を突き付ける。
「い、いきがってんじゃねぇぞ、童貞が!!」
「……それだけは」
「あ?」
「……それだけは言っちゃいけないだろぉ!!」
「ひぃっ!? ぶくく……」
猛李王の気迫に岡野は泡を吹いて倒れてしまった。
「……あ、ごっ、ごめ……」
女性を気絶させてしまったことに、彼は心の奥底から反省と後悔をしてしまうことになる。
試合には勝って勝負に負けたみたいだった。
◇ ◇ ◇
「──それにしても、先生ってもっと理論派だと思ったけど、〝愛〟について試して欲しいことあるとか。意外と情熱的じゃん。ふぅ〜!」
「愛情が及ぼす能力を知りたいだけだ。なぜ我々が格下の人間たちに負けたのかを考えていた。我々との確固たる違いと、彼らの共通点。……人間は、他者のために戦うことで、想定の何倍もの能力を発揮すると仮定したのだ」
「ふ〜ん、まるでラブストーリーじゃん」
「創作物に愛はつきものだよ」
「じゃあ、その愛情を奪っちゃうってこと? ソウシ、愛を愛する神様だからそんな非情なことできな〜い!」
とか言いつつも、人間にエネルギーを過剰に与え、魔物へと生まれ変わらせている。
「だから逆に? わたしはマイマイのマネージャーに愛の力を引き出させるのが仕事なのよね?」
「ああ。我々と同じ模倣者に愛を与えればどうなるか、彼ならいい実証になると思ってね。……模倣者は種類は違えど、皆愛に飢え、感情を模している。自分を認めて欲しい、求めて欲しい。だからこそ再びこの世に生を受けたのかもしれない」
「確かに。ソウシも人類から敬愛されなきゃ! それが神のあるべき姿だから!」
天原は折れた十字架の上に飛び乗り、天を仰いだ。
「先生もさ、誰かと愛し愛される人はいなかったのー?」
「……私にも家族はいたさ。無償の愛を与えてくれる両親がね」




