126本目 マイマイラッキーチャーンス!抽選で1万名様にサインが当たる!?
『はーい、今日も配信しまーす』
『ほわぁ〜お願いします〜』
セルカ棒を使って街中で勝手に配信し出したのは、登録者数1.4万人の〝ゆめほのチャンネル〟の彼女たち。
スマホを持っている方が女子大生のゆめちー。髪色が青混じりの、見た目は少しギャルっぽい彼女だが性格はサバサバとしており、淡々と配信していく。
一方、ふんわり綿毛の彼女はまだ女子高生のほのほの。話し方もふんわりとしていて、体幹もなくずっと横揺れしている。
彼女たちは別に姉妹でもなければ友達ですらない。
とある共通点のもと知り合い、何となくで配信活動を始めた。投稿頻度は不定期だ。
『じゃあ今日は話題のなしおやじ探すわけだけどー、ほのほのなしおやじ好きー?』
『見て〜サンタさんだ〜』
『おい無視かーい。今日はクリスマスだしサンタさんいるかもだけど。はぁー、なしおやじ今日じゃなくても良かったくねー? 彼氏とか作ってさー、クリスマスデートしたいし、年がら年中イチャイチャとかしてたーい。そのサンタとやらに頼んで……マジでいんじゃん』
彼女たちの目先には全身赤色に身を包む、白い袋を背中に担いだままの大男がいた。
その男は黒い大剣を構えてこう叫ぶ。
『宝具:黒鷺──〈背面斬撃〉!』
左から掬い上げるようにして斬り込むが、長い槍によってかなり手前で阻まれて振り切れない。
「宝具:同担拒否──マイマイに近付く奴は弾き飛ばしてやる! おらおらぁ!!」
岡野は槍型の宝具をぶん回し、槍の柄が辿る円状の領域とし、絶対不可侵とした。
この宝具の効果は使用者の辿る領域を自身の所有地とすることで空間で押し潰すことが可能となる。
しかし、持続時間は1分。
『ヤバッ、サンタ戦ってんじゃん』
『赤色の服ってやっぱり返り血だったんだぁ〜。浦山好奇様の言う通りだ〜』
『アンタまたあのペテン師詐欺チャンネル観たの?』
『ペテン師じゃないよ〜都市伝説チャンネル! 浦山様には模倣者の存在を言い当てられたんだよ〜』
『金に目が眩んだ奴がリークしたのよ。それで、本とか出して印税で儲けてるんでしょ?』
『そんな売れてないよ〜。ほのも買ってないし〜』
『買ってないんかい』
『あ、飛んでくる〜』
自由人極まりないほのほのは続いて、茶碗を挟んでベンチに座っていた二人の男を指差した。
『残念。役無しだ。俺は……〈シゴロ〉だ』
馬場に頬を殴られた佐藤は、ほのゆめチャンネルのところまで大きく吹っ飛んでくる。
『ちょっ、ヤバッ! 何でやり返さないの!?』
『……ぐっ、やり返せないのです。彼の宝具は彼含めてその場の人間に暴力禁止の縛りを与える。行動は全て出目に左右される。出目以外の攻撃は効かないよう──って、すみませんが危ないので離れて……あれ、君達……』
『ヤバッ、はーい! 退避しまぁす!』
『ゆめちゃん、あそこなしおやじ〜!』
『嘘っ!? 行くよ!!』
『あ、だから逃げ……いえ、彼女たちなら大丈夫だろうけど、色々厄介に……それよりも……』
佐藤は生まれながらに運が悪い。それは彼の人生が物語っている。
幼稚園の頃は、自身だけが地域唯一の待機児童だった。
小学生の頃は、席替えが全て最前列の一番右。冬は寒いし、トイレから帰ってきたら他クラスの人に座られていた。
中学生の頃は、好きになった人はもれなく恋人がいた。
高校生の頃は、ダンジョンから帰ろうとしたら自転車のサドルだけ盗まれていたことが三度あった。
大学生の頃は、当時最年少でのS級探索者になったのに、別のダンジョンストリーマーばかり注目されて日の目を浴びなかった。
元S級探索者であっても敵わない宝具。相性が悪すぎる。
「降りるかい?」
「……いえ、勝つまでやれば元取れますから。威力倍賭けです」
だが、そんな不幸など可愛いものだ。
世の中には自分より苦労している人がたくさんいることを彼は知っている。
言い訳はしてられない。
運がダメでも押し通す。それが今までの、これからの生き方だから。




