125本目 今話題のなしおやじ!が、ななななんと大量発生!?
「……意外ですね。お二人はお似合いだと思っていましたが、まさか振ろうとは。他に好きな人でも?」
「いえ……。違う意味では、こちらも告白するつもりでした。──私は、本日をもってマイマイのバディを辞めようと考えています」
二人は豆鉄砲を喰らったような顔をした。
当然だ。話すのは彼らが初めて。決断してからは心が読める那緒子さんにも会わないようにはしていた。
「……何故だ」
「もう彼女は私がいなくても十二分に強くなりました。それにバディとして優秀なオーデュイもいます。私がいなくても活動できる。今の彼女を思うなら、側にいない方がいい」
もう既に2000万人を超えたファンが常に彼女を監視している。
アンチが極端に少ないことで有名なマイマイでも、男と撮られればと考えるとどうなるかは容易に想像できる。
だから最近は車移動や、必ずオーデュイを始めとした他の女性が共に行動するようにしている。
「……それは逃げだ」
だが、説明しても猛李王さんはしつこく食い下がってきた。
「……目の前の女性を幸せにするために側を離れる。否。たとえ爆発しても抱きしめて守ってやるのが、真の男だ。ビビって逃げたら、他の男に奪られるぞ。あと──」
……分かっている。猛李王さんの言う通りだ。
学校では宣戦布告されているし、吾妻がいる芸能界には国宝級のイケメンや、金を持て余した業界人が多く出入りしている。
誰がいいとかではない。ただ、吾妻が幸せになるのならばと考えた上での結論。
このまま一緒にいては待ち行く最後は不幸だ……それに、これから彼女は俺に──
『そういうシャバいのはナシだぜ』
会話に割り込むように窓辺に立つのは、今話題のなしおやじだ。
いつもはすぐ逃げるが……
『今日はクリスマス。俺たちの出番ナシはナシだぜ』
振り返ると、病室の入口には別個体のなしおやじがいた。
さらに、廊下から、空から落ちてきたり、ベッドの下から這い出てきたりと、なしおやじがワラワラと出てきた。
その数ゆうに100を超える。
「なんですか!? この量は!?」
あまりの数に病院内が騒然としている声が聴こえる。病院中で大量発生しているのか。
なしおやじが同時に出現したことも、ここまで逃げずに滞在した事例はない。
『ナシてこうなった?』
大量に進撃してくるなしおやじ。
一瞬にして囲まれてしまうが、猛李王さんが宝具を一振るいして道を切り拓く。
「……緊急事態」
「分かっています。宝具の使用許可は事後に取りましょう。はぁ、僕はまだ入院中の身ですよ……」
猛李王さんが佐藤を抱えて3階の窓から飛び降りたとしても、依然として大量のなしおやじから追いかけてくる。
すると、前から挟み込むように3つの人間の影が。
「危ないので離れてください!」と、猛李王さんから降りて自力で走り出した佐藤が注意するも──逃げない。
……っ、中央に立つあいつは……!
「──マイマイファンクラブゥ! 会員No.2!! ルゥタン⭐︎こと岡野ルゥ! マイマイを推すのはアタシ一人で十分!! No.2とか許せなぁい!!」
身長の低い女性が自分よりも何倍も長い槍をぶん回し、隣にいる男共を巻き込むのを臆せず攻撃する。男たちはいつものことのようにしゃがんで避ける。
「宝具:黒鷺」
左から襲いかかる槍は猛李王が大剣で防ぎ、弾き返す。
すぐさま岡野に詰め寄って、俺たちから彼女を引き剥がしてくれた。
「──マイマイファンクラブ。会員No.3。バババンガこと馬場丞と申す。さっそく運試ししますか。宝具:チンチロリン」
丸坊主の筋肉質の男、僧のような馬場はしゃがんだまま茶碗を地面に置き、サイコロを三つ振るう。
「出目は3のゾロ目。時期にピッタリだな〈サンタのアラシ〉」
氷塊を巻き込んだ竜巻が襲いかかるが、それを佐藤が腕一本で捻じ伏せる。
「はぁ、病み上がってもないんですよ。始末書は僕が書くというのに……。ただ座ったままでいいなら、すみませんが僕がその勝負引き受けますよ」
「運の無さそうな男だが、面白い」
そして真ん中に立つ、爽やかでいけ好かないイケメンなあの男も宝具を携えている。
「東さん! 決着付けましょうよ。どっちがマイマイにふさわしい男かどうかを──マイマイファンクラブNo.1、聖徒会長こと向井裕人。宝具:ベクトルアロー。僕たちを導く彼女を、僕が支えるんだ……!」
向井が放つ黒い矢印型の矢。
それを避けはするものの、後ろに迫っていたなしおやじ達に貫通する。
透過したようなので傷を負ったわけではないが、掠った魔物は全て後ろに飛ばされていった。
『傷付けるのはナシだぜぇぇー──』




