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ダンジョンストリーマー!! 〜人気急上昇中のJK配信者はチート級に強い──なぜなら裏方の俺が暗躍しているから〜  作者: 杜 一樹
第18章 【期間限定】クリスマスダンジョン

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123本目 告白予行練習?……むむむ!……ミス〜。


『──武崎探求大臣は『退任の考えはない』とのことです。では、続いてのニュースです。先週末から都内随所で目撃が相次ぐ魔物《モンスター》。通称〝なしおやじ〟──人前に姿を現しては、梨にちなんだダジャレを言ってすぐにどこかへ行ってしまう一風変わった魔物《モンスター》ですが、キモカワイイとSNSを中心に話題となり、是非ともカメラに収めようと多くの人が街へと繰り出しています』


 さっきまでの真面目なニュースから打って変わり、辻本アナウンサーは明るいトーンでニュースを伝えた。

 見つけてもくれぐれも近付かないよう探求省が呼びかけている、このなしおやじという魔物《モンスター》。どこかで見覚えがあるのだが……。


「ねぇねぇ、亮くん亮くん」


 来海の付き人である猪俣がリムジンで家まで送ってくれている車内。

 俺がスマホで時事を確認していたところ、手招きをしているくせに吾妻がお尻から寄せて、間近に座った。

 そして、耳元でこう言った。


「あのさ……クリスマス、デートしない?」

「……はぁ!?」

「わーわー! うるさいよ! しー! しぃー!」


 吾妻が慌てふためき出すと、動きがうるさい彼女に気付いた猪俣が「どうかされましたか?」とバックミラー越しに運転席から尋ねる。

 とりあえず何でもないとジェスチャーで伝えておく。

 彼は音が聴こえないから会話を聞かれることはない。ワイドミラーの設置や標識を表示しているから運転もできるのだが、察知能力が高いので普通の人よりも安全運転が可能である。



「クリスマスにデートって……お前、生配信は」

「もちろんするよ! でもお昼から夕方にかけてだからさ。夜は空いてるんだよねー。ほら、女子高生が深夜まで配信とか良くないからね!」


 とか言うが、ダンジョンに夜遅くまで潜ることはあっただろ。結局出歩いてちゃ意味ないし。

 まぁ、本当の理由は松實と生野の性格が、日が沈むことで変わってしまうことにあるが……そんなことよりもだ。


「クリスマスに男と二人で出かけていたところを週刊誌に撮られたらどうするんだ。もう、吾妻さんは炎上する騒ぎじゃ収まらないところまで来ているんだ」

「別にいいもん」

「良くないだろ」

「東くんとだったらいいもん!」


 猪俣がいきなりブレーキを踏み、車が緊急停止した。

 その勢いで思わず吾妻からこちらに抱きついてきた。近付いた時に彼女はシートベルトを外していた。これは俺の不注意でもある。リムジンという車内構造上、横向いて座っていたので怪我はなくてよかった。


「……ご、ごめんね。急に抱きついちゃって……」

「大丈夫だ……」


「お二人とも怪我はありませんでしたか!?」


 猪俣がバックミラー越しに聞いた途端、俺たちは元の席に戻る。吾妻もちゃんとシートベルトをし直す。

 彼はとても申し訳なさそうに、こちらの無事を伺っている。


「いえ、大丈夫です……何かありましたか?」

「……ええ。突然目の前に、今話題のなしおやじが降って参りまして」


『轢くのはナシだぜ』


 轢かれかけたなしおやじがボンネットに乗ったまま猪俣に注意(?)する。飛び出してきたのはそちらのくせに。

 そして、すぐにどこかへと走り去って行った。

 ニュース通り、本当に神出鬼没だな。

 あのなしおやじはよく報告に上がるすね毛がもっさり生えたものではなく、細くて白い脚だったが……性別があったりするのか?


「えっ!? なしおやじいたのー!? わはー! 見たかったな〜!」


 吾妻はなしおやじを視認できなかったみたいだな。

 悔しそうだが、興奮している。


「……好きなのか? あれのどこがいいんだか……」

「えー、だってあれはわ(・)た(・)し(・)が(・)描(・)い(・)た(・)オリジナルのモンスターだよ? 見たいに決まってるじゃーん」

「……は? あ……」


 まだ出会ったばかりの頃。

 後ろから回されたテストプリントに、梨におじさんの足が生えたよく分からないものが落書きされていたことがあった。

 その後も暇つぶしの度に見かけることはあったが……あの魔物《モンスター》、吾妻が関係しているのか……?


「それでさ、東くん。返事は?」

「……え、何が」

「デートの!」


 再び車が走り始めると、なしおやじについて考察していた俺に吾妻がまた聞いてくる。

 ……分かっている。ここまで意固地になってしまっては、彼女の意見を変えられない。

 せめて……せめてデートという表現だけは変えさせよう。


「分かった。年明けの撮影で使う、新しい武具《ギア》でも見に……」

「デート決定だね!」

「いや、視察……」

「ううん! 男女二人で出かけたらそれはデートなんだよ!」


「ドヤァ」とドヤ顔する吾妻。

 おそらくだが、打ち合わせの時に野田たちから何か吹き込まれたな……。


「……分かった。デートだな。あまり他に言うなよ」

「言わない言わない! やった〜」


 吾妻は口も軽ければ、何を言っちゃダメなのか良く分かってないからな。生配信では結構ギリギリなことを口走ったりする。

 だからクリスマス配信はかなり心配ではあるんだが……。

 ネットリテラシーの講義を何度か受けさせてもほぼ聞いてないからな。ネガティブなことを言わないからまだマシなんだが……。


「20時に〜。そうだなーどこで待ち合わせがいいかな?」

「目立たないところ。吾妻さんは変装してもバレるから。それこそ俺が吾妻さんの家に向かうよ」

「それじゃいつもと同じじゃん」

「同じでいいだろ」



「だって、告(・)白(・)するんだから、特別感ほしいじゃん!」



「──それ、もう告白してるようなものだろ」

「え……? あ、やば」


 吾妻は両手で口を塞ぎ、こちらを恥ずかしそうに伺う。


「……わすれて来てね」


 さすがに……もう気のせいじゃ済まされない。

 クリスマスまであと5日。

 確実に訪れる未来の選択に、俺は決断を迫られることとなった。

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