118本目 子育ての極意!それは……いっぱい褒めること〜♫
「チビアオイもう元気だね!」
「ウン…!」
オーデュイはチビアオイの機嫌が治るまで、手を繋いで園内を散策していた。
「…ッ!」
「えっ!? チビアオイ!?」
子育てあるある。子供が突如飛び出していくように、チビアオイもいきなり走り出した!
あまりの唐突さにオーデュイはビックリしてしまう。
このままでは逸れる……だが、入園者が多い。すぐにとある女性の膝に顔面をぶつけると、チビアオイはまた泣いてしまった。
「もうチビアオイったら! ごめんなさい! ケガしてないですか?」
「──大丈夫だよ。この子こそケガしてなーい?」
顔に当たったもののチビアオイに怪我はなさそうなので、オーデュイは「大丈夫です!」と答えた。
「そう、良かった。この子のトラウマにならなくて。……でも、誰かを怪我させては取り返しが付かないの。絶対に忘れてもいけないわ」
「…ウン」
「もちろん、親のあなたもね」
「あはは、ワタシ実は親じゃ……あれ? どこかで会ったことが……」
「えっうっそ〜。んー私はぁ……ふふ、あなたとは初対面かな。じゃあ、またね♪」
ベージュ色の服を着た女性は手を振って立ち去る。
チビアオイも同じく手を振った。
「また? んー、やっぱり会ったことある気がするんだけどな〜。でも何でだろ、思い出しちゃいけない気が……お?」
記憶を探るオーデュイの元に、『今、どこにいる?』と東からチャットが入る。
今度は手放さないように、オーデュイはしっかりとチビアオイと手を繋いでから、みんなのところへ戻った。
◇ ◇ ◇
「リョウクンミテ-! キラキラ~‼︎」
「そうだな」
色々なアトラクションを乗って回り、キャラクターたちと触れ合い、割高でも美味しいご飯を食べた。
フィナーレに、毎晩行われているエレクトリカルパレードを観た。
これでネズミーランドを存分に満喫したことだろう。
「ネムイ…」と三人はそれぞれ寝てしまい、各自おんぶしてあげる。
園を出て駐車場へ向かうと、蝶野の運転で付き人たちが迎えに来ていた。
「どうやら満足されたようですね。池永様が仰っていた話ですと、疲れて寝てから五分後に元に戻るだとか」
「お嬢様方。元のサイズの服でございます」
鈴鹿が車の中で三人を瞬時に着せ替えてあげる。
ネズミーランドから上がる最初の花火に合わせて、三人はポンッと元に戻った。
「もうチビエリナに会えないなんて……。あの宝具ってフェスト後、売り出しますか?」
「……そ、それは池永様に聞いてみないことには……」
庭白が何やら怖いことを猪俣に聞いているが、関わらないでおこう。
「……んー、あれ、ここどこ〜? ふぁぁ……」
花火の音に起きたのか、吾妻があくびしながら車から降りて来た。
「ネズミーランドの駐車場だ」
「えっ……!? ネズミーランドに来たの〜! って、もう夜じゃん!」
どうやら子供の時の記憶はないみたいだ。まぁ、現実でも3歳当時を覚えている人なんてほとんどいないか。
「これから帰ってリハーサルだぞ。向こうの責任もあるから待ってくれてるけど、かなり押してるから早く戻ろう」
「えー、何も覚えてないけど分かったよぉ……。ネズミーランドで遊びたかったな〜」
「また一緒に来よう。ちゃんと変装してだけどな」
「ほんと!? へへ〜、亮くん約束だよ!」
「ああ。……ん?」
「ん……あれ?」
たとえ覚えていなくても、小さい頃の習慣というのはずっと身に付いたままだったりする。
例えば、幼い頃から両親のことをパパママと呼べば、大人になっても変わらないように──
「わたしって、亮くんのこと亮くんって呼んでたっけ……?」
「いや……。……まぁ、好きに呼べばいい」
「……っ! ──えへへ〜、じゃあ亮くんって呼ぶ〜」
ただ、下の名前で呼ばれているだけなのに、照れながらも嬉しい……気がする。
……っ、とにかくだ。俺たちは急ぎ幕張へと戻ってから、夜通しでリハーサルを実施することとなった。
◇ ◇ ◇
──そして、NewTubeFestは幕を開ける。
50万もある座席チケットは即完売。
オンライン配信も大盛況。今年は海外からの接続も多く、メイン・サブステージ合わせて同接が脅威の3000万を超えた。これは去年の倍、過去最高記録だ。
毎年大注目のメインステージで行われる大型イベントには、吾妻の親友で熱狂的な大ファンの金子が自力で高倍率のチケットを勝ち取り、会場に来ているらしい。
吾妻が出演するなんて情報は渡していないというのに、『今年マイマイが出ないわけないでしょ? で、いるんでしょそこに。ねぇ、舞梨いるんでしょ?』と連絡してきたので、そっと未読無視した。
「わぁ〜、このアイドル可愛いね! いつかコラボしてみたいかも〜!」
関係者専用の配信チャンネルにてステージ風景を観ながら、ファンのように楽しむ吾妻。
去年まではそちら側だったのだろうが、今年からは違う。
「さて、そろそろ出番だぞ」
「おぉ!? もうそんな時間!? 行かなきゃね!」
メイクと衣装をバッチリ決めた吾妻は、楽屋を出て行こうとするが、ドアノブに手をかけたところで振り返った。
「どうした、忘れ物か?」
「うん。……ねぇねぇ、亮くん。わたしかわいい?」
「……っ……。あぁ、もちろんだ」
「むー」
「……世界一かわいいよ。だから自信持って行ってこい」
「むふふ〜。自信はいっつも持ち歩いてるよ!」
「マイマイー、スタッフさんが呼んで……おぉ、マイマイかわいいー!」と、オーデュイが扉を開けて楽屋へと入ってきた。
彼女には今回、本番当日の現場を色々と任せていた。男が吾妻の側で常にうろついてると、他の出演者やスタッフから変に噂を立てられても困るからだ。
だから、今日は楽屋に引きこもって色々と事務作業、編集に勤しんでいたが……今の会話、誰かに聞かれてたら一発アウトだったかな。
「行ってきまーす!!」
笑顔でこちらに敬礼して、オーデュイと一緒に吾妻はステージ裏へと向かった。
……俺も少ししたら舞台袖までは行くか。




