117本目 マイマイ変装術!ふふふ、わたしだとわかるかな〜??
「ワー! ネズミート、ネミーダ‼︎」
ネズミーランドのキャラクター達と会える、グリーティングエリアに連れて行く。そこで三人娘は着ぐるみに思う存分抱きつき、そして写真も撮ってもらった。
あぁ、着ぐるみとか言っちゃダメなんだっけか。キャラクター達だ、キャラクターたち。
ネズミーランドはたとえトイレであっても世界観が崩れないよう全てが細かく作り込まれているので、どこでも写真映えスポットになる。
……今日だけで、彼女たちの写真が千枚を越えた。撮りすぎただろうか。いや、成長し行く我が子を収めるなら、これくらい当然か。
……別に我が子でもないが。
年齢身長制限のないアトラクションに並んでいる間は、動画を観せて暇を潰させる令和なりの子育て法で、彼女たちがワガママを言うのを防ぐ。
他の並ぶ人たちもほとんどがスマホと睨めっこしている。友達と会話しながらでもスマホ操作するのが今では当たり前だ。
流行が次々と過ぎ去っていくその中で、もう15年以上も席巻し続けるダンジョン配信というジャンル。世界にもダンジョンができたわけだから、人気と話題性は更に加速している。
チラ見え程度だが、吾妻の動画を視聴している人もいくらかいた。まさか本人が隣で今、3歳児になってるとは誰も想像できないだろうな。
変装しようとも吾妻のオーラはバレる(というよりうるさい)ので、こう言う時にしかネズミーランドには来れない。
「リョウクン! ダコチテ-‼︎」
「……はいはい」
立つのが疲れたのか、吾妻は俺に抱っこしろとせがむので、叶えてあげる。そうしないと満足せず、戻らないかもしれないからな。
まだまだ並びそうだ。クリスマスシーズンだからだろうか。平日にも関わらず人が多い。
「リョウクンヘンナカオー」
ネズミ耳のカチューシャに、今の時期にお似合いの、白くてたくましい髭が付いたサングラスをかけた俺の顔を見て、吾妻は笑った。
動画に顔出ししたことのある庭白と人間姿のオーデュイもそれなりに変装している。コアなファンになら俺たちでもバレてしまうので念のためにだ。
もっとも庭白は「エリナァ……かわいいよエリナァ……」とずっと下向いているのでバレそうにはない。
「キモイ」と相変わらずチビエリナには拒否反応示されているが。
『ガオ〜』
「イヤァァァ‼︎ ウェーン、ゴワイィィ‼︎」
俺たちが今並んでいるのは、ホラー系のアトラクション。といっても小さい子供向けの、可愛らしいお化けがイタズラするテーマのライドアトラクションだ。
しかし来海は、並ぶのに飽きさせないために演出された仕掛けにすらもビビって泣いてしまった。
「わわ、チビアオイ大丈夫!?」
「ムリー! ノリタクナイィ‼︎」
「よしよし」と、オーデュイはチビアオイを抱っこしてあやしてあげる。
「亮くん、リリナちゃん。チビアオイ怖いみたいだから、ワタシたちは外で待ってるよ」
「いいのか?」
「うん♪ 待ってる間ブラブラ冒険してるよ〜!」
チビアオイはオーデュイに一番懐いている。彼女がそばにいてあげるのが最善手だろう。
「グスン」とチビアオイは抱きついたまま離れず。オーデュイは俺たちに手を振って一時の別れを告げた。
「……ねぇ、チビエリナ。もし疲れたら私が抱っこするよ?」
「イイ。イラナイ」
「あぅ……」
……庭白も泣きそうだ。
チビたちの世話はまだ続く。
◇ ◇ ◇
「ねぇ、ニンゲン多くない? 前の奴らやっちゃいなぁ〜?」
「いけませんよソウシ様。今、騒ぎを起こしてしまえば、せっかくソウシ様が考えなさった策が実行できなくなるかもしれませんよ。それに朗報です。先程調べたところ、大人でもプリンセスドレスが着れるお店を見つけ致しました」
「ま!? それ、ま!?」
「まです」
天原がイラミィと興奮して喋っている中、ミッチーは「ナイグッ……!!」とか言って、変わらず自撮りしている。
「ソウシ絶対『美女と四十肩』のヘルになるから。絶対なるから!」
「ソウシ様ならヘルの可愛さを余裕で超えられますよ」
「あんた、ほんと分かってるわね。褒めてつかわしてあげちゃう」
そんなイズモ組の会話に混じることなく、加賀遺は背負うリュックサックの中から取り出した、ネズミーランドのトラベル雑誌を隅々まで読んでいた。
「つまんないなー。夢と希望を求めるのにこんなにも退屈と絶望を味わされるなんて。何人かやっちゃダメ?」
「自分、直接手をかけるのはあまり好みではない。それにまた閉園されると観光できなくて困る。明日以降で頼む」
「各地で戦争を起こしてる奴の言葉とは思えないなー」
「自分は特に何もしていない。ただ農作物がダメになり、港が凍って船を出せなくなり、インフラが死に何もできなくなって人々は貧しくなる……すると、潤沢な地を求めていつも争いを始めるのさ。ふっ……とても愚かしいだろ。そしてまた歴史が生まれるのを自分はとても楽しみにしているんだ」
「うわ、サイコ」
「誰が言ってるんだ」
「サイコより、最高なことをしようよ。ちょっと私遊びに行ってくる」
列を仕切るガイドポールの鎖を、曰西は跨いでいく。
「あら? 戻ってきても列に戻してあげないからねっ!」
「大丈夫。あんた達はもう乗れるから」
すると、天原たちの前を並んでいた人々が次々と、アトラクションに乗るのが怖いだとか、並んでいるとトイレに行きたくなって嫌だとか様々なトラウマを思い出し、徐々に曰西に続いて出て行った。
「お、私パレードを指揮してるみたーい」




