116本目 アコガレノ プリンセス‼︎
「──ネズミーランド〜♡ 来ちゃったイェ〜イ」
街中なら目立つ彼らも、ここならテンションの高い若者のとして溶け込むことができる五人組が入園してきた。
「ソウシ様。あちらにプリンセスになれるお店があるみたいですよ」
「マジ!? 行くわよ!」
SS級の模倣者、天原ソウシが自撮り棒を使ってみんなで写真を撮ると、彼に生み出されたイラミィが入園口近くの店を指す。
天使の羽が生えていたイラミィとミッチーだったが、現在はしまっており、全身白色のコーデで人間のふりをしていた。
「あー、でも小学生以下しか無理みたいだよー?」
そして、同じSS級模倣者、曰西と加賀遺も共に訪れていた。
加賀遺はいつも通りの灰色パーカー。曰西はベージュ色のサロペットスカートを着用していた。
そして全員ネズミーキャラクターのカチューシャを装着済みだ。
「ソウシ小学生の心持ってるからいけるってことね」
「え? 見た目おじさんじゃーん」
「はぁ? リオチーそういうこと言うんだ。ソウシの心は傷付いた。イラミィ、ミッチー。やっちゃいな?」
「お、やっちゃう?」
天原とイラミィが、笑ったフリをする曰西と睨み合うも、加賀遺が制止する。
「ここでは止めておこう。自分、まだここを観光していないので。せめて終わってからで」
「たしかにー。ソウシもネズミーランド無くなったら困るわん。あんた命拾いしたわね。あとで表出な〜?」
「ほんと、ムカついちゃうわ。ぷんぷん」
「うわっ、マネするんだけどこの女〜。ソウシもっと可愛いんだけど!」
曰西が天原を真似て、頬を膨らませながら地団駄を踏む。彼もまた彼女に真似て同じことをする。
「ソウシ様。プライオリティパスの時間が迫っております。急ぎましょう」
イラミィがスマホで有料取得していた、アトラクションに並ばず乗れる優先チケットがあるので、彼らはさっさと目的地に向かった。
……ただ、イラミィはさっきの場所にまた戻ってきて、さっきからずっと自撮り写真を撮り続けていたミッチーに声をかける。
「……ナルシストも早く来てください。置いていきますよ」
「ソロソロさ。ボクちんの写真集ができるんだZE⭐︎」
「わー、鍋敷きの代わりにはなりそうですねー」
「購入ありがとサンキュー⭐︎」
◇ ◇ ◇
「ミテミテ-! オヒメサマ-!」
吾妻──じゃなくてチビマイリが選んだのはアニメーション映画『ヤンデレラ』のプリンセス、ヤンデレラ。
3歳児サイズの、見ていると重い気持ちになりそうな水色のドレスだが、吾妻が着るとそれがとても明るく見える。
それに髪型もプリンセスみたいな三つ編みへと、スタッフに施してもらった。あ、キャストって呼ばないといけないんだっけ。
「エリナ可愛い!!」
「葵嬢似合ってるよー!」
そして、野田──ではなくチビエリナは『アイジン』のプリンセス、キスミン。
混濁しそうなエメラルドグリーンなアラビアンドレス。おへそが覗くくらいにちょっとだけお腹の部分が空いている。
来海は……チビアオイか。彼女は『不思議の国のアリスコンプレックス』のヒロイン、アリスコに変身。
錯乱しそうなオーシャンブルー色のエプロンドレスだ。黒のリボンカチューシャも可愛らしい。
みんな寒色系だな。てか、ネズミー作品は何故揃いも揃って題材が暗くて重いんだ。
「ンー」
「ん? どうしたチビマイリ」
「ワタシニハ~?」
「え……あぁ。とても似合ってるぞ、かわいいな」
「エヘヘ-」
……小さい彼女なら、まだこうして面と向かって言っても照れはしないか。
というよりも、彼女と過ごす日々が重なるにつれて、素直に言えなくなってしまっている。
「アリガト! エットエット…」
「どうした?」
「ナマエ…」
あぁ、そうか。まだチビマイリには名乗ってなかったな。
記憶が3歳当時までに戻っているから、俺の名前を知るわけがないか。
「東だ」
「アヌ…マナ? アウ、アウマ」
幼児にはこの名前が言いづらいのか、かなり苦戦している。
音だけで言ったら彼女とほぼ名字一緒なんだけどな。
「東って難しいんだから下の名前で呼んでもらいなよ!」
歩き回るチビアオイと手を繋ぎ、腕だけがにょいーんと伸びているオーデュイが、そうアドバイスする。
「そうだな……亮。亮って名前だ」
「リョ-ウ? リョウクン‼︎ ワカッター! エヘヘ-、リョウクンスキー」
……っ!?
一瞬だが、また気を失っていたのか!?
何者かが園内に潜んでいて、俺たちを狙っている……わけないか。
分かってるよ、原因くらい。
庭白もチビエリナに対して同じこと起きているし、オーデュイはチビアオイにモチモチされて遊ばれている。
俺だけでもしっかりしないといけないが……もう、どうにもならないくらい既に苦戦を強いられていた。




