112本目 最近のホラゲはリアル過ぎて笑う
『──ごきげんよう、紳士淑女の皆様。本日もわたくし達の動画を観ていただき誠に感謝いたしますわ。さて、本日は日本を飛び出して、ニューヨークダンジョンへと赴きました。今回は世界の御令嬢とのコラボ配信ですわ』
レンガの壁にはグラフィティ。あちこちに昔の車が放置され、誰もいないのに煙は上がるダウンタウンの景色。ここがニューヨークダンジョンだ。
その内の一つ、とある五階建ての建物の屋上でティーパーティーの会場が開かれていた。
世界各地から訪れたお嬢様とその従者が一堂に会していた。
来海から時計回りに、一組ずつ自己紹介をしていく。
『ハーイ。ワタシはパルファン.D.リッチ。こっちはメイドのマリー・オールド。よろしくね〜』
アメリカの令嬢である彼女は、派手な赤いドレスに価値の高いアクセサリー、高貴な香水で身を包むなど、とにかく高級ブランドで固まっていた。
対して、メイドのマリーは素朴な、とても小柄な女性だった。内気なのか、挨拶はペコリとだけ済ませている。
何故かこの場にはそぐわない、つばの広い麦わら帽子を、とても大切そうに被っていた。
『英国から参りました、マーチ・ブリッジスと申します。こちらがワタクシの護衛、チェリー・フロントでございます』
『押忍! チェリー・フロントっす! 押忍!』
『おほほ。チェリーは日本が大好きで、柔道や剣道などの武道だけでなく、茶道も嗜まれておりますの』
『押忍! よろしく押忍!!』
『まぁ……! わたくしと話が合いそうですわね』
イギリスの令嬢であるマーチ・ブリッジスは、金色の髪で塔が頭上に建立されていた。令和とはかけ離れた、いや海外に元号など通じないが、とにかく時代錯誤ないわゆる中世の姫君であった。
『押忍っ! 葵お嬢様にそう言っていただき光栄です! うちは将来、絶対ニンジャになります! 押忍っ!!』
対して、紺色の柔道着を着用したチェリー。
とにかく元気いっぱい張り切っていた。
『では、最後は私ですね。ハルカマ・ツィです。私はインドネシアから来ました。こちらは、執事のロニー』
『ハハ、ヨロシクデスヨー』
アジアンテイストな衣装を着た、褐色肌の二人。
ハルカマはとても大人びているが、齢16の、日本で言う高校二年生。吾妻と同い年になる。
なので日本を参考にしたインドネシアの法律の下、朗らかなロニーが必ずダンジョンには同行している。
ダンジョン内であれば、言語の壁などない。
世界のお嬢様による優雅なティーパーティーが行われた。
会話内容は庶民では理解できないものばかりで今回は割愛させていただくが、この動画で一番リプレイ再生数が多かったのは、ニューヨークダンジョン攻略のある瞬間であった。
それがこちらだ。
『──こちらでは、どのような冒険が待ってるのでしょう。ふふ、楽しみですわね。宝具はきっとアメリカらしいものなのでしょうね』
『NYダンジョンは簡単じゃないわよ。ほら、モンスター来た』
一行の前に、地面から出現するのは大量の──ゾンビ。
腐った死体を這わせて、生者の気配を感じ取れば本能のままにやって来る。
『一度でも傷付けられれば、ワタクシたちはジ・エンド……。慎重にいかないといけませんわね』
『ぜひともアオイ様のご活躍を……ん?』
『いやあぁぁぁ!? 出たぁゾンビィ!? うぇぇぇん!! 怖いよぉ、爺やぁぁ!?』
初対面のコラボ相手、さらにはカメラを前にして、ホラーが大の苦手な来海は大泣きしてしまった。
「ゾンビは幽霊と違って、物理的な攻撃が通りますから大丈夫です」と、攻略前は意気込んでいたが、いざ目の前にすると呆気なく撃沈した。
ただ、流した涙を宝具:侘び寂びで攻撃すると、聖水の役割を果たしていたのか、ゾンビたちは簡単に浄化できた。
結果としては、来海の強さと意外な弱点が公になったので、彼女もまた人気を自らの力で手にしていったのだ。
……来海自身、ホラーが苦手だとバレるのは些か不服のようだが。




