111本目 海外に来ても恋バナしかしない女子たち♡(マイマイ不在)
「──ねぇ、オーデュイ。ちょっとこっち来にゃさいよ」
話はセブダンジョンの頃に遡る。
ニンゲンフォルムを手にしたオーデュイはみんなとひとしきり遊んだ後、吾妻たちが水分補給している間に、野田に小屋裏へと呼ばれた。
隣には来海もいる。
「どしたのー、えりにゃん。それに葵嬢まで」
「オーデュイ、すっごくかわいいじゃん。ちょーいい感じ」
「えへへー、照れるな〜」
「ええ、とても美しいですわ。ところで、一つお聞きしたいことがあるのですが……」
「ん? なになにー?」
オーデュイの気を良くさせたところで、二人は早速本題に入る。
「オーデュイってさ、好きな人とかいんの?」
「是非ともお聞きしたいですわ」
「好きな……人? うーん、そーゆのあんまり考えたことないな〜」
「本当にいにゃいのね!?」
何故か圧の強い野田と来海──
オーデュイは何か察した様子で二人に問う。
「もしかして二人って亮くんのこと──」
「あ、それは全然にゃい」
「あ、それは全然ないですわ」
「ええっ!?」
オーデュイはニンゲンの姿をしているが、頭から水色の〝!?〟を生やした。
「ま、別にいにゃいなら大丈夫よ」
「オーデュイさんですら、名前呼びですというのに、あの御二方はまだ苗字呼び……かなり遅れていますわね」
「あっ! もしかして亮くんとマイマイをくっつけようとしてる?」
「「しーっ、しーっ!」」
ようやく真実を察知したオーデュイが大きな声を上げると、二人は静かにするよう鎮めた。
周りには気付かれていない。もっとも庭白と来海の付き人たちは今彼女たちが何しているかは把握済みだが。
「だってオーデュイも見てて思わにゃい? あの二人の何とも言えにゃい関係性……! こっちは見ててむず痒いのよ!」
「あー、ワタシも最初、二人は付き合ってるもんだと思ってたよー。でも、付き合ったらマズいんじゃないの? だってマイマイは人気ダンジョンストリーマーだよ」
「もちろん、承知の上です。しかし、何と言いますか……お付き合いされたとしても、あまり変わらないと思います」
「むしろ、今のままの関係性の方が、付き合ってにゃいから逆に距離が近いのよ。マイマイは基本距離感バグってるし、マネージャーの方はマイマイにメロメロでしょ? それならいっそ、二人は恋人関係ににゃった方が、動画でもプライベートでも気を付けるでしょ?」
「ほほーん?」とオーデュイは何となく納得した。
確かに二人は想いあっているのは間違いない。特に、あまり感情を表に出さない東亮が吾妻舞梨の水着を目の前にして、明らかに照れていたなぁ。と、オーデュイは気付いていた。
「あと、にゃによりマイマイが幸せにゃ方がいいでしょ」
「「間違いない」」
「にゃら決まりね。オーデュイも手伝って」
「もちろーん! マイマイラブラブ大作戦ってことだね!」
「名前ダサいけど、それでいいか」
その後、三人はお節介なことにグループチャットまで作って、どうしようかと勝手に作戦を立てていた。
期限は来たるクリスマス。
そう、そこで取った作戦が〝オーデュイが告白することで二人に危機感を抱かせる〟だった。
偽告白をした夜、オーデュイは早速チャットで作戦実行したことを報告する。
『──亮くんには、返事は全然後でいいよーって言っておいた!』
『万が一に、了承された場合どうなさるのですか?』
『え。考えてなかったや。まー、返事待たせる男は嫌だ。やっぱいいやって言うよ!』
『にゃんか、今さらにゃがら嫌われ役させてごめん』
『全然いいよ〜。ワクワクするしさ〜! それにそんなことはないと思う! 告白した時の二人、どんな反応したか分かる??』
?のスタンプを野田と来海は送る。
『なんとお互いに見つめ合ってた!』
『脈ありじゃにゃいの』
今度はオーデュイが確カニ! と蟹のスタンプを送った。
『そういえば、マイマイさんのお母様の前で告白されたのですね……?』
『うん。マイマイママは心読めるからすぐに作戦バレちゃった。あまり首突っ込み過ぎないようにって怒られちゃった。けど、』
『けど?』
『見逃してくれるって。マイマイママも考えてることは同じだったのかなー』
『気のせいでもにゃく確定ね』
これで別に好きではないのにくっつけるという最悪な結末にはならなさそうだ。
続報はまたオーデュイに任せることになった。
すると、来海がいる部屋の扉がノックされる。
『では、わたくしはこれから撮影ですので抜けますわね』
『夜なのにこれから撮影?』
『ええ。こちらはまだお昼ですので──』
「お嬢様。他の方々の準備も整いました」
「ありがとう爺や」
メイクを済ませて準備万端な来海を呼びに来た猪俣は、ホホホッと微笑む。
「随分と楽しそうでございますね」
「ええ。女の子はいくつになっても、恋バナが大好きですから」
「ほほ、そうですか……えぇ!? お、お嬢様……恋を……!?」
猪俣は血反吐を吐いた。
「わたくしのじゃありませんよ!?」
「……そ、そうですか……爺や、安心しましたよ。たくさんの縁談の中からどなたかお選びになったのかと……」
「有り得ませんわよ。わたくし自身、そのような気持ちを抱くことはありませんから。他の方のお話をお聞きするだけでとても楽しいですわ」
「……ふむ、そうでございますか。それもまた爺やは寂しい気持ちになってしまいます。お父様もきっと……」
「その話はまたにいたしましょう。皆様を待たせております。行きますわよ」
「……かしこまりました」




