107本目 出発する前にはミラーチェック!マイマイはいつでも盛れてるZE⭐︎
「フーガ。君に頼みたいことがある」
「何? 直接手を下すのは勘弁だよ。あまり好きじゃない。観光なら全然いいけど」
「希望通りさ──世界各地で戦争を起こして欲しい。だが、日本だけは巻き込まれないように上手く調整してほしい。吾妻舞梨にも影響が及ぶからね」
「いいよ。人間が争うのは大好きだ。また負の遺産が増える。新しい観光地ができるね」
彼の死来能力:〝凍結〟──全てを氷の世界に閉じ込め、物質の動きを止める。
一度力を発揮すれば、あちこちの農作物は寒波で枯れ果て、交易は麻痺し、人々は簡単に死に至り、国が滅ぶのにも時間はそうかからない。
また、宝具:どこでもドアノブは世界中のダンジョンに繋がるため、今では容易にあちこちへと移動することが可能だ。
「ソウシ。君は──」
「マイマイを見守るのね。任せて!?」
天原の圧に頷くしかないが、その通りのことを頼もうと思っていたことだった。
「でもソウシねぇ〜ひとりぼっちじゃん? だから、天使さん作っちゃった♫」
天原が指を鳴らすと、地面から白い翼を生やした男女が現れる。
「お呼びでしょうか。ソウシ様」
「ボクちんを召喚するなんて⭐︎ さすがはソウシ様、分かってらっしゃるZE⭐︎」
「ふふっ、ミッチーたら。本日もキモいですね」
「あっ……⭐︎ ポイズンベリー♡」
とても丁寧な言葉で毒がある言葉を吐く小柄な女性と、とにかくナルシズムが高い男性。
「イラミィとミッチーね。ソウシの守護天使なの。みんな仲良くしてあげてね──っしゃぁ!! 早速マイマイハッピー大作戦考えんぞおらぁ!!」
また性格の変わった天原は従者を引き連れて、地上へと昇っていった。
「じゃあ、私も行こーっと」
摩擦で燃えそうなほどに藤岡を撫でていた曰西も、ようやく飽きたようで、ここから出て行こうとする。
「どこに行く」
「ん? そんなまどろっこしいことしなくてもさ。《《あれ》》殺しちゃえば、楽じゃない? じゃあ、行ってきまーす」
曰西が、さらには何も言わず加賀遺も続いて解散していき、この場には藤岡と磐田だけが取り残された。
「行きましたね」
「勝手にな。SS級ともなれば、我の強さも段違いだ。元より協力できると思っていない。ここまで会話が成り立った自体、私の想定以上だ」
「なるほど」
「フジヤマダンジョンの模倣者に伝えて欲しい。彼らが動き始めた以上、次の春は訪れないと」
「ええ。きっと泣いてしまわれるでしょうね」
「そうだな。私含めて、どうにも手の付けられない生徒ばかりなもので。気苦労が絶えないことでしょう」
◇ ◇ ◇
「お疲れ様です。ボス」
秘書の繁長玲と共に、多忙な毎日を送る探求省大臣、武崎健太郎。
本日はいくつかの大企業を相手にし、世界中にダンジョンが出現したことによる次の時代について議論を交わしてきた。
現在は政務が一段落したので、地下駐車場に停めた車へと向かうエレベーター内にいる。
「ふぅ、中々上手くいかないな」
「ええ。今日は古い価値観を持った人ばかりでしたから。ダンジョンを開放している自体、懐疑的な人がいるくらいです(やだ、ネクタイ緩めてセクシーですボス)」
「そうだな。だが、続けるさ……世界に新しい秩序ができ、俺が政界を引退するまではな」
「えっ!? (寂しい!? 転職考えないと!?)」
「世界は新しい時代を迎える。俺みたいに昔の人間がいつまでもいるわけにはいかないさ」
「そう、ですか(ボスは次どこへ……私も付いて行きます)」
「引退でもしたら、どこか旅行でも行くかな」
「はぁ……オススメなら挙げておきますよ。国内か国外ならどちらがいいでしょう? (私も行きたい……)」
「そうだな、君の勧めるところに一緒に行こう」
「……えっ!? (えっ!?)」
地下に辿り着き、エレベーターが開く。
繁長の心は動揺したまま、地下駐車場に入る。
「あ、スマホ忘れた」
「と、取りに行きましょうか……? (おっちょこちょい可愛い!)」
「いや、大丈夫だ。車の鍵を渡しておく。先に乗って待っていてくれ」
武崎はさっき来たエレベーターに乗り直して、また上へと昇る。
足取りが浮ついたまま車に乗り、繁長はシートベルトを締めた。
「ふぅ……えぇぇ!? ま、まさかボスと、とと、りょ、旅行ぉ!? これは、もしかすると……もしかするなの!? ……やだぁっ!」
ずっと尊敬する彼に仕えてきた繁長。
誰にでも分け隔てなく接する彼が、初めて個人的に誘ってくれたのだ。
武崎が戻って来た時に、次は何て喋ろうか……──髪型は変じゃないか、車のバックミラーで前髪を整えた。
「──こんにちは。幸せなところお邪魔します♪ さようなら」
同じミラーに映る、後部座席に座る女性。
すぐ振り返るも──
──車が揺れて、ガラスに赤い血が飛び散った。




