102本目 絶叫!!!これは絶叫集に切り抜き確定です。
「えぇー!? オーデュイ剣になってるー! カッコいい!」
「でしょー! すごいだろー!」
「すごーい! ねぇねぇ東くん。わたしがオーデュイソード使いたい!」
と言いながら、半ば無理やりオーデュイを取られた。
銀世界の中、水着姿でSS級の模倣者を相手にするとは……いや、俺もSS級のはずだが、吾妻を止められる自信はない。
もう彼女に敵なし。負けるところの想像ができなくなった。
「もしかしてマイマイ? 困ったな、マイマイは殺すなと方々から言われてるんだよね。どうしたものか……」
「行くよオーデュイ!」
「うん!!」
滑り出しは足を取られたものの、吾妻は駆け出して、剣を横から一振りする。
加賀遺は氷壁を何重にも作って防御しようとするが──無駄だ。
「〈オーデュイカット〉!!」
吾妻が振るった剣筋は、立ちはだかるもの全てを破壊し、横一直線に加賀遺を叩き斬った。
彼は上下真っ二つに割れて、下半身は立ったまま、上半身は地面に落ちた。
「あ。やりすぎたぁ!? だいじょぶ!?」
「大丈夫だ。模倣者はそれくらいで死なない」
「なるほど! イミテーターだったのかー! オーデュイは痛くなかったー?」
「うん! 全然平気っ! ワタシも強くなったんだよ!」
オーデュイの硬度はSS級の模倣者すらを凌駕したのか。
もしくは吾妻の力によるものか……どちらにせよ、一瞬にして彼女たちの完全勝利で幕を閉じた。
「……さすがマイマイといったところか。既に自分ではもう敵わないか」
やはり無事だった加賀遺は断面から氷を生やして上下を繋げ、やがては起き上がってきた。
「むむ、まだやる気だな〜?」と吾妻はオーデュイを強く握る。
「いいえ。観光はほぼ終わりましたから。もっともここはまだ〝未完成〟だ。歴史が刻まれてからまた来よう。宝具:どこでもドアノブ」
「ヒミツ道具ぅ〜!?」
加賀遺が取り出したのは見た目はただのドアノブの形をした宝具。
彼が氷壁を扉の形に出してそこに取り付けると、瞬時にそれは本物の扉となった。セブダンジョンにもその要領で入って来たのか。
「では、またどこかで」
「待てー!」と吾妻が追いかけようとしたが、それを制止する。
どこに行くか分からない以上、深追いは危険だ。
それよりも、この様子だとダンジョン中に大寒波が訪れているかもしれない。
仲間は全員水着姿だ。凍傷や低体温症になる前に回収したいし……敵であっても彼らは助けてあげよう。
凍ったジェントルを氷壁から慎重に剥がしている時に、のされたマキノを抱えて、野田と松實が上がってきて合流した。
さらに彼女たちと吾妻に、残りの逸れた二人を探してきて貰うと、案外すぐ近くで震え上がっては隅に潜んでいた庭白と生野を発見する。
「うぅー! 外も寒いねー!」
何とかして外には出たものの、天空遺跡の天候は吹雪いたまま。
彼が残した能力は持続するようだ……なんて凄まじい強さだ。
くそ、俺の上着を吾妻に貸してあげたいが、実のところ俺も水着だ。貸すものがない。
どうしようかと悩んでいたところ、上空から飛来したファルコが氷漬けのジェントルと意識は戻ったが動けないマキノを掴んで飛び立った。
「HA!! それじゃあ、ごきげんよぉ〜。今日のところはこれで勘弁してやるわぁん。だから、いつかやり返してやる! ムキー!!」
負け犬の遠吠えらしくキャンキャンと鳴いて、寒空の中を羽ばたいていった。
「あー! こっちも逃しちゃったー!」
「もう、あいつらはいい。それより彼女たちだ。このままじゃ全員凍死するぞ」
吾妻はまだ元気そうだが、みんな南極ペンギンのように群がって寒さを凌いでいたが、それも限界だ。
そういえば帰りのことを何も考えていなかった。
「次もワタシに任せて!」
「オーデュイ! 何か作戦あるの?」
「作戦というか、今のワタシならできそうな気がするんだ……固くなるの次は柔らかく……」
吾妻に抱きかかえられていた体温でいつの間にか元のスライムに戻ったオーデュイ。
彼女が力を入れると、風船のようにぷくーっと膨れ上がり、大きなスライムとなった。
「みんな! ワタシの中に入って!」
とにかく彼女を信じよう。
みんなをオーデュイに入れたのち、俺と吾妻も中に入る。
「ふわぁぁ、オーデュイあったかいよぉ〜」
彼女の温もりが俺たちをそっと包み込む。
不思議と息ができる。本当にオーデュイがギュッと抱き寄せてくれているようだ。
これなら寒さで身体を冷やしたみんなを温めることができる。また動けるようになれば、次の策が──
「えい」
「「えい?」」
オーデュイは俺たちを含んだまま、天空遺跡から飛び落ちた。
「「「ぎゃぁぁぁああ!?」」」
「「たのしー!!」」
まさか作戦が身投げとは……歓喜と悲鳴が入り混じる、命綱なし、3000m級のフリーフォールとなった。




