第4章 ナシア・T・ミューティニー ~ナシアの記憶~
ー2003年ー 某国 とある街
あたしの神さまから素敵な贈り物を頂く。
『○✕△よ、お主に名を授けようと思う』
「神さま!本当ですか!神さま自らあたしに名前を!」
『ああ、お主は今後、吾輩の代弁者として活動するといい
いずれ王権も授けよう
ただ、わかるな、暴走だけはするなよ』
「はい!神さま!もちろんです!」
『名を授ける前にお主に祝福を与えるからそこに跪き
少しだけ目を閉じていなさい』
「はい、神さま」
あたしは身を低くし目を閉じていると、神さまの声で聞いたことのない言語が唱えられ始めた。
イン テワトル ノ・トラコトリ(お主は我の傀儡)
イン テワトル ティネチ・トラマカズ、ティネチ・マカズ イン モネミリス
(お主は我のために仕え、我のために人生を捧げる)
アウ イン イクアク ティイツトク イン ヨリストリ イクシキ、ティネチ・マカ ノチ
(そして幸福の極みに至る時、すべてを我に捧げよ)
マ クエマ ミキス イン モトラルナミキリス、ノ・アシュカン カ
(お主が死してなお、魂でさえも我のもの)
サン アチ トラチア、アスタ ティネチ・マカ ノチ
(だが、すべてを我に捧げるその時まで)
イン モネミリス カ クアリ、カ トラトキトク イン トラソウカヨトル アウ イン クアルティリストリ
(お主の人生は成功と祝福に包まれたものとなろう)
世界が凪いだその静寂の中で、神さまが優しく語りかけてきた。
『○✕△よ⋯⋯お主の名は○✕△改め
ナシア・T・ミューティニーとする
以降、その名を真名とし、励むが良いぞ』
ガオォォン⋯⋯
どこからともなく低い鐘の音が鳴り響く。
「この名、謹んで拝受いたします
名を授かった今、ようやく本当のあたしが生まれた気がします!」
名を授かってすぐ、体中に鳥肌が立つ。
体が瞬間的に黒いモヤに包まれたがすぐに収まり、眼球に違和感が生じた。
目のフチから花びらが咲き眼球が逆転する。
「あああああ!神さま!目が!
目が後ろから押されて外に落ちそうです!」
目の裏側を何かに触れられる感覚がある。
『ナシア⋯⋯その感覚は最初だけだ
安心しろ、それも愛の形だ』
「は⋯⋯はい⋯⋯これくらい⋯⋯で⋯⋯
泣き言など⋯⋯耐えて⋯⋯みせます⋯⋯」
この時、あたしの本来の眼球は死に、新しい異界の目が構築されていた。
たった1日で名も目玉も生まれ変わった。
『どうだ?ナシア、少しは落ち着いたか?』
「は⋯⋯はい⋯⋯
初めての経験なので違和感は残っていますが
もう⋯⋯大丈夫そうです」
『よし、ナシア、その目なら
どこに生物が生息しているか一目瞭然だし
人間に対してのみ軽度の洗脳ができる、便利だろう?』
「はい⋯⋯神さま、これは凄いです
人も動物も昆虫もどこにいるのか見えます
それに軽度の洗脳⋯⋯まさか!
この力を使えば全ての人間の目を強制的に閉じる事が!」
『そこまでの強制力はないぞ』
「そ、そうなんですね、残念です」
『ああ、実のところ洗脳の力は
使用者の技量や相性による
だからナシアに適正があれば
その洗脳の力も猛威を振るう事だろうな』
「あたし次第⋯⋯という事ですね?あたし、頑張ります」
その後、あたしはファンクラブと称し、とある団体を作った。
団体の名は「シェルフドッグ」(棚の上の犬)。
あたしとファンと犬、人と動物の憩いの場をコンセプトに作ったコミュニティーだったが
多くの方から支持され老若男女問わず愛される団体となっていく。
シェルフドッグの会費は月額九ドル(約千円)に設定した。
団員にはファミリーカードという会員証が発行され、
その会員証を提示すればシェルフドッグが運営している全ての施設にいつでも出入りできるようになっている。
またファミリーカードには団員ランクがあり、上から順にマミー、ダディー、シッシー、ブロ、ベイビーの5ランクが存在する。
あたしだけは特別なグランマカードだけど。
それと神さまに必要かは分からないけど、グランマカードと対を成すグランパカードを作っておき、試しにお供えをすると机の上に置いたグランパカードが黒い霧を残し突然消えた。
どうやら神さまは喜んでくれたみたいだ。
神さまが喜んでくれるだけで嬉しい。
このランク制度は非常に重要で信頼と貢献が無ければ上位ランクには辿り着けない。
ランクが上がれば上がるほど守秘事項もより多くなるが団員のメリットも多くなる。
神さまが事前に全ての団員の人間性を把握くださり、その中で信頼できて貢献している団員のランクを上げていく。
ダティーとマミーランクに到達した団員は神さまとの会話の機会が用意され謁見の権利を与えられる。
そこで神さまの信徒としてあたしのファミリーとして神さまを顕現する助力の一端を担うのだ。
また団員は顕現に必要な作業を担う事で団体側から報酬も支払われる為、団体の作業だけを専業にしても問題なく生活が可能な仕組みになっている。
神さまの事前の心理調査もあってダディー、マミーランクの団員は神さまの顕現への助力を誰一人として拒むものはいなかった。
むしろ団体の本来の目的を知り歓喜の表情を浮かべる者ばかりだ。
◇◇◇
1年、また1年と経過していく中で団体は少しずつ規模を大きくし団員数も多くなる中、少しずつ計画を遂行していく。
ダークマターの素材となる影を集め、神さまの御力を射出する装置の開発を優先かつ早急に進めなければならない。
一日も早く、我が主を顕現し、最高の世界へ導いて頂くのだ。
それが我々、シェルフドッグの天命であり存在意義。
嗚呼⋯⋯神さま、待っていてください。
あたし、頑張って神さまを復活させますから。
復活の折には生涯のパートナーにしてくださいね。
でも、裏切ったら絶望のあまり何をしちゃうか分かりませんからね。
読んで頂きありがとうございました。




