第2章 神さまの云う通り ~ナシアの記憶~
ー2003年ー 某国 とある街
「あたしはかわいいかわいいフランス人形!
この銀髪はあたしのチャームポイント!
みんなから愛され私からも愛される!
今日も○✕△ちゃん!明日も○✕△ちゃん!
毎日色んな人から愛されるあたし!」
あたしは毎日が幸せ。
色んな人から愛されているもの。
誰からも必要とされている。
けれどたまに虚しくなっちゃうの。
だってあたしはかわいい以外に何も持っていないから。
だからこのかわいいを振りまいて賢く生きていかないと。
だからあたしのかわいいは毎日が努力と研鑽。
一日だって頑張る力を欠かさない。
月のブローチを襟に付けて今日も街に出る。
「やあ○✕△ちゃん!今日も綺麗だね!」
ふふふ、ありがとう、嬉しい
「○✕△ちゃん、今度遊びにいかない?」
いいよ、でも二人きりは駄目、みんなで遊びにいこ
「○✕△ちゃん!ぼ⋯⋯僕の恋人に!」
今はそういう気持ちになれなくて⋯⋯でも気持ちが凄く嬉しいよ、ありがとう
ああ!あたしは必要とされている。
ああ!みんなからもっともっと愛されたい。
あたしの欲求が止まらない。
誰か特定の人では無く、みんなから、いいえ、世界中の人から永遠に愛されたい。
永遠に崇められたい。
もっともっとみんなから注目される事をしないと。
愛されるだけでは駄目、もっとみんなから尊敬されて、みんなの目標になるような注目の的を目指さないと。
ファンクラブでも作ったらみんな入会してくれるかな。
○✕△ファンクラブ、うん、凄くいい。
あたしはきっと世界中で必要とされる。
永遠のアイドル⋯⋯いいえ、永遠の慈愛の象徴になってみせる。
『⋯⋯その覚悟、本心であるようだな』
あたしの脳内に突如鮮烈な衝撃が走る。
え、誰?
周りを見回してもあたしに話しかけているような人は見当たらない。
『じゃははは、突然すまないな、吾輩は神のようなものだ』
神?
神があたしに直接⋯⋯怪しいでしょ。
そもそも神なんて本当に存在する訳?
自称 神、胡散臭すぎるわ。
「あら、こんにちは、神さま
でもね、あたしは目に見えない存在を
”はいそうですか” と信じるような
純粋な心の持ち主じゃないんです」
『じゃははは、そりゃそうだよな
まだ出会ったばかりだし
この状態で信用してくれというほうが無理な話だよな』
「ええ、そうね、神さま
それに世の中には指向性音響っていう技術があるの、知ってる?
ほら、音を圧縮して周りに響かせず
特定の目標にだけ音を伝えたり拾う技術よ
もしかしたらその機能が備わった
パラメトリックスピーカーを使って
どこかの人間があたしだけに話しかけて
神さまのフリをしている⋯⋯
かもしれないじゃない?ねぇ?」
自称神さまは少し驚いた様子で応える。
『じゃははっ⋯⋯へぇーー、思ったよりも博識なんだな
侮っていたよ⋯⋯まいったまいった』
「あらあら、お褒めの言葉として受け取らせて頂きますわ」
あたしはスカートの裾をつまみ、形式ばったカーテシーを捧げた。
『ふむ、なれば吾輩が神である証拠をお主に見せつければ信用に値するのか?』
「はい、神さま、あたくし如き暗愚のような人間が
証明など要求するのは誠におこがましい事ではございますが、
もしお許し頂けるのであれば
是非その御力の一端をお示しいただけませぬでしょうか?」
あたしがお辞儀を続けていると、自称神さまは興奮を抑えきれない様子で言った。
『いいよ、吾輩の力、見ているんだぞ、じゃははっ!』
するとあたしの周りの景色が一瞬歪んだ。
と、同時にあたしの近くを歩いていた人々が呻き声をあげながら次々と倒れていく。
まるで殺虫剤を噴射された後の羽虫のようにバタバタと倒れていく。
その様に見惚れるあたし。
怖いという感情よりも凄いが勝った。
倒れる人々を見渡しながら愉悦と恍惚が入り混じったかのような笑みが溢れる。
「神さま⋯⋯ステキ⋯⋯」
あたしは無意識の内に呟いていた。
『じゃははは!気に入ってもらえたようだな
今、お主を軸にして半径1キロ以内の生物全てに
終焉を与えたが、どうだい?』
頬を真っ赤に染めたあたしはとろけるような声で神さまに感想を伝える。
「ええ!ええ!ええ!とてもステキでした!
これぞ奇跡!これぞ御業!
あなた様にしかできない偉業ですわ!神さま!」
『じゃははは!ストレートでいい反応だな
吾輩の証明もできただろうし、どうだい?
吾輩と手を組まないかい?』
本物の神さま自らが手を差し伸べているというのにそれを拒む理由がどこにあるのかしら?
「目的問わず、神さまの御意志に従いますわ」
あたしは神さまの誘いに二つ返事で応えた。
でもひとつだけ気になった点があったので、すかさず確認をする。
「神さま、今あたしに見せてくださった御力ですが、気になる事がございます」
『なんだい、言ってごらん』
「はい、周りで有象無象が倒れましたが
亡くなり方が人によって異なっているようです
あそこの若い女性は腹から出血していますし
そこの建物の角に倒れているヒゲの男性は
首を締められたような跡があります
見てください、木の下にいる老婆⋯⋯
口から大量の水を吐き出し続けています
あの人は燃えていますし⋯⋯
これは一体どのような力を使われたのですか?」
神さまは軽快に応える。
『じゃはははは、生物には寿命があるだろ
その寿命のメーターをさ、最大値までいじってあげるのよ
そうするとそれぞれが本来亡くなる時に
味わうはずの死に様を前倒しして体験したって訳だ』
あたしは心底感銘をうけた。
これほど自分以外の存在に惚れた事は無い。
あたしの神さまは有象無象の運命さえ操る力があるのだ。
つまりあたしの命もいつだって奪えるという事。
それでも今は生かされているという事実。
あたしは神さまにとって特別ではあるが、いつでも切り捨てる事のできる消耗品なのだ。
その緊張感のある状況がたまらない。
常に銃を突きつけられているような状態に快楽を煽るドーパミンが脳内で爆発した。
ああ、おかしくなりそうだ。
『さて○✕△よ、お主に依頼を出そう』
「はい、なんなりとおっしゃってください」
『さきほど見せた力は制限がかかって弱い
吾輩がこの世に現れる事ができないのが原因でもあるのだが⋯⋯
吾輩は、遥か昔に悪魔に閉じ込められてな⋯⋯
お主、吾輩を復活させてはくれないか?』
「と、おっしゃいますと
どちらかに封印されていらっしゃる神さまを探しだし
その封印を解けば宜しいのでしょうか?」
『んー、まあ似てるが厳密には違うぞ
特定の方法で復活させてくれ
そうすればさっきの力だけでなく
他にも強力で便利な力が使い放題だぞ』
「はい!かしこまりました!我が主!
ところで顕現させる方法とは⋯⋯
生贄など必要でしょうか?」
『じゃははは、そんな古臭い儀式は不要だ、吾輩を降臨させる為には
ーー世界中の生きとし生けるものが 10秒の時 等しく瞼を閉ざす
これだけで吾輩は降臨できる』
あたしは暫し考える。
「あの⋯⋯神さま」
『どうした?』
「あたし一人では完遂が困難ですわ」
『ほほぅ?』
神さまに無能だと誤解を受けないよう丁寧に説明をする。
「神さま、たとえ全ての生物が
言葉を理解できる世界観であったとしても、
それはおそらく難しいです
言葉を理解する事と、各々の意思は別物だからです
”全員、目を閉じろ”と言ったとしても
必ず閉じない者は現れます
そうでなくともこの世界には
動物や昆虫など言葉を理解できない生物が多くいます
ご確認となりますが、
人間以外の生物も目を閉じる必要があるのでしょうか?」
神さまは楽しそうに応える。
『そうだよそうだよそうだよぉぉ
どうしようね、困ったよ、でも楽しいね
あーでも安心してくれ
植物と微生物は含めなくて大丈夫だ!
目を閉じるという概念が存在しないからな』
あたしは暫しの間無言で思考する。
ーー神さまの事を考えていると静かだった周辺がいつの間にか大騒ぎになっていた。
「おい!人が倒れているぞ!」
「きゃー!誰か救急車呼んで!」
「おい!父さん!父さん!起きてくれ!」
「誰か!誰か!」
どこからか駆けつけた市民たちが大騒ぎしている。
すると騒いでいる市民の中にいた若い男性があたしに駆け寄る。
「○✕△ちゃん!無事か?
ここで一体何があったんだ?
○✕△ちゃんは何か見ていたのか?
ともかくここから離れるんだ!早く!」
あたしの手を握る男性。
するとあたしの手を握っていた男性が突然胸を押さえて悶え苦しむ。
数秒の内に息絶え、周りにいた市民たちも呻き声と共に倒れ、辺りが静かになった。
「神さま、ありがとうございます」
『いやいや、吾輩とお主の会話に
割って入られて邪魔だったからね』
「はい、ところで神さま、一つ思いついた事がございます」
『ほうほう、なんだい、教えてくれよ」
「その御力はあたしの周辺の人間を亡き者にしております
つまり、どの生物を亡き者とするか
選べるという事でしょうか?」
『そうだね、正解だ』
「ありがとうございます
ではこれは交渉なのですがその神さまの御力を
あたしにお借し頂く事はできないでしょうか?」
『んー、お主にこの力を与えるの?
でもこの力を与えた瞬間に
人間の体じゃ耐えきれずにきっと爆発しちゃうよ?
それでもいい?』
「あ、いえ、それは想定外でした⋯⋯
んんんんんん~~⋯⋯⋯⋯⋯⋯
でしたら、その力を何かに宿して頂く事はできませんか?」
『あーできると思うよ
でも余程耐久力がある物じゃないと
この力を付与した途端に大爆発を起こすだろうね』
「耐久力がある⋯⋯例えばダイヤモンド⋯⋯
いやダイヤモンドは割れやすいし⋯⋯
無難にタングステンやグラフェンなんかは⋯⋯」
あたしの独り言を聞きながら神さまはアドバイスをくださった。
『この星の物質じゃ駄目だと思うぞ』
「と、おっしゃいますと⋯⋯」
『ダークマターとか必要だろうな』
「え⋯⋯え?それってファンタジーの?」
『ファンタジー?
良く分からないがこの星には無いから作らないとだな』
「ええぇぇえ!
この星には無くても
どこかしらに存在はしているんですか?」
『あるよ、ダークマター』
「え、うそ、単なる人間の作った空想かと⋯⋯」
『じゃはははは、何言ってるんだ、
昔、人間にダークマターの存在を教えたのは吾輩だぞ』
「ええぇぇえ!我が主は聡明なお方なのですね」
『凄いだろ?もっと褒めてよいぞ』
神さまとの談笑の後、
神さまからダークマターの作り方を教わる。
『ダークマターの作り方はいくつかあってな、
その中でも特に簡単な奴を教えるぞ
まずこの鏡を受け取れ、そして日食、月食、新月など
光が欠ける時を狙ってこの鏡を影に向けて
影の残滓を集めるんだ、分かったか?』
「はい、命をかけて集めてまいります」
『分量で言うと影暦100年を100人分位だな、
それを10個集めてきてくれ』
「え、えいれき?それはどういう⋯⋯」
『影歴は人間や物体が存在している間に
影をどれだけ持っていたかの時間だ
だから古い建物や古代樹、
老人から影歴の濃い影が集められると思うぞ」
「なるほど、畏まりました
ではダークマターを作った暁には
その御力をお貸し頂けますか?」
『もちろんだ
さっき影を集めてくれと伝えたが、結局のところ
ダークマターを10個持ってきてくれっていう事だからな』
「という事は10個のダークマターに御力を付与くださるのですか?」
『そうだよ、それにお主の考えている事も分かってきたぞぉぉぉ
恐ろしい事考えているだろ!お主ぃぃ!』
高笑いする神さまに今後の計画を伝える。
「今後の計画ですが、まずあたしは一種の団体を設立いたします」
『ほうほう』
神さまは相槌を打ちつつ、黙って耳を傾けていた。
「団員を集め大きな組織にいたします
組織を育てながら影歴の濃い影を集め
ダークマターを完成させた後
我が主に御力を付与頂きます
付与が完了いたしましたらダークマターを装着して
御力を射出できる装置を開発いたします
開発が完了しましたら、人間以外の生物⋯⋯
主に動物と昆虫をターゲットにして絶滅いたします」
神さまが疑問を口にする
『人間はターゲットにしないのか?』
「はい、人間がいなくなってしまったら
神さまとあたしの活躍を見届け
敬う者がいなくなるので人間以外の生物を目標にします」
『なるほどねぇ、それでそれで?』
「先に確認させて頂きたいのですが、
ダークマター10個以上への付与は難しいものでしょうか?」
『うん、難しいんだよ、
今の吾輩の力は制限かかっているからね
せいぜい10個分くらいしか付与できないだろうね
でも一つ一つはほぼ無限に使えると思うから安心しなよ』
「いえ、付与いただけるだけでも感謝しております
ではダークマターから発する御力ですが
効果範囲は先程のように放たれた場所を軸に
半径1キロほどに効力があるのでしょうか?」
『そうだよ、効果範囲は広げられるけど
これ以上の効果範囲にすると
使用できる回数が限られてくるからね
半径1キロならほぼ永久にこの力が使えるよ
でもね、吾輩が降臨できたら効果範囲なんて無くなるぞ」
「素晴らしいです、我が主!」
『あ、それとだ半径1キロは横方向ね、
縦方向は効果範囲に制限ないから』
「なんと⋯⋯そうなのですね
⋯⋯ダークマターから御力を放った後、
リキャスト時間は存在するのでしょうか?」
『んんー?リキャスト時間?
初めて聞いた言葉だな⋯⋯
人間界では当たり前の言葉なのか?』
「失礼致しました、
御力を放った後、再び放つまでの時間の事です
何度も連続で放てるのでしょうか?」
『おーそれをリキャスト時間っていうのか
覚えておくよ
そのリキャスト時間は
大体20秒位はみておいたほうがいい
連続では放てないからな』
「ありがとうございます、少しお待ちください」
あたしは地面に式を書き、瞬時に計算する。
「我が主、おまたせ致しました
先程の話の続きになるのですが、
まず神さまの御力を使用して
世界中に生息する人間以外の生物を絶滅させます
その後、私の団体の所属団員を世界中の政府に潜入させて
世界共通の「目を閉じる祝日」を制定致します
この祝日が制定された暁には我が主が顕現可能になるかと」
神さまはケタケタと笑う。
『壮大な計画だね、でもそれ何年かかるの?』
「はい、そこが問題でして⋯⋯」
『結論出てるんでしょ?教えて教えて』
「はい、結果から申し上げますとこの計画が完遂されるには
おそらく265年かかります
バッファをとって300年と見ています
おおまかな計算なので誤りもあるかと思いますが⋯⋯」
大笑いをする神さま。
『じゃーはっはっはっはっ!
バッファという言葉は分からないが300年か!
吾輩は待てるがお主は人間だろう、どうするんだ?
次の世代に引き継ぐのか?』
「あ、失礼いたしました
バッファというのは“余裕をもって”
のような意味合いでございます」
『なるほどね~300年⋯⋯お主はどう考えている?』
「はい、やはり引き継いでいくしかございませんので、
あたしができるだけ子孫を残し、血を途絶えさせません
また計画は書物、データ、口伝、アートなど
いくつかの方法で伝えていき
計画が頓挫しないように準備いたします」
『引き継いでいくねー、お主と次の世代くらいは信用できるが、
こういうのは代を経る毎に子孫の信念が薄れるものなんだよ』
あたしは自分の意思が強いから子孫にも当然強い意思で想いを繋げられると思っていたが、そんなものはあたしの慢心だった。
神さまの言う通りだ。
次の世代に意思を繋げられる確証は無い。
あたしが言葉を詰まらせていると神さまから提案を頂いた。
『んまぁぁあ、ちょっとずるいけどさ、少し手を貸すよ』
「え、ですが既に十分御力を借りる予定ですし⋯⋯」
『いや、吾輩も久々にこの空間から出て人間界に降りたいし
本当はな、吾輩が降臨した時に
お主に褒美として授ける予定だったけど
先に授けるから、活用してくれ』
するとあたしの周辺で風が巻き上がる。
目を細めながら風の向かった上空を見ると黒いツルのようなものが浮いていた。
「あれは⋯⋯なに⋯⋯?」
目を細めたまま空中のツルのようなものを見つめていると、ツルが勢い良く延びてツルの先端を見失う。
と、同時にあたしの脳天に鈍い衝撃が走る。
⋯⋯⋯⋯思考がぼやけて⋯⋯頭が⋯⋯。
額や頬に生暖かい液体が伝うのが分かる。体の感覚がおかしい。
口からは先程のツルみたいなものが飛び出て、鼻からも生温かい液体が出ているから息ができない。
苦しい⋯⋯。
視界が黒に侵食されていく。
何も見えない。
何も見え⋯⋯
な⋯⋯
い⋯⋯⋯⋯
シネチマカ(我に捧げよ)⋯⋯
イン ヨロトル(魂を)⋯⋯
イン モピルワーン(お前の子孫たちの)⋯⋯
イーワーン(そして)⋯⋯
イン モケツァルナカヨ(お前の肉体を)⋯⋯
◇◇◇
「げへぁっ!がはぁ!げほげほっ!」
あたしは激しく咳き込む。
苦しいけど生きている。
さっきのは夢?だったの?
『よお、起きたか、おはよう』
神さまの声が響いて脳が揺れる。
『まだきついかもしれんがそのまま聞いてくれ
さっきお主に吾輩の力の一端を分け与えた』
頭がぼやけたままだ。
「そうなんれすか⋯⋯ありあとぉごらいまふ⋯⋯」
『あー、その力はな、まあ不死みたいなもんだ』
あたしは朦朧としながらも歓喜した。
「え、そうなんれすか⋯⋯そえなら、あたし、時間気にせず
計画をじっこう⋯⋯れきほうれす」
『そうかもな、まあとりあえず疲れたろ、もう少し寝ておけ』
神さまの声を聞いた後、あたしはまた深い眠りについた。
寝ている間、辺りから何度か聞こえてくる声。
一帯は悲鳴、嗚咽、哀哭、驚嘆、
狼狽、呻吟に満ちているのだろう。
きっとあたしが寝ている間に集まる有象無象を
神さまが処理してくださっている、そう考えると安心して眠る事ができた。
◇◇◇
◇◇◇
随分と静かになった気がする。
あたしは疲弊した体を起こして張り付いた目をゆっくりと剥がし開ける。
するとあたしの周りにはダムの壁のように大量の死体が積み上がっていた。
まるであたしが爆心地であったかのように、あたしを中心に円を描くように死体の山ができあがっている。
「神さま、あたし起きました」
『おう!起きたか!おはよう!』
「はい、おはようございます
あたしが寝ている間に
色々と処理くださいましてありがとうございました」
『いいのいいの、しかし人間っていつの時代もうるせーのな
きゃー!いやー!大丈夫かー!ワラワラと集まる集まる』
「ええ、人間は数が多いので大抵そんなものです
ですが、神さま、お言葉ですが余り処理されますと
あたしのファンや将来の貴重な信者が減ってしまうので
余り処理されないで頂けますと嬉しく存じます」
『じゃははははー、そうだったな
悪い事しちまった、なるべく気をつけるさ』
「神さま、ありがとうございます」
あたしはこの日、神さまから授かった力で不死の存在へと昇華した。
あたしは神さまに出会う為に生まれたのかもしれない。
これで寿命や世代を気にせず計画を進められる。
神さまを顕現する為、これから粉骨砕身の覚悟で挑まなければ。
あたしが行き着く未来は神さまの右腕として人間界の指導者となり、全世界から愛される事。
神さま、必ずあなた様を顕現してみせます。
でも神さまの顕現まで300年という計算がそもそも間違えていた。
727年もかかるとはこの時のあたしは知るよしも無かった。
読んで頂きありがとうございました。




