第15章 暗闇 ~伽耶の記憶~
ー3003年ー 深淵の屋敷 心臓部
私は寝ていたのだろうか?
それとも気絶していたのだろうか?
目覚めると目を開けているにも関わらず暗闇に支配されたこの空間では何一つ目視する事ができない。
ついさきほど、私は崖から落ちて命の危険を感じて目から光線を放とうとした。
しかし、直後に扉が真下に開き、私とエヴァンさんはその扉に入った。
あの扉はアガルタさんの屋敷の扉。
間違いないはずだ。
私は口を開くが喉が乾いていて声をうまく出せない。
一度咳払いをしてから声を出そうとすると、少しだけ離れた位置から男性の声が聞こえてくる。
「誰だ!誰かいるのか!」
この声はエヴァンさんだ。
「エヴァンさん!伽耶です!」
私は掠れた声で応える。
「伽耶ちゃんか!良かった!
さっきまで俺たちは崖を落ちていたよな?
その後にこの暗闇⋯⋯
もしかして俺たち、死んだのか?」
「いえ!多分死んではいません!
さっき崖を落ちて
岩礁に叩きつけられそうになった瞬間に
扉が開いたのを見たので
おそらくここはアガルタさんの屋敷です!」
「アガルタさんの屋敷⋯⋯
以前に俺も行った事のある屋敷か!
にしては、なんだこの暗闇は⋯⋯」
「ええ、私もこんな暗い場所を見るのは
初めてかも⋯⋯⋯⋯まさか虚無空間?
それに実は私が最後に屋敷から出た時
屋敷が崩れ落ちるように消え去ったから
心配してたけど、この暗闇は何か関係が?」
すると自分の横に何か硬い物体がある事に気づく。
「エヴァンさん、ここ、何かある」
「え、どんなものが?」
「なんか硬くて少しひんやりとしていて⋯⋯
んん?岩?なにこれ?」
暗闇の中、冷たい物体を上まで触りながら左側に手を伸ばす。
するとそこには触り慣れた形の物がある事に気づく。
「んんん、これ、なんだろ?」
「大丈夫か、無理はするなよ」
「はい⋯⋯これ⋯⋯きゃっ!」
「どうした!」
「これ⋯⋯手だ⋯⋯
冷たいけど、ここに手がある」
「伽耶ちゃん!何があるか分からないから
余り触らないほうがいいかもしれない!」
「あ、はい!」
私は触れていた冷たい手から離れようとすると、突然冷たい手に握り返された。
「きゃぁぁぁぁああ!
冷たい手に握られたぁぁぁ!」
「くそっ!そっちに行く!」
でも、この冷たい手には覚えがある。
すると、すぐに青白い光が辺りを照らし、私たちのいる場所はその姿を露わにした。
私とエヴァンさんは目の前にある物をじっと観察する。
「これ⋯⋯は⋯⋯」
動きやすそうな布製の服を着た1人の少女が、青白いクリスタルの中に閉じ込められた状態で横になっている。
少女は目を閉じ、口は糸で縫い付けられ、完全に意識が無いようにも見える。
しかし女性を覆うクリスタルからは両手だけが飛び出しており、その手は黒く、ミイラのように干からびている。
そして、肉のような壁から伸びた無数の管が干からびた手へと繋がれている。
まるで点滴のように。
「この手!俺がガキの時に屋敷で見た
おばけの手じゃねーか!」
「ですよね!
この手はあきらかにアガルタさんの手です!
アガルタさん!
とりあえず生きていたみたいで良かった!
他のみんなも無事なのかな⋯⋯
というかこの女性が
アガルタさん本人という事でいいよね?」
私は結晶化したアガルタさんに力強く抱きつく。
「アガルタさぁぁぁあん!
またさっきも崖で落ちてるとこ助けてくれたぁ!
いつもありがとございますぅぅ!」
私は暫く結晶化したアガルタさんに頬ずりをして、至福の時を過ごした。
すると青白い光が少し点滅したかと思うと脳内に声が響く。
《伽耶、アガルタの過去を、
そしてあなたたちの未来に繋がる希望の鍵を
その目で確認し、受け取りなさい》
「この声は!フレイヤ様!」
「うおっ!なんだ、この声!」
まただ、また私の眼球に熱が籠もり始める。
「あああああ!また⋯⋯ビーム出そう!」
「伽耶ちゃん!目が光って⋯⋯」
「大丈夫です!少し⋯⋯行ってきます!」
「どこに!」
「私もはっきりは分からないけど⋯⋯また後で!」
例のごとく私の頭が激しく揺れ始め、目からは破壊的な光線が撃ち放たれる。
射出された光線はクリスタルに閉じ込められたアガルタさんに直撃し、私はアガルタさんの過去の記憶を目撃する事となる。
目から光線を放っている間、アガルタさんは私の手を強く握ってくれていた。
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