第3話 魔法のカラス
部屋に渦巻く魔法を感じたのか、春日井先生が息を呑む。
「どうしたんだい? 急に……」
「ちょっと、この仕事手伝ってくれそうな子でも呼び出そうかな、と」
片手をかざし、水をすくうように手のひらを上に向けた。魔力の流れを手のひらに集中させ、魔法を発動した。
今までの召喚では、こんな現象はなかった。
手のひらで竜巻のような風がぐるぐる回り、部屋中を巻き込んでいく。手のひらから生まれた風は、机の書類を舞い上げ、カーテンを大きく揺らした。
……やばい。これは失敗か……?
神様を参考にした魔法獣なんて、罰当たりだったかも。
その風が散乱した――と同時に手の上に乗っていたその塊は、黒い羽毛に包まれた、ふくらんだ体。
手のひらにちょこんと乗った、まるで毛玉のようなカラスだった。
くちばしは小さくて丸く、目もくりっとしている。
それはもそもそと顔を上げると、こちらをじっと見て大あくびを一度する。
八意思兼神みたいに――なんか頭よさそうな能力を持っているといいな、という感じで召喚した魔法獣。頭のいい動物を連想し、カラスにしてみた。
手の中に収まる小さなカラスは、部屋に置いてある名簿の表紙を見てから二度目のあくびをした。
「いやぁ……すごくかわいいですね」
ふわふわの鳥は、丸い目をきょろきょろと動かして愛らしい表情をしている。体全体が少しふっくらとしていて、とくにお腹の部分が膨らんで見える。
「わたしが想像していたのと、だいぶ違うなぁ……」
向かい側に座る先生は、苦笑いしながらカラスを見ていた。
まあ……あんなに風が巻き起こっていたから、何かとんでもないものが出てくる予想をしていたに違いない。
期待を裏切って申し訳ないが。
それにしても、ころころの球みたいでかわいいなあ。ソラとはまた違った癒し系を爆誕させてしまった。
俺は天才なのかもしれない。
頭を指先で撫でてやると、目を細くした。
「でも……ユウナくん、魔法獣は手伝えないと思うよ」
その声には、戸惑いと、ほんの少しの呆れが混ざっていた。どこか困った表情をしている先生に「まあ、聞いてみましょう」と返す。
「ちょっと人探し手伝ってほしいんだけど……きみのできることを教えてもらえるかな」
「一度見たものの、過去、思考、現在の状況、構造、仕組みなどがわかる」
男の子とも、女の子とも取れる声で話すカラスは、淡々と答える。
うっそ。すげえ。
……いやこれ、まじで最強か?
火と光属性の使い手から容疑者を探すどころか、全員の顔を見てもらえば、二年前の火災の件なんて一発で解決だ。すごすぎて、呆気にとられてしまった。
先生も、言葉を失ってぽかんとしている。
ただし注意点もあると言う。
たとえばAさんの過去を見ている最中に、知らないBさんが出てきたとしても――その人のことまではわからないらしい。
Bさんを知りたかったら、改めて顔を見せないとだめというわけだ。




