第2話 卒業生の名簿
――二度寝をしたら見事に寝坊し、お嬢ちゃんと一緒に朝食を作ることになった。
「……なんかごめん」
あれだけ家事は俺がやるって息巻いていたのに。
「いえ。一緒に料理するのって楽しいですよね」
まっすぐにそう言われて、なんだか恥ずかしくなって、つい顔を背けた。
……ほんと、気配り上手だよ。この子は。
椅子の上にいたソラが香箱座りのまま、にまにまと人間のように笑みを浮かべている。
まったく……なんなんだ、一体。
気まずいったらありゃしない。
もうすぐ春休みも終わる。
そうなると学校に頻繁に出入りするのは難しくなってしまう。
……春休みが終われば、部外者の俺が学校にいるのは不自然だ。
制限時間が近い。
だから友人たちとの宴会の翌日、急いで春日井先生に電話をかけた。
金色の炎について、火属性か光属性の魔導士の犯行の可能性が高いと踏んだから。
卒業生の名簿を貸してもらえるか尋ねると、たまたま今日は教師が休みの日だと言うので、再度学校にお邪魔することに。
学校関連のものを探せるのはこれが最後の機会になるかもしれない。
ソラとお嬢ちゃんは留守番だ。
「何日か前、那智と陽菜が金色の炎の調査結果を教えてくれたんです」
人や物には影響がなく、攻撃性はないということ。だが、研究所の一部だけは燃やすことができたこと。
対面する席に座る先生は、終始難しい顔をして聞いている。
「とりあえず、火属性魔導士と光属性魔導士の情報を見せていただけたらなと」
「持ち出しはだめなんだ。決まりでね。まあ、ユウナくんなら綺麗に返してくれると思うけど」
そう言いながら、少しだけ眉尻を下げて、申し訳なさそうに笑った。
校長の許可があれば閲覧はいいらしいので、一期生から昨年度卒業生まですべて出してもらった。
名簿の表紙には『八意魔術高等学校〇期生能力名簿』と書かれていた。
……骨が折れそうだ。
自分のところを試しに見てみると、すまし顔の写真の隣に、能力値が記載されている。
……俊敏性と攻撃力がちょっと低い。
なにこれ、くやしい。
卒業してからちゃんと鍛えたし、今ならもうちょっとマシなはず。
ほかにも、属性やどのような魔法が使えるかなど詳細が書かれていた。
数枚ぺらぺらとめくって見てみるが、属性で分かれているわけではなく、出席番号順になっているから、火属性と光属性を狙って探すのが大変だ。
光と闇は全体的に見ると人数が少ないから余計にキリがない。
だるい。ずるしよう。
「先生、この学校の名前って、八意思兼神からとっているんでしたよね?」
「ああ、なんでも、知恵や学業の神らしいね」
先生は名簿に目を通しながら答えてくれた。
これ以上の適任者はいないだろう。
――人力で名簿を漁るなんて、性に合わない。俺には俺のやり方がある。
目を閉じ、脳内でできる限り鮮明に骨格や筋肉、姿形を思い浮かべた。
――俺が召喚した妖精の魔法獣は、愛玩動物みたいな姿なのに、頼めば庭仕事からおつかいまでやたらと器用にこなしてくれる。
今から召喚する新しい魔法獣も、名簿探しぐらい余裕で手伝ってくれるだろう。




