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白猫を連れた魔導士が、港町で拾ったのは秘密を抱える美少女でした  作者: 汐田 伊織
4章 調査開始

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第1話 調査の失敗


丑三つ時。


おそらく依頼の電話が鳴っていたが、こんな時間にかけてくる輩は無視しておいた。

そもそも、今日は研究所の様子を見に行く予定だった。電話線を抜き忘れたのが悔やまれる。


昨日の雨も止み、今は絶好の飛行日和。


そっと玄関の引き戸を閉め、いつも通り朱色の傘に腰掛ける。


目的地は、ワタツミ街にある霜月研究所跡地。ほかの仕事なんてしていられない。




***




「……あれは見張りか?」


「ずいぶん大きな犬だねえ」



離島の周囲に生えている太い木の陰に身を隠し、二年前に黒焦げになった研究所の周りをうろつく、大きな犬のような魔法獣を捉える。


大人の熊ほどの巨体。

漆黒の毛皮に包まれた筋肉は、まるで岩の塊のようだ。


なにより不気味なのは額にある――血走った四つの眼球。

さらに、首にはトゲの付いた首輪もはめられている。


それが何頭も研究所の周囲におり、首をきょろきょろさせたりして闇の中をうろついている。


あれほど奇妙な魔法獣を見たのは初めてだ。


魔法獣は、術者が望んだ姿で召喚されるけど、あのわんこの姿を思い浮かべた人間とは絶対仲よくなれる気がしない。

むしろ関わりたくない。


複数体召喚する場合、遠隔だとすぐに魔力が欠乏しそうになるため、術者は魔法獣の近くにいるはず。

しかし、近くに人の気配がしない。


どんなからくりがあるのだろう?



……あのわんこに、隙はなさそうだ。

人間の魔力の気配もない。けど、あれだけの数を維持できるやつが近くにいないわけがない。


人より魔力量は多い自信がある俺だって、遠隔で複数の魔法獣を長時間操ることができないのに。


気配を隠す魔法でも使っているのか?


気づいていないだけで、実はそばにいました――とかだったら嫌だな。


突撃していってどうにかなる相手じゃないし……そもそも俺一人で捌ききれない。



「今日は出直すか……」


「そうだねえ。それにしても厳重な警備」



せっかく夜中に起きたのに……と毒を吐きたくなったがやめておこう。

これだけの警備、どう見ても調べられたくないものがあるって言っているようなものだ。


何かを隠したがっているということがわかっただけでもよしとしよう。



冬じゃないのに懐に潜り込む白猫。頭だけ出してかわいらしい姿を存分に拝ませてくれた。


傘に腰掛け、魔法で飛んだ。


この姿……犬型魔法獣に見られていたら詰むな。傘に座って夜空飛んでいるのって、俺以外いないし。

……気づかれてないことを祈ろう。


星も見えない澄んだ闇の中、調査の不発に苛立ちながら、自宅に向かった。




***




玄関の引き戸を、音を立てないように開ける。自分の家なのに泥棒になった気分だ。


肉球のおかげで足音が立たないソラが、今はとてもうらやましい。


……消音の結界魔法とかあればいいのに。


いや、実際あるのか?

今度調べてみよう。


お嬢ちゃんを起こさないよう、細心の注意を払って寝室に戻る。


朝ごはんの用意をするには早すぎるし、二度寝でもしようかな。



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