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白猫を連れた魔導士が、港町で拾ったのは秘密を抱える美少女でした  作者: 汐田 伊織
3章 面倒事

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第35話 金炎の謎


「……酔っ払いの戯言だと思って聞いてくれると助かる」



那智が、お猪口をくるくる回しながらぼそりとつぶやいた。


……この件に関しては箝口令かんこうれいを敷かれていたか。


黙って頷く。



「あれは攻撃性の一切ない、どっちかって言うと幻覚に近いものらしい」



なるほど。光の屈折を利用して、存在しないものを見せる光属性魔法のことか。


あの炎が幻覚魔法ならば、水をかけても消えなかったのには納得するが、俺の魔法で瓶の中に閉じ込めることはできないはずだ。


だから、“幻覚に近いもの”という言い方なのだろう。



「一応、ユウナの手紙に火災の原因って書いてあったから、うちの研究員がその炎で実験したみたい。その炎が本当に燃やせるかどうか」



組合には、研究や実験をする研究員がいる。原因不明の事件なんかが起きたときは、彼らの出番だ。



「それで?」


「紙も、蝋燭も、人でも試してみたけど……何も燃えなかった」



研究所が燃えていたのは、俺以外に消火活動に参加した消防士が見ていた。


いや、まさか……ずいぶん前に研究所は燃やされていて、金の炎で燃えている演出をしたっていうのか?

火災の時期を混乱させるために。



研究所の一角に住んでいた霜月優香は、いつから叔父の家にいたのだろう。


『友人宅に泊まっていた』と嘘をついた彼女に尋ねたところで、誤魔化される気がする。


ふと、叔父一家に嫌がらせされていたことを説明する、あの子の切なそうな表情を思い出した。

胸の辺りがなんとなく痛い……と同時に、嘘をつかれた事実に苦しくなって、思わず着物の合わせを握った。


そんな様子を見てか、ソラがするりと膝に侵入してきた。


お嬢ちゃんに聞けないってなると、畠山秋彦に質問するしかないな。

……家を半壊しかけた畠山家に今さら聞きに行きたくない。



「――……で、おかしいんだけどさ」



那智の声で思考が途切れた。



「試しに、研究所の一部の壁を持ち帰って、燃えるのかどうかってやったんだ」


「……燃えたのか」



二人は無言で頷いた。その表情は、言葉以上に事の異様さを物語っていた。


やっぱり、ただの幻じゃないってことか。


そんな限定的燃焼効果のある魔法なんてあるものかと言いたいが、実際にあるのだから仕方ない。


でも、もし建物が別の日に燃えていたとしたら?

金の炎は、その痕跡を演出するためだけのものだったら?


いや、それはありえない。

あの規模の建物を燃やしたのなら、一度目ですぐに誰かが気づくはずだ。

それに、二度も放火されたら、骨組みすら残らないだろう。


――理屈では説明がつかない。


そんなものに、お嬢ちゃんが関わっているのかと思うと、ぞわっと背筋が冷えた。



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