第33話 桃色の洋装寝巻き
「よーっす。おじゃまー」
「おじゃましまーす」
十九時過ぎ、那智と陽菜がやってきた。先ほどと変わらぬ服装で、組合の腕章は外されている。
「いらっしゃい。玲さん、依頼のことなんか言ってた?」
「ああ。『へー、そうなんだー』って、半笑いで」
足腰が悪い方の買い物補助なら時々あるけど、健康な若いお嬢ちゃんの付き添いなんて、組合じゃ前代未聞だろうな。
電話に出た花房さんに、依頼内容ちゃんと言っておけばよかった。
玄関のすぐ左にある客間に二人を通す。十人くらいなら余裕で座れる広さだ。
この部屋に連れてきた人らには毎回「立派ですね」と言われるが、ただ大きな家に住みたかっただけという安直な理由しかない。
床の間には生け花が置かれ、それ以外の余計な装飾はなく、落ち着いた雰囲気の客間になっている。
急遽魔法で作った長い座卓には、料理が所狭しと並べられ、部屋を鮮やかに彩っている。
薄く切って並べた鯛の皿の近く、愛猫のソラさんが自身のごはん皿を持ち寄り、姿勢よく待機していた。
この鯛は、魚屋の銀三じいさまが捌いて持ってきてくれたものだ。
「できるなら全部食べてほしい」
「いや、さすがに多いなあ……」
「ユウナー、これなんの鍋? 昆布しか入ってないけど」
「鯛しゃぶ」
初めてだったのか、二人とも思いのほかうれしそうな顔を見せた。
那智が手土産に持ってきてくれた、俺のお気に入りのまたたび焼酎を見て、今度はこちらが声を上げて喜んだ。
名前はあれだけど、もちろん人間用。
たまに飲みたくなるんだよな、これ。
三人で盛り上がっている中、鍋用の野菜を持ってお嬢ちゃんが部屋に入ってきた。
ふくらはぎまで隠れる長さの桃色の洋装寝巻きは、今日買ってきた部屋着らしい。
なめらかな生地に独特の光沢……まさか、絹か?
いや、でも……本物なら結構な値段がするはずだけど……外出用の服とか、雑貨とか山のように買っていたけど、金足りたのかな。
「おー、優香ちゃん似合ってるね! ほら、陽菜。こっちでよかっただろ」
「うん。わたし選んだやつだったら、洋装喪服みたくなってたかも」
縁起でもないこと言わないでほしい。
物選びに関しては、女性に贈り物をする機会が多い那智の方が詳しかったりする。
今日、どちらかと言えば陽菜は荷物持ち要員だったろう。
「ありがとうございます。こんな高価なもの贈っていただいて」
え?
バッと那智の方を向くと、にやりと、してやったりの顔で人差し指を左右に振っている。
……なんで勝ち誇った顔なんだよ。
腹立つな。
……まさかあの服、那智が贈ったって?
冗談だろ。
あんなにうれしそうに着て……俺が選んでいたら、あんな顔、してくれただろうか。
ソラも、そんな哀れむような目で見るんじゃない。
……贈り物なんてしたことないですよ。どうせ。




