第27話 極秘の依頼
高校の守衛所で入構手続きを済ませる。
卒業してから三年も経つのか。
あの頃のことを思い出すと、少し胸が熱くなる。
友人は少なかったけど、同じ組の人たちが分け隔てなく話しかけてくれたおかげで、俺だけ無属性だったけど浮いた存在にならなかったし、いろいろ学べて楽しかった。
小中のときとは比べ物にならないくらい。
今は春休み中だから、生徒たちはいない。
誰もいない静かな学校は、非日常感を味わえて心が踊る。
一階にある生徒玄関の前を通り過ぎ、廊下を右に。突き当たりの部屋が校長室となっており、黒茶の重々しい扉が出迎えてくれる。
――コンコン。
扉を数回叩く。
中から返事があったので入ると、短く整えられた白髪の男性が、高価な椅子に座って資料に目を通していた。
こんな休みの日までコートを身にまとい、白いシャツに青いネクタイを締めている。すらっとした体格で、いつも冷静な目をしている校長、春日井誠司。
その姿勢はどこか威厳があり、品位を感じさせる。
先生は、読んでいた資料に判を押し、机の端に追いやっていた。
「お久しぶりです」
「やあ、わざわざ遠いところからありがとうね」
促されたので長椅子に座ると、体全体を包み込まれるような沈み心地に驚いて、思わず小さく息をついた。
それでも、胸の奥には緊張感が広がっている。
俺に何の用なんだろう?
身をすくめている間に、先生は慣れた様子で対角線上に座った。
「実は――きみに依頼したいことがあってね」
組合ではなく、わざわざ俺に?
部屋の空気が一瞬で張り詰めた。
このような形をとるということは、おそらく組合に頼めないような極秘任務だろう。
「伺います」
「二年前、霜月先生の研究所の火事を消したのはユウナくんだったね」
「はい」
「火事の原因である炎を、ミカヅチ本部に届けたそうだけど……結果は教えてもらったかい?」
あの日、瓶に火災の原因である金色の炎を封じ込めて、魔導士協同組合の中枢、ミカヅチ本部に押しつけたことを思い出す。
その後、とくに連絡がなかった。
あの炎のことを思い出すたびに、胸騒ぎがする。
進展がない、というのは、逆に言えば、問題が解決していないということに他ならないから。
俺が首を横に振ると、先生は険しい顔つきで背もたれに寄りかかった。
「霜月先生は学者だけど、学校関係者でもあるから、教員に恨みを持つ人物という線で、個人的に犯人を調べてみたんだ。でもねぇ……玲さんに聞いても、この件に関して『答えられない』と言うんだよ」




