第26話 それぞれの目的
でも、俺は今日、彼女に付き添えない。だから、どうしても代わりの人間が必要だ。
変態を置いていくのは気が引けるけど……この子には、諦めてもらうしかない。
二人に声をかけたのはほかでもない。俺が春日井先生と面会している間、お嬢ちゃんの私物の買い出しに付き合ってほしいから。
組合勤めの人間は基本忙しく、私用の電話ではなかなか繋がらない。
なので仕方なく、依頼料を払って確実に呼び出せる組合に直電するしかなかった。
自分の分身でも出せたら、金なんか使わなかったのに。
金の力で友人を動かしたみたいで、ちょっと嫌な気分だった。
「……で。本題に入るけど、今日頼みたいことがあって」
若干荒々しい語気になったが、全部那智が悪い。
「この子、私物がまったくない状態でさ。俺が用事でいない間、二人には買い物に付き合ってほしくてね。とりあえず、いくらか渡しておくから、服とか小物とか選んであげて」
「利他さん……一緒じゃないんですか?」
お嬢ちゃんは困ったように、八の字眉になる。
その、子犬のような目で見ないでほしい。心が痛い。
どう見てもやばそうな人間と一緒にいたくない気持ちは分かる。
しかし、こればかりは仕方ない。
「ごめんね。ちょうど用が重なってて」
「組合員としては俺たちが先輩なんだから、任せとけって。なんなら夜まで帰ってこなくていいぞ」
「頼む、陽菜。この子からあまり離れないであげて」
彼女が頷いたのを見て、少し安心した。
「お嬢ちゃん、何かあったら本部に告げ口していいからな」と、言って三人を見送る。
友人たちの背中を見送ってからもしばらく動けなかった。
変なことにならなければいいけど……そんな不安を、ソラがしっぽで軽く払ってくれる。
「考えすぎだよ」
「……そうかもしれないけどさ」
まあ、何かあったら、陽菜が氷漬けにしてくれるだろ。
雲が薄く空にかかっているけど、風が少しあるから、午後からは晴れるかもしれない。
ソラが頭にしがみついた状態で、校長先生が待つ学校へ向かった。
***
ミカヅチ駅から徒歩十五分ほど。
目的地である八意魔術高等学校に到着した。
美しく整備された敷地が印象的で、中央には広場があり、噴水が爽やかな雰囲気を演出している。本当に金のかかった学校だ。
どこを見てもピカピカで、まるで誰かが常に磨いてるんじゃないかと思うくらい。
時計塔なんて、妙に立派で……なんというか、ちょっとした権威の象徴って感じ。
その学校には、劣化しないという七不思議があるらしい。
「本当か?」と言いたくなる。
まあたしかに、補修工事を見たことがないのに、いつも綺麗だ。




