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白猫を連れた魔導士が、港町で拾ったのは秘密を抱える美少女でした  作者: 汐田 伊織
3章 面倒事

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第25話 友人の暴走


彼女の短い黒髪の隙間から、耳飾りがきらりと光る。

今日はゆったりめの服に細身の黒いズボンを合わせていて、細すぎる脚がこれでもかと強調されていた。


水属性、とくに氷の魔法なら本部でも指折りだ。戦闘になれば、一帯を瞬く間に氷漬けにしてしまうほど。

そのことから、雪原ではなく“氷原”という二つ名がついている。



「二つ名持ちの方に会えるなんて、光栄です。日向さんって、犯罪者集団を一人で倒したって聞いたことあります」


「まあね! でも、わたしなんて末端なんだから気遣わないでいいよ。それより、その格好かわいいね! ユウナがやったの?」



女性陣が盛り上がるのを横目に、俺は静かにしているもう一人に目をやった。


艶のある織物で仕立てた、濃紺の薄手の上着と、ベージュのズボンを身につけている。

彼は背が高く、整った顔立ちをしており、染毛剤で金に染められた短髪はとても目を引く。



「光峰さんって……お医者さんだったんですよね?」



お嬢ちゃんの視線が一瞬那智の方を向き、陽菜に質問していた。



「うん、そうだよ。最初は町医者だったのを、本部が引き抜いたって感じ」



光、土属性魔法の使い手で、回復も戦闘もできる万能魔導士。


……残念なのは、女性関係だろうか。


そんな那智がお嬢ちゃんを見て静かなのはめずらしい。

いつもなら「きみ、かわいいね。このあと時間空いてる?」とか言ってもよさそうなのに。


何かあったか……?

まあいいか。



「で、今日の依頼なんだけど――」



話を続けようとしたとき、目に異様な光を宿らせた金髪の男が、お嬢ちゃんの両手をがっしり握った。



「一目惚れしました。お付き合いしてください」



「えっ……?」


「ええっ!?」



は……?


突拍子もないことを言い出すものだから、衝撃的すぎて声が出なかった。

那智自身、言った瞬間に「あ、やべ」という顔をしている。


……なんだこの展開は。

寸劇か?

それとも悪夢か?


いやいや、悪夢にしてもひどすぎるだろ。



どれくらい思考停止していたのか、肩に乗るソラが頭をぺしぺし叩いてくれたおかげで、現実に呼び戻された。


手を握られたままの彼女は息を詰まらせ、目を見開いたまま動けずにいる。頬には汗がにじみ、視線は困惑したように揺れていた。


怖い、って思っているに違いない。

お嬢ちゃんはまだ、誰かに一方的に好意をぶつけられることに慣れてなんかいなさそうだし……無理もない。


那智が本気……なのは表情を見てわかるけど、彼女からしたら、初見の相手からそんな台詞をもらうなんて思いもよらなかったろうに。


というか、それ実際に言うやついたのかよ。

都市伝説かと思ってたわ。



お嬢ちゃんは、相手の行動に驚きと恐怖を感じながらも、なんとか笑顔で対応しようとする。



「えっと、その……」



視線を右往左往させながら困惑の色を浮かべる。



「ごめんなさい。お付き合いとか、よくわからなくて……」


「いや、大丈夫。俺も急だったね。ゆっくりお互いのことを知っていこう」



目がぎらぎらと光って、まるで獲物を狙う猛獣みたいだ。


あんなの、俺だったら泣いている。


やっぱり那智に声なんかかけるんじゃなかった。こんなの、酔っぱらいの悪ノリよりたちが悪い。



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