第23話 化粧の技術
お嬢ちゃんが着物に着替えている間、街の女性たちがよく履いている、普通の茶色いブーツを魔法で作って、新聞の上に置いておいた。
魔法で服も作れるけど、流行や好みには疎い。
下手に作るより店で買った方が安心だ。
今日はお嬢ちゃんと別行動を取るつもりだが、なんとなく格好を似せて、青墨色に、片側だけ灰色のよろけ縞が走っている着物を着用している。ちなみに帯は白色。
ソラの肉球を揉みしだきながら、彼女はどんな反応をくれるのかと、胸の高鳴りを誤魔化すように気を紛らわせていた。
ソラは案外気持ちいいのか、喉を鳴らして寛いでいる。
しばらくして、バタバタと慌ただしく台所にやってきたお嬢ちゃん。頬を赤くしてなにやら興奮気味だ。
「髪型、すごいです! すっごく大人っぽくてかわいいです!」
髪型や化粧が好みに合っていたらしい彼女のその笑顔からは、喜びと満足感がにじみ出ている。
数ある着物の中から、彼女に似合いそうな色で、一番上等そうなものを選んだ甲斐がある。
お嬢ちゃんは着飾った自分の姿に気分が上がってはしゃいでいる。かわいい。
選んだ着物はかっこいい雰囲気だから、それに合わせて少しきりっとした印象になるような髪型にしてみたが、お気に召したらしい。
目尻と涙袋に珊瑚色を乗せ、上品で大人っぽい雰囲気に仕上げてある。痩けた頬が気になるかもしれないと、そこは陰影をつけて隠しておいた。
しかし……こんなにいい反応をくれるなら、こちらもうれしくなる。
「魔導士として食べていくの難しかったら、呉服店継ぐつもりだったからね。そりゃあもう、すごく練習したよ」
ねえさまの顔で。
化粧は下手くそで、おかめみたいに真っ白にしたこともあった。
結ぶとき、ちぎれんばかりに引っ張ってしまったり、髪がほどけなくなったりと大変な思いをさせてしまったことを思い出す。
ねえさまの髪が短いのって、俺のせいか?
練習の成果もあって、今では従業員と同等くらいの技術が身についた。
ねえさまの髪は短いから遊べないけど、お嬢ちゃんは肩の高さより少し長いから、いろんな髪型にできる。
年々流行りも変わってくるし、彼女には今後、練習に付き合ってもらいたい。
「それにしても、ずいぶんとまあ、かわいらしい。まるで店先にいるお人形さんみたいねえ」
ソラの方を向いて、からかうように言うと、
「ええ。男が放っておかないでしょうねえ。街に出しても大丈夫かしら……」
ソラまでそんなことを言い出すから、彼女は拗ねてしまった。
「……からかうのはよしてください」
そんなお嬢ちゃんを見て、つい笑ってしまった。
けれど、こんなに喜んでくれるなら、もっと着物や髪型の種類を覚えてみよう。
そんなことを思いながら、彼女を連れて首都ミカヅチへ汽車で向かうことにした。




