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白猫を連れた魔導士が、港町で拾ったのは秘密を抱える美少女でした  作者: 汐田 伊織
3章 面倒事

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第20話 猫の浮気


朝食の下ごしらえでもするかと、台所への扉を開けた。


……お嬢ちゃんが米を洗っているではないか。



「……何してるの」


「おはようございます。朝早いんですね」



この時間に起きているきみも早いんだけどね?



「先に浸水させようかと思って、お米を洗ってます」



急にはっとしたと思ったら、申し訳なさそうに体を固くした。



「……あ、もしかして、お米使ったらだめでしたか……?」


「いや、全然。うちにある食材はどれ使ってもらっても大丈夫」



いや、そんなことより。



「今五時だから。俺がやっておくから二度寝してきなさい」



学生はよく寝て食って、勉強して遊べばいいのに。

こんな時間に台所に立っているなんて……それが畠山家の習慣のせいだと思うと、胸がちりちり焼かれたみたいに苦しくなった。


あのおっさん、まじで許さん。


小言と命令ばかりの家にいたせいで、彼女は朝からこうして動かずにいられないのか。



「基本的には、食事は俺が作るし掃除もやらなくていい。買い出しとかも全部」



自分の部屋の掃除とか、洗濯物はさすがに洗ってもらうしかないけど。


お嬢ちゃんは何か言いたげな、でも考えが定まっていないような複雑な表情で、口をぱくぱくと開けたり閉じたりしている。

悲しみが、目の奥にじっと沈んでいるみたいだった。



「それですと……」



彼女は視線を落とし、しばらく口ごもったあと、意を決したように顔を上げた。



「その、ただの穀潰しでは……」



その言葉を言うまでに、喉の奥で何度も言葉を転がしていたようだった。ようやく絞り出された声は、聞く者の胸に痛いほど静かに響いた。


“穀潰し”なんて、使われなきゃ言わないだろ。


おそらく、家にいたときはいろいろさせられていたせいで、動かないといけないという強迫観念みたいなものがあるのだろう。


このままじゃ、何を言っても聞き入れてくれない気がする。折れるしかないか。



「わかったわかった。じゃあこうしよう。俺が都合つかないときに、家事代行してくれたらそれでいいから」



とりあえずすぐ隣にあるお嬢ちゃんの部屋に追い返した。


引き戸を開けた先の部屋でソラが布団を陣取っており、それだけ片付けられていなかった。



「あっ! 見つかっちゃった!」



いないと思ったらそっちで寝ていたのか。



「まったく、どこ行ったのかと思ったら……」



ふっと肩の力が抜ける。まるで浮気現場でも見たみたいな気分だ。




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