第19話 魔法獣の謎
早朝。
広縁の障子と窓を開けると、湿った空気が肌に触れた。くもり空のせいか、まだ薄暗い。
庭を見る。
落ち葉一つ見当たらない、見事に手入れされた庭だ。園路に配置された飛石の周囲には白砕石が敷かれており、明るい印象になっている。
ひょうたん型の小さな池には、残念ながら何も住んでいない。
犬柘植という木の下に、丸い穴が空いた木箱が置いてある。寝室からはちょっと死角になっていて、知らなければまず気づかない。
「エル、ビット。いつもありがとうね」
そこに、気まぐれ屋の二人の妖精の魔法獣……エルとビット二人の寝床がある。
呼んでもあまり来ないのに、たまにこの中に勝手にいたりする。
前に会ったのはいつだったか。
魔法獣は、術者の魔力で作られた生物のことで、術者の能力を使うことができる……いわば、動物型の分身みたいなものだ。
自分で戦いたくないときや、手数がほしいときに召喚することが多い。
この二人は、俺が寝ている間に庭の手入れをしてくれているらしい。
魔法獣がそんなことをするなんて、本来ありえないはずだ。
というのも、魔法獣は、普通は術者が起きているときしか活動できないから。
じゃあなんで?と疑問に思ってはいるが、理由はわからないし、調べる手がかりもない。
俺が属性魔法の使い手じゃないからできるのかもな。
そう自分に言い聞かせて納得することにした。
魔導士の法には、魔法で生物を生み出すことを禁止していない。そのことについて、霜月先生はこんなことを言っていた。
「どれだけ正確に作っても、所詮は魔法でできているんだよ。だから、本物にはならない」
ワタツミ街を襲った巨大うなぎは、魔法獣ではなく、本物のうなぎだったな。生命をいたずらに弄ぶのは犯罪だ。
ついでに霜月先生曰く……
「それと……魔法獣は、術者の感情に影響されるから、まれに喋ったりする個体も出てくるんだよね」
ソラが話せるのもそういうことだろう。
……まあ、今では喋るのが当たり前すぎて、忘れそうになるけど。
あの子がいてくれて、どれだけ助かっているか。
お嬢ちゃんは初めてソラに会ったとき、なぜ喋れるのか驚いていたけど、今までそういう個体を見たことがなかったのかもしれないな。




