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白猫を連れた魔導士が、港町で拾ったのは秘密を抱える美少女でした  作者: 汐田 伊織
3章 面倒事

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第18話 椿の着物


若い子向けの彩り豊かな着物の束の前で、お嬢ちゃんは唇を尖らせて唸っていた。



真剣に悩んでいるその横で、俺は二人に霜月優香を預かることになった経緯を説明しておく。


「はー」とか「へー」とか、ねえさまの騒がしさはいつものことだ。それより、にこにこと笑顔を崩さない梅ちゃんに目を向ける。



「あのユウナがねえ……どんな事情であれ、人と関わろうとしていることが、わたしはうれしいよ」



やめて。そういうの恥ずかしいって。


小さい頃の俺は、教室の隅で誰とも目を合わせず、ただやり過ごすことばかり考えていた。

過去の自分を思い出して、なんだかむずがゆくなった。


梅ちゃんも春日井先生と同じようなこと言うんだから。


頬を指でぽりぽり搔いて返事を濁す。



友だちも少ないから、学生時代は心配かけたろうな。

いじめられていたことはソラにしか言っていないけど、なんとなく察していただろうし。



「ほら、優香ちゃん困ってるよ。助け舟出してあげな」


「はい、はい」



彼女は目の前の着物を前に、眉をひそめていた。口元に指を当てたり、何度も違う反物たんものに手を伸ばしては引っ込めたりしている。



「ずいぶん迷っているね。最初に心が動いたものが、一番いい選択だと思うよ」


「うーん……結構優柔不断なので、むずかしいですね……」



迷ってるなら、俺が選んでやるか。

……まあ、俺の趣味だけど。


お嬢ちゃんに合いそうな着物……黒地に、白のよろけ縞と赤い椿が描かれたものを選んだ。

派手すぎなくていいだろ。


帯代わりに結ぶ、革製の黒い締め紐、あと寝巻きを一枚買わせてもらうことにした。



二人に挨拶して、ついでにとうさまの経営する和菓子屋に顔出し。

お菓子と、なぜか赤飯をもらって帰宅。


理由はわからないけど、なにかしら報告するととうさまがたまに持たせてくれる。





帰宅すると、玄関には相変わらず、姿勢正しくお座りする愛おしい猫ちゃんがいた。



「おかえりー」



ただいまと返してソラを抱き上げる。

腕に引っかけていた、赤飯が入った風呂敷包を後ろ足で器用につついている。



「優香、いいのあった?」


「うん。明日着ていくの楽しみ」



満面の笑みを浮かべる彼女の手元にある着物を見て、はっとした。


――化粧道具が家にない!

まずいな……明日出かけるのに。



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