第17話 家族の紹介
部屋に入ると、色とりどりの生地が目に飛び込み、一気に華やいだ空間に包まれる。
手機が二台並び、座卓の上には帯の布地がたとう紙に包まれて、丁寧に重ねられている。
棚には艶やかな布が整然と並び、どれも目を引く豪華な装飾が施されていた。
その作業場の座卓の近くの座布団に、一人の女性が座っている。
やわらかな白髪が光を帯びるようで、年齢よりも若々しく見えた。その穏やかな笑顔は、顔を見るたびに安心感を与えてくれる。
新調したのか、今日は黄土色の着物を身につけている。帯は、和紙をちぎって貼り合わせたような模様で、ところどころに菊や松竹梅が描かれているきらびやかなものだ。
その人物――梅ちゃんは、俺の後ろに立つ少女を見て、とてもうれしそうに微笑んだ。
「おかえり、ユウナ。その子が、電話で言ってた子かね」
「うん。高校のときの先生の娘さん。一年間預かることになったんだ」
俺の後ろにいたお嬢ちゃんの顔が見えるよう、隣に移動する。
「お嬢ちゃん、こちらは呉服店の店主をしてる、橘梅ちゃん」
「霜月優香です。よろしくお願いします」
少し緊張した面持ちで、けれどはっきりとした声で名乗った。かわいい子だねぇ、なんて言って微笑む梅ちゃんに、彼女は照れたように俯いていた。
「それで、さっき電話で頼んでいたやつ出してほしいんだけど」と伝えると、ちょうどいいときにねえさまが着物を持ってやってきた。
「あ、いらっしゃーい。二人とも。あれ、ソラは?」
「留守番するって」と伝えると、少し寂しげな表情をして相槌を打った。
「この人は寒蝉柑奈。……まあ、一応俺の姉貴ね」
「一応ってなによ」と文句を言われつつ、二人で自己紹介し合っていた。
それにしても、会う度にねえさまの髪が短くなるな。
少年のような活き活きした雰囲気のあるサラサラな髪が特徴的で、髪の色は光悦茶という落ち着きのある茶色に染められている。
活発で、親しみやすい人なので、友人がとても多い。俺と違って。
「それじゃ、好きなのあったら選んでね」
明日買い物に行くときは、とりあえずこれで済ませてもらおう。
洋装がよかったとか言われたらどうしようと思ったけど、彼女の興味津々な様子を見て、それは杞憂だったと確信した。




