第16話 実家の呉服店
「でも、他国の本がこちらに入ってくることってあまりないですし、探すの大変かもしれませんね。高校行ったらそれとなく見てみます」
「うん。お願いしようかな」
八意高校なら魔法関連の本が揃っているだろうし、任せた方が早いかも。俺は休日に図書館でもこもろうかな。
なんだか、頼もしい味方ができた感じがあって心強い。
ソラが足元で、俺の足の甲にちょこんと前足を乗せたまま、しっぽをゆらゆら揺らしていた。まるで「よかったね」と頷いているみたいに、うれしそうな顔をしている。
俺の再現可能な魔法を教えたところで、部屋があまりにも殺風景だったから、とりあえず勉強机と椅子、それと寝具を出しておいた。
蝋燭は燃えていないし、取っておこう。
作りたての時計を見ると、十三時過ぎ。昼ごはんも食べ終えているだろうから、そろそろ実家に向かっても大丈夫そうだ。
「今から実家の呉服店で、お嬢ちゃんの寝巻きと明日の着替え買おうと思ってるんだけど、よかったら着いてきてくれる?」
「……いいんですか?」
「うん。ああ、お金支給されてるから気にしないで」
そう答えると、口元にうっすらと笑みが浮かんで、安堵のため息をついていた。
街から生活費が出るって、改めて考えるとすごい待遇だよな。
そんな子を引き受けるって、俺……なんかすごい責任背負ってない?
「ほかの私物は、明日買いに行こうか」
「はい。ありがとうございます」
ソラにも来るかと尋ねると「行かなーい」と断られてしまった。
にこやかに笑う彼女を連れ、家をあとにした。
今から向かう本家には、祖母の梅ちゃんと、呉服店を手伝う柑奈ねえさまとその旦那さんが住んでいる。
「家、分かれてるんですね」
「ああ。分家はとうさまと、かあさまが和菓子屋やってる」
ちなみにねえさまが呉服店を、旦那さんは和菓子屋の方を手伝っている。
「梅ちゃん、いるー?」
玄関の引き戸をがらりと開けて、中にいるであろう祖母に声をかける。
この家に来た頃、きっかけは忘れたが、梅ちゃんと呼びまくっていたから板についてしまった。そのまま伝染し、村人のほとんどがその呼び方をしている。
「入っといでー」
奥の方から返事が聞こえ、二人で家の中をずんずん進む。代々受け継がれた古い家だけど、俺が度々修復しているからか、骨組みだけを見るなら新築と変わらない。柱や障子の細工は古めかしいけれど、俺が直した分、隅々まで清潔感がある。
銀三じいさまの兄である、大工の金次じいさまなんて、来るたびにこの家を褒めてくれるくらいだ。




