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白猫を連れた魔導士が、港町で拾ったのは秘密を抱える美少女でした  作者: 汐田 伊織
3章 面倒事

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第15話 救いのひと言


「火を起こすための物なら作れるんだけど、肝心の火はだめなんだよね……」



火の魔導士は、何もない空間に火を起こせる。


もし火が蝋燭や薪みたいに形が決まったものなら、俺でも作れるのかもしれないけど、あれはもっと不安定で掴みどころがないからな。

状況によって形が変わるような、定まっていないものを作るのはずっと難しい。


あんなことをさらっとやってのける属性魔導士には、本当に敵わない。



「本当に、変わった能力だよね」



自身の炎を消したお嬢ちゃんは「あれ?」とでも言いそうな表情だった。



「傘で飛ぶのって、風の魔法じゃないんですか?」


「西洋の本に、箒に乗って空を飛んでいた挿絵があって。それを参考に、傘も飛ぶものだって思い込んだら浮いた」



風属性魔法だったら、箒なんて使わずに、自分の体を浮かせるだけの風を起こして、空を自由に飛び回れるんだろう。

挿絵がなかったらたぶん、宙に浮くことすらできなかった。



「物体を召喚する以外のこともできるから、自分でも本当によくわからない力なんだよ」



魔法がこの使い方で正しいのかもわからない。

何かが足りない気がして、でも何が間違っているのかはわからなかった。ずっと、もやがかかったままだ。


もしかしたら、変な手順を踏んでいるのかもと何度悩んだことか。


昔から……周りから浮いていた自覚はある。

小学校のときには、目の色のことでいじめられて、中学のときは魔法が変だって言われて。


だから、ずっと自分の魔法の使い方が間違っているのだと思っていた。



高校は春日井先生の配慮でいじめっ子とは離れられたけど。


この経験のおかげで自己肯定感低いし、他人の視線が怖くて仕方がない。


まあ……この子は、俺の見た目のこととか、魔法が変だとか突っ込んでこないから、まだ平穏に暮らせそうだ。



「国外の血が混じってるから、こうなのかもな」



こうやって、よくわからない言い訳で自分を納得させてきた。今までは、それしか思いつかなかったんだ。


誰か一人でも同じ能力だったら、こちらの国でもこんなに苦労しなかったろうに。


鬱々している俺の正面にいた彼女は、両手を合わせ「だったら」とにこやかに微笑んだ。



「ご両親どちらかの出身国に、利他さんと同じ魔法を使う人がいるかもしれませんね」


「えっ……」



目の前の景色が、音もなくひっくり返ったような感覚だった。


――そうか。

あまりにも当たり前すぎて、今まで考えもしなかった。


思わず笑いが込み上げた。それと同時に、自身の視野の狭さにがっかりした。


同級生が扱う属性魔法に、憧れがあったからかもしれない。



自分と同じ能力の人間がいる。

その可能性が高くなったことが、こんなにうれしい、なんて。


きょとんとしているお嬢ちゃんに顔を合わせる。



「ああ……ごめんね。俺の能力が変なのかなってずっと思ってたから。その発想は少しうれしかった」



彼女の一言が、今まで見えていなかった光景を広げてくれた。まるで新しい世界に足を踏み入れたような感覚が全身を包み、希望と驚きが胸に広がっていく。

この瞬間、自分がどれだけその言葉を待ち望んでいたかを痛感する。


単純な一言で、こんなに救われるなんてな。

……笑っちゃうくらい、簡単だったんだ。



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