第14話 魔法の蝋燭
……高校入学前なのに、それだけ魔法が使えるなら、叔父の家だけ吹き飛ばしてしまえばよかったのに。もちろん、冗談だけど。
出してもらった火の玉は消してもらい、次の実験をしてもらう。
「じゃあ、次は……蝋燭、作ってみてくれる?」
「……蝋燭、ですか?」
突然の提案に困惑しているが、とりあえずやってもらおう。
目を閉じて、今までやろうとしたこともなかったであろう、魔法での蝋燭作りに唸っている。
懸命にやろうとするところが健気だ。
お嬢ちゃんが右手で拳を作り、それをぱっと開く。すると、箸くらいの長さをした棒状の炎ができあがった。
芯のようなものまであるそれは、透明な筒の中で揺らめく火のように、形を保ち続けていた。
まるで心臓の鼓動のように、小さく規則的に揺れる。熱はやわらかく、でも確かにそこにあった。
「へえ、こんなのになるんだねえ。形は蝋燭なのに」
「属性から逸脱したものは作れないのか? 形は蝋燭だけど……」
「二人とも悲しくなること言わないでください……」
しゅんと落ち込んだお嬢ちゃんをなだめ、俺の作った物と比較するために、ろうそく型の炎を維持してもらうことにした。
次はこちらの番だ。
目を瞑る。
芯の周りを、ぐるぐると蝋が巻きついていく姿を想像する。
俺の魔法は、想像した形をそのまま再現してくれる。便利だけど、どこか味気ない。
指を振ると糸が現れ、液状の蝋が螺旋状にそれを包み込み、パキパキと小気味よい音を立てながら徐々に固まっていった。
これはただの、火のついていない蝋燭なので素手で触ろうが問題ない。
相変わらず彼女は、驚きの表情を浮かべていた。
「じゃあ、火つけてみるね」
火のつく瞬間を空想する。
熱を加えた可燃物から発生した気体が、酸素と結びつき、火が生まれる瞬間の様子を考える。可燃物から煙が立ち、ふっと火が宿るような感じで……手に持っている蝋燭の芯を指で触り、魔法を発動させた。
ぼんっと小爆発が起きる。
芯の部分に、火のような見た目をしたものが現れた。
ただ、息を吹きかけても消えず、揺らぐこともなく、煙も出ない。
触れば熱いが、蝋がその熱で溶けることはなかった。
「……やっぱりだめか」
「前やったときよりふっくらしてるね」
ソラは足元で、興味津々に首を伸ばしている。
お嬢ちゃんの作ったものと比べるまでもない。
属性魔法の火は、生きているみたいに揺れている。
俺のは……ただの模倣品だ。作れても、本物には届かない。
一応……この偽物の火、熱が発生しているから明かりにはなってくれる。まあ、あまり使うことはないが。
これが、属性魔導士と俺の違いだ。




