第8話 家の案内
底の薄くなった草履を脱いで、三和土の端に追いやった。
彼女に貸すなら、玄関から突き当たりの部屋がいいだろう。玄関近くの空き部屋だと、客間での依頼主とのやり取りが気になるかもしれないから。
玄関からまっすぐ伸びる廊下は、俺がこだわって選んだブナ材。クリーム色の優しい色合いが気に入っている。
この家は、材料や見た目、使い勝手なんかを全部自分好みにしたこだわりの建築物だ。
簡単に家の中を紹介しながら、お嬢ちゃんをその部屋へと案内する。
「ここ、使って」
彼女は部屋を見て、驚愕の表情が浮かぶ。
「いいんですか? こんなに綺麗な部屋」
驚くのも無理はない。使っていない部屋の割には整えられているから。
若草色の畳は目に優しく、漆喰の壁はほのかに温かみがある。
日差しがやわらかく差し込む肘掛け窓は、俺のこだわりのひとつだった。
左側に、部屋が狭く見えないように押し入れが埋め込んである。これにより、物を収納する場所が確保され、部屋の広さを最大限に活用することができる。
彼女の私物がどれだけ増えようが、置く場所には困らないだろう。
「この部屋以外は空いてないし、遠慮せず使ってよ」
「ありがとうございます。この家って築年数どれくらいですか? 外壁も家の中もすごく綺麗ですよね」
さすが、お目が高い。自分の好みを詰め合わせた家だから、褒められるのは素直にうれしい。
……俺にとっては、どこよりも落ち着ける場所だから。
「二年かな。魔法で建てた家だから、一生この状態維持できると思う」
「えっ! 魔法で!? すごいですね……!」
「まあ、あとから広縁を追加したせいで、俺の寝室はちょっと寒いんだけどね……そのへんはご愛嬌で」
家を建てるのに集中し過ぎて、庭を造り忘れていたのだから仕方ない。
感嘆の声を漏らしながら、白い壁にそっと手を当て「すごい……」と、何度も笑顔を浮かべる。
目の端に残っていた怯えの色が、少しずつ和らいでいくのが分かった。
その笑顔が見られただけで、ここに連れてきた意味はあったのかもしれない。
この家が彼女にとってもう一つの我が家だと感じてくれるといいな。




