第2話 少女の受け入れ先
謙虚そうなあの子なら、市長や理事長から提案されたことだからと、義理を感じてここに来る可能性だってある。
本心では、たった一度会っただけの男と一年も過ごすなんて......と思っているかも。
「……彼女が自分で来たいと言ったのなら受け入れますが、無理に気を遣わせるのは嫌ですからね」
過去の経緯や心の状態を考えると、心理的な部分に負担をかけるような行動は避けたい。
それでも我が家に来るというなら、平穏な生活を送れるように全力で支えよう。
未来の魔導士の育成は重要だし。
けれどそれ以上に、彼女には安心できる場所が必要だと思った。
『いやあ、よかった。実は本人は快く了承してくれてね。あとはきみ次第だったんだよ』
「……それ、先に言ってよ……」と、喉まで出かかったけど、まあいいや、とため息に変えた。
『生活費の支給もさせてもらうから安心してくれ』と、電話の奥で豪快に笑っている校長に、ほんのちょっともやもやした気持ちが湧き上がる。
『それにしても、きみたち同じようなこと言うから驚いたよ。結構気が合うのかもねえ』
「同じようなこと?」
なんでも、お嬢ちゃんに同居先の話を提案したとき、元気よく「お願いします」と言ったと思ったら、急に悲しそうな顔で「利他さんが同居に関して不快に感じたのなら、断っていただいて大丈夫です」と、控えめな答えを返してきたという。
あの子はもうちょっとわがままになってもいいと思う。
あれだけ傷ついて、遠慮ばかりするのは……なんだか切ない。
「……ぜひ来てほしいとでもお伝えください」
『うん、わかった。ありがとうね。じゃあ、今日の夕方頃から早速お願いするよ』
げ。明日とかじゃないのか?
冷蔵庫の中身を思い出し、慌てて頭を掻きむしる。
卵はもらったやつがあるから問題なし……米はあと三合。
だめだ、明日の分がどう考えても足りない。
適当に挨拶を交わして買い物でも行こうとしたとき、先生が何か思い出したように話を振ってきた。
そしてその一言が、俺の一日をめちゃくちゃにするきっかけになった。




