第28話 魔導士の誇り
「ユウナおかえりー」と、ソラが明るい声で迎えてくれた。
「ただいま。すっかりデレデレになって」
お嬢ちゃんにお腹を撫でてもらって、うちのおソラ様はこの上なくご満悦だ。
「お嬢ちゃん、市長が住むところ用意してくれるって。今日は、ワタツミ支部に泊めてもらえることになったから」
「本当にありがとうございます。このお礼は必ずします」
彼女が優しく微笑むと、その幼さとかわいらしさが一層際立った。
胸がぎゅっと締めつけられ、言葉にできない感情が込み上げる。
なんでだろう?
今までこんな感情を抱いたことがあったっけ。
……まさかの一目惚れとか?
……父性?
まあ、なんでもいいか。
「いや、気にしないで。まあ、次会うときはお茶でもしよう」
彼女は何か言いたげに口を開いたが、すぐに閉じてしまった。
「……はい、またお会いできる日を楽しみにしています」
その言葉が、胸にじんわりと染み込んだ。
お嬢ちゃんに着せていた外套はそのまま貸しておくことにした。それを返してもらう名目で、再会する理由を強制的に作ってしまった。
……二十一歳にもなって、何しているんだろう。
思わず言ってしまったことに自身で引きつつ、ぐにゃりと液体みたいにやわらかくなった我が家の猫を脇に抱え、いつものように肩に乗せる。
汽車はまだ動いていないから、飛んで帰ろう。
軽く手を振りながら、ゆっくりと背を向けて別れた。
別れの瞬間、いつか果たせる再会を心に描きながら、魔力を込めた傘に乗って上空に浮かび上がる。
次に彼女に会うときまでに、俺はもう少し、マシな大人になれているだろうか。
上から街を見下ろすと、大人も子どもも笑顔で過ごしていた。
子どもたちのはしゃぐ声が響き、大人たちも穏やかに談笑している。幸せが街中に広がっていた。
これを見るためにこの仕事を続けているのだなと、再確認する。
こんな光景が見られるなら、どれだけ苦労したって報われる。
魔導士冥利に尽きるというものだ。




