第26話 住居の確保
腹が満たされ、宴席のざわめきも少し落ち着いてきた頃、俺は井波市長を探しに立ち上がった。
人々の肩越しに視線を滑らせながら、井波市長の姿を探し、混雑した道を縫うように進む。大勢の人間に囲まれているおかげで、簡単に見つけることができた。
今度は人の熱気に汗をかいているみたいだけど、水分はちゃんと取っているのか?
「井波さん、今いいですか?」と声をかけながら、心のどこかで、この件をどう伝えようかと迷いがあった。
「おお、利他くん! お疲れさま。向こうの……空いている場所にでも行こうか」
街に来たとき、事故で船が突っ込んでいた釣具屋の近くに移動する。
この建物は家と違う造形だったから、直すのに時間がかかったのを思い出す。
向こうの賑やかな様子とは対照的に、こちらは波の音が鮮明に聞こえてくるくらい静かで、小難しい話をするのにはうってつけだ。
まずは仕事の報告を。
「建築物を二十九軒、灯台も修理完了しました。灯台の方は念のため、強度の高いコンクリートで建て直しています。あと、所有者からの依頼で、船を十二隻直しておきました」
修理したじいさまの船は、ワタツミ街の出身ではなかったから、今回の報告には含めなかった。
崩れた道路や、貨物の積み下ろしなどが行われる岸壁も壊れていたが、どうやら、知らぬ間に土属性魔法を使う組合員が修復してくれていたらしい。
ありがたいことだが、当然ながらこちらの成果にはならない。
まあ、それらの修理まで請け負っていたら、今こうして元気に歩き回る体力はなかったと思うと、もらえる金額が下がっても文句は言えない。
「建物内の家具などは数が多く、修理は困難と判断し、断念しました。申し訳ないです」
「いやいや、そんな! 正直、そんなにやっていただけるなんて思わなくて……驚いているよ」
家の中のものは、街がある程度の金額を補償しようと思っているとのことで、一安心した。
「以上が、今回お請けした件の報告になります」と、仕事の話を締めくくる。
「続いて……魔法学者、霜月清輝先生のご息女についてですが……叔父である畠山秋彦さんが、彼女に対し虐待行為をしてくるそうです。可能であれば、彼女の仮の住居の確保など、対応をお願いします」
これには目を見開いていた。喉の奥から低い唸り声を漏らし、無意識にあごを指でさする仕草を見せた。
「あの畠山さんがねえ……霜月さんの弟だし、昔から街の催事にも顔を出してたんだけど……まさか、そんな」
動揺した素振りを見せつつ、一度咳払いをした。




