第23話 火災の原因
「そういえば、自己紹介してなかったね。えっと、個人営業で魔導士してる利他ユウナです。以後お見知りおきを」
「よろしくお願いします。さっきも言ったんですけど……霜月優香です。四月から高校生になります」
彼女は、背筋を伸ばした姿勢で座っている白猫の背をやさしく撫でていた。
高校生になるってことは今は十五歳……俺と六つ離れている。
この子、学校でも人気者だろうな。小動物みたいで、守ってあげたくなる感じがあるし。
とか、いらぬことを考えていたのがバレたのか、くつろいでいたはずのソラがじっとりした目つきでこちらを睨んでいた。
「では」と咳払いして話題を変える。
「二年前、霜月先生の研究所の消火活動を手伝ってたんだけど……火災の原因とか、もし知っていたら教えてもらえないかな?」
「その日……夕方から友だちの家に泊まりに行っていました。なので、火事の詳細はわかりません……すみません」
困った表情で眉尻を下げ、続きをぽつりと呟いた。
「翌日、友達の親から火事のことを聞いて、急いで戻ったんですけど……」
言いかけて、彼女は目を伏せた。
そこにあったのは、黒こげの家だけだったそうだ。家族も、研究員も、誰ひとり戻ってこなかった。
――そのあとは、警察と学校が連携し、さらにワタツミ街の市長と高校の理事長が相談を重ね……彼女は叔父の家で暮らすことになったという。
「困っていたわたしを、叔父家族が温かく迎えてくれたんです」
……そう語る彼女の笑顔は、作り物みたいにぎこちなかった。
まるで、“ちゃんと幸せです”と、言い聞かせているみたいに。
今現在も、ワタツミ街にある叔父の家で世話になっていると言った。
――結局、彼女からは有益な情報は得られなかった。
火事の状況や家族、研究員の安否についてはまだわからない状況であり、不安や心配が残る。しかし、少なくとも霜月先生の娘が無事であることを知れたのは、一つの収穫と言えるだろう。
……けど、どうにも引っかかる。
「温かく迎え入れてくれた」と言っていたけど、彼女はこんなに頬がこけて、髪や爪まで荒れている。安心して暮らしているようには見えない。
……自分の娘じゃないからって、預かってる子がいなくなったのに、連絡の一つも寄こさない?
そんなの、ありえるのか?




