第21話 少女の謝罪
看護師さんを捕まえて、電報局の場所を聞いてみたところ、建物は海側にあるとのこと。
ということは、今回の事件で職員が避難している可能性が高い。行っても無駄になるな。
仕方なしに病室に戻ると、少女が猫と楽しそうに遊んでいた。吊り紐をぶんぶん振り回し、ソラはそれに飛びついて宙を舞っている。
なんとも微笑ましい。
連絡できなかったと伝えると、彼女は、ふうっと小さく息をついていた。どこか安堵の混じったその仕草に、胸の奥が少しざわつく。
――やっぱり、帰りたくない理由でもあるのか?
霜月優香には聞きたいことが山のようにあるけど、空腹で頭に栄養が行き届いていない。
今はやめておこう。
「とりあえず、お二人さん。朝ごはん食いに行こう」
「わーい」
「えっ……あの……」
机の上に畳まれていた外套を羽織らせる。足を止めて躊躇っていたその手首を引っ張り、病室を後にした。
外はおぼろげな太陽が顔を出し、地上をほのかに照らしている。しかし、まだ昇り始めたばかりの太陽の光では十分な温かさは感じられず、外の空気は相変わらず寒さを帯びており、思わず身震いした。
背負っていた和傘を魔法の力で地面と平行に浮かせると、ふわりと宙で待機した。
和紙は貼り替えたばかりで光沢があり、水滴が飴玉のように弾かれる。
とはいえ、雨傘として使うことなんて、滅多にないんだけど。
振り返って、呆けたように見つめていたその瞳が、わずかに揺れる。
まるで信じがたいものを見たような――それでも、美しいと感じてしまったような、そんな不思議な表情だった。
「高いところ苦手なら、ここ来たときみたいに抱えていくけど、どうする?」
よくわからないという様子でこてんと首を傾けるお嬢ちゃん。
「さっきね、優香を抱っこして運んだんだよー」
なぜか得意げなお猫様。
運んだの俺だよね?
すると、顔を真っ青にして土下座する勢いで謝罪し始めたので全力で止める羽目になった。
背後に少女を、懐に猫を入れて、船置場に戻る。
きらきらと光る青い屋根の向こうから、甘く香ばしいタレの香りが漂ってきた。煙が立ちのぼり、腹の虫が騒ぎ出す。
なんでもいい、胃袋に突っ込めれば……。早く、うなぎをくれ。




