第20話 火事の重要参考人
「火事……なるほどね。親戚の名前と住所教えてくれたら、電報局行ってくるけど」
「……叔父は畠山秋彦といいます」
「ちなみに君の名前は?」
「霜月優香です」
――まさか。
背筋がひやりと冷たくなり、鳥肌が立った。
唾を飲み込みながら、動揺を悟られないように拳を強く握りしめた。
「霜月清輝の娘か?」
彼女は黙って首を縦に振った。
霜月先生の娘……似ていないから初見ではわからなかった。強いて言うなら、髪色が先生と一緒なだけで。
この子は、二年前の火事の重要参考人ではないか?
あのあと、金色の炎を組合に渡したが、調査結果は聞いていない。
もしかしたら届けている最中に、瓶の中で消えてしまったのかもしれないと考えたが、それならそうと連絡が来るはずだ。
火事のことは新聞に少し載ったきり、詳しい話は聞いていない。
あの日、何があったんだ?
先生は無事なのか?
……そもそもなぜ早朝に、春休み中であるはずの学生が制服を着て倒れていたんだ。
ああ、もう……わけがわからないな。
俺が関わっていいのかって気もするし……。でも、放っておけるはずもない。正直、ちょっと疲れる。
窓が風にあおられ、がたがたと不気味な音を立てる。病室には、張り詰めた空気のように沈黙が流れていた。
「大変だったんだねえ」
寝台に座っていたソラはのんびりとした様子で、ゆっくりと尾を振っている。そんな、たった一言で、強ばった肩の力が解放されたような気がした。
こんな少女に、自分はなに緊張しているんだろう。
落ち着けるために深くため息をつく。
今優先するべきことは、火災について質問を投げかけることではなく、畠山さんに連絡することだ。
この街に住んでいる人なら、避難先にいるかもしれないが、一応電報を入れておこう。
ワタツミ街の電報局どこか知らないけど。
「じゃあ……」と、病室を出ようと思っていたとき、彼女の大きな目がさらに開かれ、驚いた表情でソラを見つめているのが視界に入った。
何か、気に触るようなことでもあったか?
まさかの人形とでも思っていた、とか?
ごくりと唾を飲む。
「……あの、なんで……その猫ちゃん、喋ってるんですか……?」




