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白猫を連れた魔導士が、港町で拾ったのは秘密を抱える美少女でした  作者: 汐田 伊織
2章 家出少女

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第19話 病室の白昼夢


看護師さんに教えてもらった病室には、六つの寝台が整然と並び、その近くに小さな木製の机が置かれている。

よくある簡素な造りの病室だ。


避難所からまだ帰ってきていないのか、ほかの患者は見当たらない。



入口から一番遠い寝台に腰掛けていた少女は、物音で気づいたらしく、ゆっくりとこちらに顔を向け、深々と頭を下げた。



「……その、助けてくださって、ありがとうございました」


「いや、まあ、通り道だったから」



二度寝でもしようとしていたところで発見したなんて、言えない。


少し気まずくなって後頭部を掻いた。


――しかしこの子、抱えたときにも思ったが、少々痩せすぎな気がする。食事もまともに食べられないほど生活苦なのだろうか?


彼女が垂れた栗色の髪をすくいながら頭を持ち上げた瞬間に、ようやくはっきりと顔を見ることができた。


大きなたれ目が印象的な栗色の瞳。透き通ったその目は、まるでガラス玉のようで……思わず見とれてしまった。

彼女の顔は小さく、すっきりとした輪郭がかわいらしさを引き立てている。


……びっくり、した。思わず目をこすってしまうほどに。

なんだろう、この子……放っておけない感じがする。


何度も瞬きをしながら、その光景が夢ではないかと確かめるように見つめ続けてしまった。


……あれ、俺、どうしたんだ?

こんなふうに誰かの顔を見つめるなんて。それも、たった今助けたばかりの、名も知らぬ少女の――


自分でも意味がわからない感情に、少しだけ混乱していた。



何も言わずにただ注視してくる男に恐怖を感じたのか、彼女は、くるりと上に向かって生えているまつ毛を伏せる。


怯えさせてしまったか?

申し訳ないな。



「あ……とりあえず、親に連絡しないとね。電話って家にある?」


「あ、ええっと……すみません。《《たぶん》》、ないです……」



たぶん?

自宅のことなのにわからないのか?


彼女は頭を傾け、何かを選び取るように言葉を探している。

――まるで、口を開くたびに選択肢が減っていくように。


もし家出だったり、飛び込みを考えていたのなら親と会いたくないよな。なんて考えながらのんびり言葉を待った。


ソラが肩からするりと降り、空いている寝台に飛び乗った。しっぽを揺らしながら、じっと少女を見つめている。



病室のカーテンがそよ風に揺れ、静かな空気が流れていた。お嬢ちゃんは意を決した様子で、細々と話し始めた。



「家は前に火事で燃えてしまって、今は親戚の家にお世話になってます。なので……ちょっとわからなくて」



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