第19話 病室の白昼夢
看護師さんに教えてもらった病室には、六つの寝台が整然と並び、その近くに小さな木製の机が置かれている。
よくある簡素な造りの病室だ。
避難所からまだ帰ってきていないのか、ほかの患者は見当たらない。
入口から一番遠い寝台に腰掛けていた少女は、物音で気づいたらしく、ゆっくりとこちらに顔を向け、深々と頭を下げた。
「……その、助けてくださって、ありがとうございました」
「いや、まあ、通り道だったから」
二度寝でもしようとしていたところで発見したなんて、言えない。
少し気まずくなって後頭部を掻いた。
――しかしこの子、抱えたときにも思ったが、少々痩せすぎな気がする。食事もまともに食べられないほど生活苦なのだろうか?
彼女が垂れた栗色の髪をすくいながら頭を持ち上げた瞬間に、ようやくはっきりと顔を見ることができた。
大きなたれ目が印象的な栗色の瞳。透き通ったその目は、まるでガラス玉のようで……思わず見とれてしまった。
彼女の顔は小さく、すっきりとした輪郭がかわいらしさを引き立てている。
……びっくり、した。思わず目をこすってしまうほどに。
なんだろう、この子……放っておけない感じがする。
何度も瞬きをしながら、その光景が夢ではないかと確かめるように見つめ続けてしまった。
……あれ、俺、どうしたんだ?
こんなふうに誰かの顔を見つめるなんて。それも、たった今助けたばかりの、名も知らぬ少女の――
自分でも意味がわからない感情に、少しだけ混乱していた。
何も言わずにただ注視してくる男に恐怖を感じたのか、彼女は、くるりと上に向かって生えているまつ毛を伏せる。
怯えさせてしまったか?
申し訳ないな。
「あ……とりあえず、親に連絡しないとね。電話って家にある?」
「あ、ええっと……すみません。《《たぶん》》、ないです……」
たぶん?
自宅のことなのにわからないのか?
彼女は頭を傾け、何かを選び取るように言葉を探している。
――まるで、口を開くたびに選択肢が減っていくように。
もし家出だったり、飛び込みを考えていたのなら親と会いたくないよな。なんて考えながらのんびり言葉を待った。
ソラが肩からするりと降り、空いている寝台に飛び乗った。しっぽを揺らしながら、じっと少女を見つめている。
病室のカーテンがそよ風に揺れ、静かな空気が流れていた。お嬢ちゃんは意を決した様子で、細々と話し始めた。
「家は前に火事で燃えてしまって、今は親戚の家にお世話になってます。なので……ちょっとわからなくて」




